冬虫夏草 ウスキサナギタケ
前回の記事(北茨城,花園の花と虫 - ジノ。)を受けて,今回は冬虫夏草の古い写真を並べさせていただきます。ほとんどが二十年以上前のポジフィルムから起こしたもの。私は茨城の山野でこんな不思議なものを見てきたんです。
まずお見せするのは「不完全菌類」。なんだ不完全て。菌類の分類のややこしいところですが,その解説はまたいずれ。
ハナサナギタケ。最もよく目にする,冬虫夏草の最普通種。地中のガの繭から発生していました。じつはこの写真の個体,私の生涯初の冬虫夏草なんです。盛口満氏の本を読んでその気になって職場近くの神社の森に出撃してあっさり見つけてしまったもの。フィールド運の強さは自慢ですが,その後の探索活動の困難さを思うと本当に奇跡的な発見でした。これでハマっちゃったんだよな。
一般的なハナサナギタケ。こんな風にガの繭を突き破って柄を出し,それが地上に現れます。
コナサナギタケ。前種とよく似てます。
オサムシタケ。貧相な個体ですね,これ。明治神宮の森に出るそうな。
ギベルラタケ。葉上のクモから発生。
クモタケ。キシノウエトタテグモの巣穴から発生。筑波山で見つけました。
マユダマタケ。朽ち木中の甲虫類の幼虫に取り付きます。
ツクツクボウシタケ。前出(ツクツクボウシの森にて - ジノ。)。
ヤンマタケ。ミルンヤンマ,ノシメトンボといった特定のトンボからのみ発生。
ここから完全型の冬虫夏草。
ウスキサナギタケ。最初のハナサナギタケと同一種です。
サナギタケ。いちばん名前をよく聞く冬虫夏草。
ツクツクボウシセミタケ。たくさん生えるツクツクボウシタケの中に混じります。
ガヤドリタケ。冬によく見つけます。
カメムシタケ。小型のものは実はそこらへんに。
キイロクビオレタケ。朽ち木の中の甲虫の幼虫から。
テッポウムシタケ。通常は木の中から出てるのですが,これは森の地上に落ちていた。たぶん生息していた木が折れたのでしょう。おかげで見つけられた。
マルミアリタケ。ムネアカオオアリの女王から。新たな一族を創成しようと意気込んでいた女王を,なんとむごい。
フトクビハエヤドリタケ。まだ胞子を作る器官「子嚢殻」を形成していません。
タンポタケ。ツチダンゴ菌という地中だけにある世にも珍しいキノコに取り付くという,これまたレアものの冬虫夏草。
カイガラムシタケ。「子嚢殻」があるように見えるのでそう分類しましたが,ひょっとしたら不完全菌のギベルラタケかも。
一日の戦果。良い「坪」に当たればこれくらい。
冬虫夏草酒。有効成分コルジセピンなど。ガンの特効薬だというし,健康にいいんでしょうけど,……正直に言います。虫臭い!
いま私が最も敬愛する作家,梨木香歩さんの最新文庫本のタイトルが「冬虫夏草」でした。期待通りの内容で,深く感じ入る一冊。中の一篇のタイトルが「サナギタケ」。突然に冬虫夏草なんて言い出したのはそおいう理由だったのだ。