2004年の秋に家を建て直したとき。道路に面した側を木枠を格子にしたフェンス(ラティスと言うそうな)で仕切ることになりまして。ひとつ目隠しにと,狭い植木鉢でいじけていたミツバアケビを大きな鉢に移し替えて,ラティスに絡ませようと思い立ちました。
そして春。ミツバアケビは大喜びでつるを伸ばし,目論見は大成功。……なんだけど,なんかいる。というか,なんか見てる。
なんだこりゃ。
これはひょっとして……
アケビコノハだー!
シシ神様のダイダラボッチじゃないぞ。
うれしくてついフォトショップで図案化。
解説しますと,要するに蛾の幼虫です。アケビ類の葉を食します。これが通常の休憩スタイル。成虫は鋭い口で果物を突き刺して汁を吸う害虫です。
盆栽の松に隠れてるのも。なんか痛そう。
これだけを見て,蛾の幼虫の模様だとわかる人がいるでしょうか。まあ間違いなく,このブログで一番気持ち悪い写真でしょう。念のため言っときますが,これはあくまでも模様。本当の眼は頭部に小さく付いてます。
……昔のB級SF映画に出てきた宇宙ダコがこんな切ない目をしてたなあ。
蛾の幼虫には奇天烈なものが多々あるわけですが,これは私的にはその白眉です。よくもまあこんな模様を作ったものです。目玉模様というのは,虫の天敵である鳥に対して威嚇効果があるそうで,蝶や蛾の成虫の翅には普通に付いているものですし,幼虫でも例えばアゲハなどが装備しております。しかしこのアケビコノハの徹底ぶりは大したものです。左右に2個ずつ,しかも静止姿勢が露骨に模様を強調して,どこから見ても二つの「目」がにらみを利かせます。
子供の時に図鑑で見て,なんてすげえ虫がいるのかと。それがまさか自宅に出るとは。野外でも2回しか見たことがありません。いずれも藪をぼーっと見てたら「目が合った」という感じでした。作り物の「目」なのに,ここまでリアルだとヒトにまで心理効果抜群です。
我が家では「目玉模様」の名で大人気のアケビコノハの幼虫たちでしたが,このままではアケビの葉が食い尽くされて,楽しみにしていた秋の収穫がおぼつきません。可愛そうだけど,天敵いっぱいの野外に逃がしてきました。
これが今書いてる時点から12年前のこと。以後,ミツバアケビは繁茂繁栄を尽くしてますが,アケビコノハが付いたのはただ一度,このとき限りでした。今でも不思議です。ふらっと立ち寄ったアケビコノハの母親が,この家なら子を託しても大丈夫とでも思って産んでいったのでしょうか。だったら悪い事をしたなあ。