マタタビ酒
材料 マタタビの虫えい果(木天蓼子もくてんりょうし)
薬効 冷え性,腰痛
茨城の秋は本当に豊か。ちょっと山道を歩くだけで
道に落ちてるんですう! 拾えちゃうんですう!
山栗はかろうじて無視するんだけど,こんな立派な栽培グリの木が放置されていて実が道に落ちてるんですう。あらがえませんですう。
アケビ。家に生っているのに,山にあると採っちゃうんですう。
そしてこれ。マタタビ!
え?とか言われそうですが,これがマタタビ。猫にマタタビの,あのマタタビ。
マタタビというつる性の木がありまして,これはその果実なんですけど,ちょっと説明が要ります。長くなるんで,時系列に沿って。
これが6月頃のマタタビ。林縁の大木に絡まって生育します。茨城ではちょっと山に行けば珍しいものではありません。開花期であるこの季節は葉の先端が白くなるので遠くからでもその存在が知れます。ここでその場所を覚えておくのがマタタビ採取には肝要です。
葉が白くなるのは昆虫へのサイン。これを目印にマタタビミタマバエ,マタタビアブラムシなどがやってきます。不思議なのは,これらの虫の目的が花の蜜のみならず,花の子房への産卵であるということです。産卵された花は種子を作れず,その子房はみるみる変形して虫えい(虫こぶ)になり,虫の幼虫のえさ兼すみかとなります。幼虫は肥大した果肉を内部から食べていきます。家が食料,いい暮らしです。つまりマタタビは,大切な実を食べさせるために,貴重な光合成器官の色を抜いてまで虫を呼んでいるのです。何のために?
虫はすべての花に産卵するわけではありません。蜜をなめるだけの場合もある。その時には受粉が行われて種子が作られ,その花からは正常な果実ができます。果実は秋に黄色く熟し食べられますが,あまり美味いものではありません。薬効もない。
虫こぶになった実は,内部で幼虫を育てつつ,正常な実よりも巨大にブクブクと肥大し8月のうちにぼろぼろと落下します。落ちた実は腐りもせず,穏やかで湿潤な林床に埋もれて虫の揺りかごの役割を全うし,成長した幼虫は脱出して周辺の土中で蛹化し,来年またマタタビに呼ばれる日を待ちます。
なんでしょうこの至れり尽くせり。正常な実は半分もありません。しかも虫こぶよりずっと小さい。マタタビは受粉のために,とんでもない資源量を虫につぎ込んでいるのです。ちゃんと受粉して種子を作るつまり有性生殖とは,そこまでメリットが大きいものでしょうか。……いや,同属のサルナシやミヤママタタビはこんなことしてないぞ。この三種のうちでマタタビが最も繁栄しているのは事実ですが。
話を戻します。マタタビ酒づくりでした。薬効が最も顕著なのは,これも不思議なことにこの醜い虫こぶなのです。8月から拾えます。これを一度湯通し。中の虫を殺すとともに,細胞構造を破壊して乾燥しやすくします。
ぐつぐつ。
これを数日天日干し。こういう肉厚のものは小さく切ると良いでしょう。
ここで注意。生だと腐らないマタタビですが,湯通しをするととてつもなくカビやすくなります。8/9月の高温多湿の時期は,夜間に出しっぱなしにしたり小雨にあったりするともうカビまみれ。カビたのは絶対に使ってはいけません。何度もこの失敗をしました。今は採取したマタタビを冷凍庫にいれておき,気候が安定する10月/11月になってから処理します。あと,野外では腐らないので10月になっても拾えますが,その時期には大きいのはイノシシに持っていかれ,残ったのも中はムシのフンだらけでスカスカです。今年,私はこれをやっちゃいました。
これくらい乾燥すればOK。そのまま保存もできます。この状態で揉めば,余分なヘタや虫のフンも落ちます。
容器に三分の一。ホワイトリカーを詰めて。
漬けて一週間もすればこれだけ浸出します。1か月で使用は可能かと。
これ,私にはホントに実用品。冬場に体が冷えやすいのですが,マタタビ酒一杯でもうぽかぽか。私の冬支度の一つです。