ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

そんなものを見た

 

 新潟で見たものを一つずつ丁寧に記事にしたいのですが、さすがに引っ張りすぎました。そろそろまとめに入らねば。


お城のような
 初日、節黒城跡に行って戻る道すがら、たぶんここは雪深いところなのでしょう、家々がまるで要塞か西洋のお城みたいなのに目を見張りました。

    
 ね? 特に一階部分が雪に埋まることを想定してコンクリ造りなのが中世の城の土台部分みたいで迫力があります。

  このあたり → 


 いえ、私のような貧乏人根性が沁みついた人間には、これ建てるのにいくらかかるんだろう、ああここに生まれなくて良かったなんてその程度の感慨なのですが。すごいなあ雪国のひと。


イシャはどこだ
 夜、初めての街に来た時恒例・夜のお散歩を。その時見たのが


 お医者の看板全員集合。つげ義春のあの有名な漫画を思い出しました。


カツラ
 いやそっちのカツラではなく。


 朝もお散歩したのですが、ホテルのそばの大学の並木道の樹種がカツラの木でした。珍しい。

 


 芝生の中の木もカツラ、しかもシダレカツラ。カツラづくしです。

 


 ちなみにここの芝生、ミミズが良く育っているようで大量のミミズのふんがありました。それは土が良質であることを示して…… いるのだけど何だこの巨大なふんは。どんなミミズがいるのだ。ああ、大学の敷地でなければ掘り返していたのに。

 

がんぎ
 弥彦山に向かってカーナビの言うがままに走っていると


 こ、これアーケードじゃないよね? がんぎっていうんだよね? すごい昔に学校で習ったよ。そんだけの話ですけど。


弥彦山神社
 ギフチョウをたっぷり見たら、やはり神さまにお礼をせねば。


 地元の皆さんが柏手を4回打つので聞いてみたら、ここと出雲大社天香久山神社だけが二謝・四拍手・一謝なのだと。へええ。


信濃川


 やりたい放題に蛇行する日本一の大河・信濃川と、ヒトがその川の力を削ぐために作った分水路。


 そしてその信濃川が作った越後平野。ヒトと自然がこの豊かな風景を織り上げました。


雪割草
 雪割草ことオオミスミソウ。出発前にネットで調べたら、観光協会のページで「県内の雪割草は終了」とあって少し失望していました。


 でも弥彦山でも、多宝山まで行く道にたくさん咲いていました。来てみるが吉。


風衝林ふうしょうりん
 正式な用語ではありませんがそう呼ばせていただきます。弥彦山から多宝山に向かう道は、背丈くらいの低い木々に囲まれてます。想像するに、二つの峰に挟まれたここは冬の季節風の通り道。風雪がすさまじく吹きつけ、木々が高く育てないのではないかと。過酷な場所ながら、いえ過酷ゆえに多様性がすばらしい。雪解けに従って一斉に花芽を伸長させたので、本来花期がずれるはずの草木が花を並べます。

 


 エゾユズリハ。常緑広葉樹があること自体がもう驚きです。

 


 エチゴキジムシロ。ご当地特産。

 


 エンレイソウ。1本だけ見かけました。

 


 カスミザクラ

 


 カタクリ。北国らしい濃色のもの。

 


 キブシ

 


 タムシバ。この山行のあいだ、どこに行っても香りで楽しませてくれました。

 


 ダンコウバイ

 


 トキワイカリソウ

 


 ナガハシスミレ

 


 ネコヤナギ

 


 ハウチワカエデ

 


 ヒョウタンボクの類。

 


 マムシグサ。細かい種名はわかりません。ひょっとしたらご当地ものかも。

 


 マンサク。「まんず咲く」から来た名。茨城と花期が1か月ずれてます。

 


 ミヤマカタバミ。陽が陰ると閉じます。


ギフチョウ
 ギフチョウも次々に飛んできます。地面に止った時だけがシャッターチャンス。

 

 


 ヒオドシチョウ。茨城でも春先によく見かけます。

 


 前記事にあるように、午後になると雲が濃くなりました。雨の予報と晴れ男、どうやら新潟の神さまも味方してくれたようですがそろそろ潮時。ギフチョウが飛ばなくなり、ナガハシスミレの花が全部閉じているのを見てそう判断しました。

 


 今回ただ一枚だけの自撮り。おなじみカーブミラー自撮り。

 


 持ち帰ろうかどうか真剣に悩んだけど置いてきました。弥彦山を構成する流紋岩だと思います。

 


 この日の最後、明日の帰路のために給油しました。茨城はガソリンが安いと自慢してきましたけど、ここ長岡も同レベルの安さでした。ちょっと親近感。

 

 

 

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日本海の怪異

 

 続きます、新潟シリーズ。

 


 二日目、今日こそはギフチョウを見なければなりません。降水確率50%、天気が崩れるまでの時間勝負と考えて、確実性の高い弥彦山を目指しました。幸い海沿いは雪も無く、弥彦山スカイラインを快調に駆け上がります。弥彦山の西側はすぐ日本海。青黒いほどに深みのある海が逆にそそり立って見えます。遠くにはくっきりと佐渡島。大きな島なんだなあと実感。日本海佐渡、ともにゆっくり鑑賞したいところでしたが先を急ぎました。

 


 弥彦山ギフチョウを見て、降りてきたときには海上の霞は濃く、佐渡島も…… 島の形は皆さんご存じのように、まるで二匹の海竜が背を見せたように山脈が並んでいる、その二重の山並みが朝方は重畳してくっきり見えていました。今はもう手前の山並みしか見えません。少し残念に思いながらも、そうか新潟は海を見れば天気の変化がわかるんだなと妙に納得したり。

 


 そして茫洋と日本海佐渡の海景を眺めていて、ふと奇妙なものに気付きました。なんだあれは。

 


 これ。佐渡島の手前に、その山脈と同じ高さに見える白い山が現れています。しかもこちらに近づいてくるように見える。なにこれ、怖い怖い怖い。

 


 地元で口にするのを禁忌とされる怪異か。侵略者の秘密兵器か。上陸を狙う巨大生物の隠れ蓑か。ああ、見てはいけないものを見てしまった…… と思ったのですが

 

 


 ご心配なく。やがてその場で崩壊していき、それがただの雲だったと知れました。


 日本海上に雲ができることは知ってます。暖かい海流の上を冷たい北西風が吹くとき、蒸発した水蒸気が凝結して雲になる。それが日本海岸に押し寄せて冬の豪雪、あるいはこれも日本有数の雷雲となる。知識としては知っていたのですが、まさかこんなでき方をするとは。

 


 見ていると、あちこちに似たような不気味なものが湧いては潰れて行きます。山の上の高い位置からなのでよく見えます。

 


 新潟の人はこんな光景を知っていたのかな。何かこんな雲の湧き方を表わす言葉があるかもしれません。もっと宣伝してもいい、少なくとも私にはこの地に来たからこそ見ることのできた怪景、絶景です。

 

 


 やがて雲は増えていき、雲海となりました。

 


 それがまるでアメーバのように大地を飲み込み…… こうして新潟の天気は代わっていくんですね。

 


 帰路に見た海景。いつかここから、海に沈む夕陽とやらを見てみたい。

 


 ちなみにこれは大河津分水路の河口。信濃川の膨大な雪解け水と土砂を日本海に逃がしています。この季節、新潟のどの川も黄土色の濁流になっていて、これもまた季節の風物か。

 


 面白いものを見ることができました。茨城県でも冬の朝、朝日をバックに海面を白く覆う蒸気霧を気嵐(けあらし)と呼んで冬の風物としています。きっと日本全国、その土地ならではの気象現象ってのはあるものなんでしょうね。

 

 

 

 

↓ ごめんなさい、新潟シリーズまだ続きます。

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弥彦山にギフチョウを見た

 ヒマなくせに更新遅れてごめんなさい。新潟であまりに多くのものを見すぎて、どうまとめていいものかと思案するうちに日を重ねてしまいました。


 第一目標だったギフチョウ、見ることができました。場所は弥彦山。やひこやま、と読むそうです。ずっとずっと思い続けた、じつはかつて一目惚れした山です。

 


 2013年、いつもの地学の先生たちの巡検に混ぜてもらって新潟入りしました。休憩に寄った道の駅の、越後平野の田んぼの中から見上げた時のその立派な姿に見惚れました。


 平野からどんと屹立する屏風のような山並みは、実際に平野の一部を冬の季節風から守っているようにも見えます。一番高いピークを弥彦山、もう一つ北側の多宝山と合わせて双耳峰と見ることができます。豊かな森におおわれ、越後平野を見守るような姿が平野中から望見できます。山頂には神さまが祀られ古くから信仰の対象でした。…… なんのことはない、山頂部にかんざしのようにアンテナが林立するところも含めて、我が筑波山そっくりなんです。気にならないはずがない。十分な品格の山ですが、惜しむらくは高さが足りないという理由で深田久弥百名山には入りませんでした。

 


 今回の記事は、ギフチョウをはじめこのお山で見た生き物を羅列します。どうぞ写真だけでもお楽しみください。

 


 弥彦スカイラインの頂上下駐車場から登ります。

 


 山頂近くはブナの森。

 


 明るい林床にスプリング・エフェメラルたちが咲き誇ります。その種類の多様さに圧倒されます。


カタクリ


 何と言っても主役はカタクリ。昨日見た低標高のものより、確かに色が濃く見えます。


スミレ類
 日本海側特産のものもあって、スミレ好きジノさんおおよろこび。


アオイスミレ


 雪のない茨城では突拍子もなく花期の早いスミレで、ふつうコレの花期に他のスミレはありません。でも雪国では雪解け後に一斉に花芽を伸ばすのでしょう。仲良く咲いていました。


スミレサイシン


 日本産スミレサイシン類3種のうち2種は茨城にあります。残ったこれは日本海側特産。これで3種コンプリート。


テリハタチツボスミレ


 清楚な花色に感動しました。これも日本海側特産。タチツボスミレから進化した多雪地適応スミレのひとつ。タチツボスミレ類はよく日本の気候特に多雪地の気候に順化し、日本海側で多様化しています。


ナガハシスミレ


 前記事でもご紹介した「本家」の皆さん。茨城に取り残された、シンデレラのガラスの靴みたいな一族のことを知る由もないのでしょうね。


オウレン


 このブログでおなじみ。葉を見ると茨城のものとの違いがわかります。


キクザキイチゲ


 花色が多様なのは太平洋側でも。


ヤマエンゴサク


ミチノクエンゴサク


 エンゴサク類の奇天烈な花、大好き。


ナニワズ


 名を聞くとすぐ難波津という漢字が浮かびますが、じつは所説あって当て字がありません。日本海側特産のジンチョウゲの仲間です。



 さあ困った、わからん。まだつぼみです。垣間見える三日月形はナツトウダイの花の構造に思えるのですが、これなんでしょう。


コシノカンアオイ

   


 出ました、マニア受けするグロテスクな花、ギフチョウの新潟での食草コシノカンアオイカンアオイの仲間は種子が親株の根元に転げるだけで、多くの植物が知恵を巡らせる分布拡大作戦、種子を遠くに散布して分布を広げようという気概がまったく見られない、何と言うか危機感のない連中です。すみかを1キロ動かすのに千年かかるとか。こういうマイペースでも生き残れるんだなあ。


ウスバサイシン


 茨城にもあるカンアオイ類。花はおとなしい。これもギフチョウの食草になることがあります。


 最後まで引っ張りました。美味しいものは最後まで残すたちなんです。お待ちかねギフチョウです、どおおおん。

 済まぬ、面目ない。こんな写真しか撮れん、ぐぬぬぬ。ギフチョウと言ったらうつむくカタクリの花にそっとぶら下がって吸蜜する、春の女神と早春の妖精の共演する絵が定番。もちろんそんな光景を狙ったのですが、…… 止まらねえ。カタクリは馬に食わせるほど咲いているのに、次々と飛び来るギフチョウは止まりやがらねえ。何してるんだコラ、こちとら遥か茨城から来てやってるんだ、気を遣ってくれってんだ。

       乱文お許しください。


 チョウはオスの方が早く羽化してメスを待ちます。いま飛んでいるのはたぶんみんなオスで、メス探しに夢中でカタクリどころではないようです。止まってくれなくても、シャッター速度を操作すれば写し留めることができたのですが、花の写真を撮っている最中に現れるので間に合わない。チャンスを待つうちに気温がどんどん上がって、チョウは活発になるばかり。ブレ写真ばかりでも仕方ないので、このあと多宝山で撮った写真も併せてご覧くださいませ。こんなチョウです。


 とにかく見るだけは見た。5頭だけ採集もさせていただきました。とうとうギフチョウ制覇です。

 


 遠い山脈のかなた、異なる気脈の流れる地。300キロを駆けてたどり着いたその緑豊かな国は、目に新しい生命がしとやかに息づいていました。旅に出て良かったと心から思わせる、そんな新潟の天地に感謝いたします。

 

 

 

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上から読んでも山本山 / 越後の雪線に雪割草は咲く

 

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    タイトルの古いCMネタ、通じるのかな。

 


 さて無事に越後入りしたジノ。でございます。これより二泊三日。


    第一目標 ギフチョウ
    第二目標 雪割草
    第三目標 黄スミレ


 ここは水も気も異なる地。私ならその違いがわかるはず、目標物があれば見つけられるはずです。問題は場所と天気。場所はネットで調べまくり、合わせて6ポイントを地図にプロットしました。それをどう回るかはバクチです。天気は…… 昨日の予報だと1日目晴れ、2日目降水確率 50%、3日目 90%。この晴れ男と土地の天気の相性がどう合うか。

 

 


 関越道を越後川口で降りてすぐ、ここに山本山という山というか丘陵があります。ホントにあるんだこう言う山。回る効率を考えてここを最初のポイントにしました。


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 ふもとに到着。水戸を出て4時間半、295キロ。そして車道が積雪通行止め。うむ、この手のオチには慣れた。これまでの私ならうぎゃあああとか叫んでいるところですがそれでは埒があきません。さすがにカンジキの用意はありませんが、雪はだいぶ融けているので長靴を履けば大丈夫でしょう。積雪地の生物は雪解けに従います。早く融けた場所では花も咲いていることでしょう。ギフチョウも飛んでるかも。車を置いて徒歩で登ります。

 

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 三角コーンがひしゃげるほどの雪圧って想像できません。3メートルとか積もるんだろうなあ。

 

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 山本山全景。台形の丘、というところでしょうか。

 

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 登る途中でふと脇道に逸れてみると、南向きでよく陽が当たり、植物の萌え出ている土の斜面がありました。それが花だらけ。よし見つけたぞ。

 

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 カタクリ。茨城では貴重でした。わあたくさんあると小躍りしたのですが…… この旅で訪れたどこの山でもびっしり咲いてました、まるで雑草のように。雑草のようにカタクリ。うわあすごい。やはりこれは冷温帯の、夏緑樹林の植物なんですね。これだけあればジジイに掘り盗られる事もないでしょう。北国のカタクリは色が濃いと聞いていたのですが、ここ山本山のはさほどでもありませんでした。

 

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 やたら目についたのがこの葉。青空を映すほどにテカテカの光沢。異質なのにどこかで見たことがある。帰宅して、オオイワカガミという名を知りました。近縁のイワウチワやイワカガミは山の岩場で見ましたけど、これは落葉林に生えます。日本海側の多雪地帯特産。さっそくこの地の植物に巡り会えました。花はもう少し先です。

 

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 ショウジョウバカマカタクリに増して色が薄い。茨城では分布が限られますが新潟ではカタクリと同じ場所に必ずありました。

 

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 うおおおお、本場もんのナガハシスミレだああ。見たぞこれが本物。…… 茨城のものは氷期の遺存分布。こちらのが本来の気候に生育するものです。茨城のがニセモノってことではないけれど、本家の姿も見たかったのでうれしい。……なんて浮かれて、これ土の斜面のかなり高いところにあるのを登って接写しようとしたら、ずるずると滑り落ちて泥だらけになりました。茨城と土質が違う。忘れてた、ここはあちらでの流儀が通用しない異世界であった。

↓ もし未読でしたらどうぞ。

ナガハシスミレの長い旅 - ジノ。

 

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 トキワイカリソウ。葉が常緑なのでトキワ。これも日本海側特産。花期はその場のカタクリより少し遅いように見えます。

 

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 この二つは現時点で不明です。咲いて花姿を見れば名前の見当が付くんだけどなあ。

 

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 さっそくに、日本海要素の花々を堪能してしまいました、泥にまみれたけど。舗装された道に戻ります。この程度の積雪なら私のエスクードで十分行けると思えるのだけど、知らない土地でバリケードをどかすような乱暴はしません。

 

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 そしてとうとう、登る途中の斜面に陽光に輝く黄色の花弁、オオバキスミレを見つけました。日本海側特産の黄色いスミレです。目標の一つ達成。黄色のスミレ、高山の岩場のものは見ています。でもこんな低山の林下に咲いているのは初めてです。太陽のかけらのような眩しさ。


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 黄色のビオラとか言わないでね。本当に野生のスミレです。黄スミレは高山か本州の日本海側、そして富士山や阿蘇山にしか分布しません。

 

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 さらにずんずん登っていきます。心が前のめりというか、足が驚くほどに軽い。初めての土地に興奮したか。ただ一度の機会を逃すまいとするか。

 

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 ここは頂上に展望台やら牧場やらのある、雪がなければ観光地です。途中に見晴らし台がありました。わああ、茨城で見せたらおカネの取れる風景だぞ。

 

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 かなたに見えるは

 

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 越後三山。

 

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 看板にそう書いてあるから間違いない。

 

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 その北側も

 

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 茨城に持ってくればヒーローになるような山々です。

 

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 傍らにあったこの桜は、さあこれが難しい。とりあえずカスミザクラとさせてください。

 

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 ルリシジミが足早に道を渡っていきました。この日見た唯一のチョウ。

 

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 さらにずんずん登って、頂上の平坦部に着きました。絵のような風景だなあ。

 

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 ウサギの無駄のない足運びに比べ、私の足跡のなんと無様なことか。

 

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 スギの陰になって雪のない地面に星を散らすように

 

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 キクザキイチゲ。茨城のは白色が多いのですが、ここのは見事な青色でした。

 

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 雪国のヤブコウジは実の付きがやたらいい。

 

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 さて雪解けが進んでいるとはいえ、ここはまだ白い世界。第一目標のギフチョウはどう見てもまだ発生していません。先に進んでも無駄なようです。ここらで踵を返します。雪景色なのにすごく暑い。のどがカラカラのガラガラで、まずは車に戻って飲み物を。

 

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 ここでひと思案。現場の状況がわからない今日は、4つの調査ポイントを考えてました。その一つ目でこの雪。残り3か所はもっと内陸なので状況が良い、つまり雪が融けているとは考え難い。無駄な移動をするより、花々が見られたここ山本山をもう少し歩いてみよう。というわけでまた道を外れて、山から見て雪が少ないように見えた林に向かいます。ギフチョウは望み薄ですけど、この山域にはまだ何かあると思うので。

 


 雪がないと見えたのは笹のせいでした。結局は膝までの雪にヒーヒー言いながら、それでもガツガツ進みます。進みながら、わしってこんなにタフだっけと驚いています。二度と来ることはない、見るべきは見ておけとゴーストが囁くのです。

 

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 林の中にほんのりと漂う芳香。香りの元は木に咲く白い花、これはコブシではありません、タムシバと言います。混同されがちですが別種。香りはコブシより遥かに強く、かぐわしい。私には温泉場ですれ違ったお風呂上がりの女の人から漂うせっけんの香りと思われ…… すいません、余計なことを言いました。これもやはり日本海側の植物です。

 

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 谷間なので雪が深い。こういう融雪期に気を付けねばならぬのは木の枝の起き上がり。雪の重みで地に伏していたのが、私の歩く振動でばねのようにぴょんと跳ね上がります。下手をすると、結構太い枝に股間を打たれて ひぎぃぃっとか叫ぶことになるので要注意です。

 

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 雪の消えた場所から順にカタクリが咲いていきます。オオイワカガミも繁茂しています。これが日本海側多雪地帯の春景色なんだなあ。

 

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 そして…… 見つけました。コシノカンアオイギフチョウの食草です。カタクリがあって食草がある。ここはギフチョウが分布する場所です。数週間後にはあの、だんだら模様に宝石のような赤青の紋を配した春の精が舞っていることでしょう。山のふもとでお会いした地元の方に聞くと、この冬は雪の量は例年並みだったけどとにかく寒かったと。いつもの年ならギフチョウたちも夏・秋・冬と閉じこもっていた蛹の殻を抜け出ている時期ですが、今年はもう少し耐えねばなりません。

 

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 谷を出て車に戻る途中の水田のあぜに、巨大ミミズが這いまわったような跡が。たぶん雪の中にトンネルを掘って動き回っていたネズミの穴だと思います。そこをキツネがぴょーんと飛んで捕まえたり。人跡の絶えた雪山は動物たちの世界です。

 

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 水戸ではもう終わっているツクシが、ここではこれからです。

 

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 田んぼに卵のう。カエルも繁殖期。

 

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 ここでまた地元の方にお会いしました。林に囲まれた農園付き別荘「クラインガルテン」に定住していて、今は山菜を採りに出てきたのだと。わあ、なんて羨ましい里山暮らし。歓談するうちに、何と近くに雪割草の咲く林があるのだと。おおお、やはり地元民との情報交換は重要です。

 

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 聞いた場所はここ。何の変哲もないコナラ林です。

 

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 あった。花色が違いますが、これ全部いわゆる「雪割草」です。…… 少しモノ申してよろしいでしょうか。

 


 日本の図鑑には、この類はミスミソウオオミスミソウスハマソウの3種類として掲載されています。でも3つとも、学名ヘパティカ・ノビリスというキンポウゲ科植物の日本亜種。オオミスミソウハマソウはその中の「変種」という扱いで、実際には葉の先が尖るとか尖らないとかガラが大きいとか小さいとか、とても絶対的な違いとはいえないもので別種のように扱われています。もちろん交雑も可能で、繁殖能力のある子孫ができることでしょう。例えるなら「人類」から「日本人」を分けて別種扱いにして、さらに「関東人」「関西人」を別種にするようなものです。しかもその「関東人」の中でも花の色や大きさが多様、まちまちなのです。分ける必要がどこまであるのでしょう。

 


 こんな理屈、興醒めでしたね。失礼しました。とにかく新潟のものはオオミスミソウで、花の変異が極めて大きいことで知られます。私はそれをこの目で見に来ました。目標達成また一つ。では皆さまもご覧ください。「雪割草」の名で雪国の人に愛される、可憐な一族です。

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 ちなみに葉。先が尖っているから三角草だって。

 


 ここ山本山で4時間、たっぷり楽しみました。これだけで新潟が好きになりました。念のため、ガソリンの無駄になると思いつつ、もっと山間部のポイント「節黒城跡」に行ってみましたがやはり雪で封鎖。ギフチョウは明日のポイントに持ち越しです。長岡の宿に向かいました。

 


 これで第一日が終わり。初日から頑張り過ぎたけど、図らずも目標三つのうち二つが達成できて、何より無事に終われて良かったです。

 
 さて、明日の運命はどんなかな。

 

 

 

↓ どんなもんでしょう。よろしければ。

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よろしい、ならば新潟だ

 

 水の流れ気の巡りとは、私のよく使うフレーズです。気脈/命脈と言ってもいい。長年この国の山河を歩き続けて、自然の中にそんなものが確かにあると思えるのです。それはその土地で花を咲かせ、雨を呼び、時に人を惑わせる。昔の人はそれを神と呼びました。アニミズムとか多神教とか、全知全能の唯一神を信じる人たちからは揶揄されますが、私にはこの天地にあまねくおわす神々という概念の方がしっくりきます。


 何の話かって? 旅に出るって話なんです。


 私の仕事は4月が超繁忙期でした。新年度とともに回り始める雑務と本業。土日にも安息はなく、息もつけずにGWまで駆け抜ける。近年はそのGWさえ仕事でした。4月に遠出なんて夢のまた夢。ところがこの国の山河は春の目覚めの真っ最中です。日をずらしながら次々と開く新芽そして花、冬を耐え抜いて飛び出す昆虫。春の数週間しか見ることのかなわぬ生物に満たされます。ああ何度、仕事をほっぽり出そうと思ったことか。


 春にしか現れぬ生命、それが地元で見られるものならまだ良いのです。ところがこの国はご存じのように南北に細長く、気候も様々です。冒頭に書いたようにそれぞれの土地に異なる気脈が流れ、現れる生物も土地ごとです。他所に行かなければ見られないものだらけ。このブログがそうであるように、地元にこだわり続けては毎回同じものばかりご紹介することになります。いえブログの問題ではない、私自身の問題です。見ぬうちは死ねぬ、そんなものだらけ。中でも私の長年の憧れだったのが

 


 ギフチョウ

 


 なにそれ、と思われる方が大半でしょうか。きわめて原始的なアゲハチョウの仲間で、黄色と黒のだんだら模様をもつ中型のチョウです。のちに大昆虫学者となる名和靖によって明治16年に発見されました。発見地からこの名が付けられましたが、秋田県から山口県のどちらかというと日本海側の多雪地帯に分布します。太平洋側にも産地はあるのですが減少が著しく、東京都では絶滅しています。これがだいたい、その土地の桜の季節にだけ現れます。茨城にはいません。調べると、全国で絶滅危惧種に指定されているようですが新潟県にはまだ産地が多いらしい。

 


 よろしい、ならば新潟だ。

 

 

 4月に旅に出る。これがしたくて仕事を辞めたと言っても過言ではない。世の中の働く男たちよ許せ。私はこのために命削って頑張ってきたのだ。

 

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 はいいきなりですがここは関越自動車道駒寄パーキングエリア。水戸を出て2時間経っての休憩です。良く晴れてむしろ暑いくらいです。

 

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 これ榛名山でいいですか?

 

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 とにかく周囲は有名無名の立派な山だらけです。北上するにつれ、惚れ惚れするような山姿が次々と現れます。例の魅力度ランキングで下の方を争う、でも県民所得は上の方を競う。いろいろと似ている茨城と群馬ですが、こと山に関しては勝負にならない。群馬県スゲー。

 

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 車中より。赤城山は霞の中。

 

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 やがて前方に雪を被った、これぞ日本の山としか言いようのないモノが現れます。ああもうたまらん、鑑賞せねば。いまPAに止まったばかりでしたが、すぐ次の赤城高原PAに滑り込みました。

 

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 右前方、遠く武尊山

 

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 標高2144メートル。

 

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 左前方、谷川連峰

 

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 ここを越えて行きます。この脊梁山脈を越えた先には違う気脈がつかさどる世界、私にとっての異世界があるはずです。

 

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 ちなみに正面にポコポコと見える二つの山は手前から戸神山高王山といって我が筑波山とほぼ同標高の山。筑波山もここに持ってくるとこんな感じなんだなあ。

 

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 台形の山、三峰山。歩いてみたい、あの上を。

 

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 山の名を調べきりません。山だけ見てると本気で群馬に住みたくなる。

 

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 さらに北上して

 

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 谷川岳が目前に。いよいよです。

 

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 関越トンネル

 

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 全長11キロ。よく掘ったなあ。そしてトンネルを抜けると

 

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 雪国だった。これはたまげた。いくらスキーのメッカとはいえ、水戸では桜がとっくに散っているこの時期に。

 

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 塩沢石内SA。バブルの頃によく聞いた地名。

 

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 ここで買った弁当を広げて昼食。男の一人旅は気楽なものです。雪の中だけど陽射しが暑い。ボクはごきげん。

 

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 周囲は雪山。

 

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 とうとう出ました、越後三山。右から八海山中岳駒ヶ岳。今日から三日間見守っていただきます、よろしくお願いします。

 

 

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 で、越後入りした私ですが、いつも通りつまずきまくりコケまくりの三日間になります。さあ異世界の花は咲いているのか。ギフチョウには出会えるのか。次回を請うご期待。

 

 

 

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鍋足山の谷に迷う

 

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 なべあしやまですからねー。ぽんこさーん、なべたりやまじゃないですよー。以上、私信でした。


 鍋足山の雪割草ことスハマソウの写真を撮りたい。できれば他の方が知らない新産地で。


 そんな浅はかな考えで赴いた鍋足山でしたが、登り始めてすぐに出会ったご婦人に、雪割草の花期は終わっている、イワウチワはまだ咲いていないとの情報をいただきました。ありがとうございます。

 

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 でも登る。葉だけ見ればわかる、なんて甘い考えで。春の雨で潤った山はそれなりにイイ感じです。

 

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 ミツマタが自然繁殖する谷です。あちこちに惑星のような姿を浮かべています。

 

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 ハッチメの滝。岩山なのでこんな小規模な滝があちこちにあって、もっともな名前がついていますがまあ最大落差でもこの程度。雨の直後なら見る価値はあると言っておきます。

 

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 途中にある岩にびっしりと着生する植物たち。

 

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 オオトラノオゴケ。茎が立ち上がって透明感のある茎葉を光に晒します。ふわふわです。上質なペルシャ絨毯ってこんなものなのかなあ。

 

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 コウヤコケシノブ。こう見えてシダ植物。

 

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 ウチワゴケ。御岩神社にあるのをご紹介しましたっけ。コケと付きますがシダ植物。

  ※ 種名間違っていたので修正しました。スーさんご指摘ありがとー。

 

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 コウヤコケシノブの古い葉に着生するのはカビゴケ

 

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 ブログで何度かご紹介しました。顕微鏡サイズのコケです。

 

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 昨秋の記事で消滅したと書いたフタバアオイはちゃんと芽生えました。

 

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 徳川の三つ葉葵はこのフタバアオイを3枚合わせて図案化したもの。ややこしい。

 


 さて、ただ黙々と登れば20分かからぬここまで、実に1時間を費やしてしまいました。写真撮影にかこつけていますが、実はさっぱり歩が進まない。この先に花は無いという情報を得てしまったから。いかんこのままでは。

 

 

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 というのでちょっと冒険を思い付きました。標識のない道を行ってみよう。そこでスハマソウが見つけられればもうけもんです。まずはこんな踏み分け道を辿って。

 

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 どうやら沢を詰めるルートのようです。沢登りは上り詰めた最後に岩壁がそそり立っていたりして気が臆しますが、そんときには戻ればいいや。

 

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 周囲は集塊岩の大岩塊。這いあがりすり抜けながら進みます。

 

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 信じてください、私は本来こういう登りをする者ではないんです。誰も行かないコースを登った!新ルートを開発した!なんて喜ぶ冒険登山や、今日は5分短縮した!途中で10人抜かした!なんて自慢するフィジカル登山などは一歩引いて見ております。でも今日は、まるで導かれるように、呼ばれるように、先行者のかすかな踏み跡を見失うこともなく足が前に出ていきます。

 

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 そして突然視界が広がりました。岩塊が消え、谷が広がりました。さっきまでの剣呑な空気が消え、穏やかに生命が憩う匂いがします。

 

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 足元に赤い光。キノコです。こんな季節に。

 

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 ベニチャワンタケモドキ、という種類かな。

 

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 ヒナスミレだ。実は今日のウラ目標の一つ。

 

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 残念ながらまだつぼみ。

 

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 ベニヒラタムシ。成虫、幼虫ともに朽ち木を棲家とします。忙しそうに歩き回るので写真がブレました。

 

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 トウゴクサバノオが咲いてます。どうしたんだ、急に春を喜ぶ生き物たちに囲まれてしまった。

 

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 わあこれは。

 

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 シロキツネノサカズキモドキという木材腐朽菌、キノコです。ツボの高さ1センチほど。

 

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 それぞれに光を放って春を喜ぶ生き物たち。

 

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 標識が現れました。猪ノ鼻峠から鍋足山に向かう道に合流したようです。それで思い出しました。この谷、初めてじゃない。さっきは偉そうなことを言いましたが、実は若き日の冒険登山の思い出。猪ノ鼻峠付近から道なき沢に取りついて、しばらく彷徨したあとでこの道を見つけ、そこから鍋足山を目指す途中でこの谷に辿りつきました。平らで開けているのにやぶが繁茂するでなし、切り立つ岩に四周を閉ざされた空気感、豊かな土壌、生命の気に溢れた静謐な森。手帳には「不思議な谷」と記録しました。当時も今も、全く同じ感覚をこの場所に感じたわけです。

 

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 静かの谷、と勝手に命名します。ここは四季を通じて見守りたい。きっと面白いものが見られます。

 

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 ちらほら生える大木は

 

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 ケンポナシ。これは実というか果托というもの。たくさん落ちてました。水戸あたりにも生えてますが、こんなにまとまって生育するものでもない。

 

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 しばし憩いたいのですが道も究めたい。沢の詰めなのでやはり急傾斜、でもロープが整備されています。

 

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 やがて稜線に出ました。

 

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 右、三角点峰への道は閉ざされてます。崩落でもあるのでしょう。こういうのを乗り越えたりした若い日もあったなあ、ああ恥ずかしい。もうそんな外道はしません。

 

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 左、大岩を巻くカニの横這いやらⅡ峰の岩壁をすり抜けるやらして鍋足山本峰に至ります。知っている道だし、今日はあの谷に戻りたい。ここから来た道を下りました。

 


 命名したばかりの谷をしばし歩きましたが残念、スハマソウはありません。下山しよう。来た甲斐はあった。

 

 

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 と素直に同じ道を辿ったつもりでしたが、ふと気づくとまた違う踏み分け道を歩いていました。沢が下に見えるので道を違えたのはわかるし、戻るのも容易いこと。でもまたアレです。呼ばれたような気がする。このまま進んでみます。

 

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 この奥。

 

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 もう道はありません。谷です。狭まったところにイタヤカエデの木。ここのヌシ、いや門番でしょうか。手を合わせて通行を許してもらいます。すると通り過ぎたその根元に

 

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 ヒナスミレ。

 

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 人呼んでスミレのプリンセス。早春の山中でしかお目にかかれない深窓の姫君です。

 

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 これに呼ばれたのかなあ。

 

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 ここもまた不思議な谷です。笹の茂るやぶがない。地滑り跡のような地形、南東向きでよく陽が入る。先ほどの谷とは別の意味で良い空気感があります。ヒナスミレに合わせて雛の谷と命名しちゃおう。ここもまた季節を違えて来る価値がありそうです。

 

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 ヒトリシズカ。よく見ると毛虫が一匹、葉の陰で身をすくめています。

 

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 この世界を必死に生きようとするもの、そっとしてあげましょう。花だけ写るアングルで、ほうら静御前の舞い姿に。

 

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 タチツボスミレは、陽を浴びて春風にさざめきながら群生する姿が真骨頂だと思います。

 

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 日本の気候に適応した森のスミレ。

 

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 早春の定番、ミミガタテンナンショウ

 


 スハマソウはなかったけれど、見るべきものは見ました。下山します。

 

 

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 登り口の笹原の谷、そこここに咲くミツマタのひとつに、何かが付いてます。

 

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 トラマルハナバチの、たぶん女王。まだ王国を持たない女王。じっとしています。もともと大人しいハチですが、写真を撮るさいに枝が揺れても動かない。カメラが寄っても動かない。何があったのか。どうしたのか。何も助けてやれないことを歯がゆく思います。

 

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 笹原の登り口。今まで何十回と来ていて、実は見られていたことに今日初めて気付きました。

 

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 いつからここに。非礼を詫び、手を合わせて帰りました。

 


 今日のこれ、最中は冒険しているつもりでしたがさして危険な目に遭ったわけでなし。探検と言うのも既に誰かが歩んだ跡を辿ったのだから適切ではない。というわけでただ迷ったと。鍋足山に迷う、それなりに楽しゅうございました。

 

 

 

 

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追記

 ここまで調子良く記事を更新してまいりましたが、明日より三日ほど新潟県の長岡に遠征してきます。しばしのおヒマ、お許しくださいませ。

花三題。カタクリとか御岩神社とか。

 

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 お花で3ネタを。


ガーベラとスターチス
 3月から4月にかけて、それこそ山のように花束をいただきました。贅沢な話です。おそらく一生分の花を手にしました。おかげで我が家は一歩玄関に入ると濃密な芳香に鼻腔が満たされてくらくらする状況が続いています。


 できれば思い出としてすべて残したいのですがそこは花。その刹那を楽しめばあとは枯れ朽ちる運命です。では写真で、とも思いますが花束の写真は難しい。雑多な園芸花を束ねると、花そのものより背景やライティングに力を注がねばいい写真になりません。


 というわけで、最後にもらったガーベラ・スターチスカーネーションの小さな花束から2種を選んで、クローズアップされた記録とします。こんな思い出の残し方もある。

 

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 個人的にはこんな陰影のある絵が好きです。

 

 

 ガーベラ

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 スターチス

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カタクリ
 昨年もご紹介した、ニリンソウの咲く神社の林床に一株だけあったものです。道路ぎわの目立つ場所にあって、近所のジジイに見つかったらおしまいという運命のカタクリ。どうやら無事に春を迎えました、と言っても最大の難関はここからです。この手の可憐な花の最大の敵は、目についたものを片っ端から掘り取って持ち帰ろうとするジジイども。葉で植物を見分けるなんて芸当はできないので、みな開花期という一番無防備で大切な時期に掘られてしまいます。おかげで水戸のカタクリは絶滅状態です。

 

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 開花していました。とりあえずはめでたい。まだ花びらが反り返る前の咲き初めの貴重な姿を撮り留めました。

 


御岩神社

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 鍋足山に行った(そちらの話はまた別記事で)帰り、良いものが見られたお礼に御岩神社にお参りしました。もちろん季節の花の確認も私の大事な責務なのだ。


 第一のポイント、鳥居下の足洗い場。

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 毎年お見せしちゃいますが、日当たりのいい場所でショウジョウバカマが大喜びです。

 

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 のみならず…… おわかりになりますか。

 

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 キクザキイチゲ。日が当たれば開きます。

 

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 境内でカタクリがあるのはここだけ、とは昨年も言いましたっけ。

 

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 境内に入ると、林床を覆うコケたちが一斉に胞子のう(花みたいなやつ)を出しています。斜陽を浴びて神々しく輝きます。

 

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 これはヒノキゴケ。水と陽の恵みに歓喜しながら繁殖のときを迎えています。

 

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 前回来た時には乾き切っていた境内。何度かの春の雨で精気を取り戻しました。

 

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 どの季節、どの時間に来ても神すさぶ御岩神社。

 

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 そして「緑陰の小径」。私が勝手にそう呼んでいるだけなので、くれぐれも神社にご迷惑にならないようにお願いします。ここは普段はコケ、早春はオウレン、そして桜の季節にはショウジョウバカマの名所です。

 

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 ああ、今年もまた代わり映えのない写真を並べてしまった。

 

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 門前町の側溝に、境内から流れ出したミズバショウの種子が芽生えてました。もちろん境内のも今が満開です。

 

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 次はシャクナゲの季節かな。

 

 

 

↓ 関連記事、よろしければ。

花二題 - ジノ。

御岩神社,清明の花 - ジノ。

 

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