ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

神保町のエロ本屋/接客について思うこと

 

 

 20年くらい前まで,よく東京に買い物に出ていました。


 東京がご近所というわけではありません。しかし当時の特急を使って1時間半というのは,東京近郊でいくつも各駅停車を乗り換えて都心まで,というのと大差なかったと思います。ゴメンね多摩地区。ちなみに今はもっと早く行けます。大学卒業した当初はより東京に近い土浦在住だったので,さらに気軽に行ってました。ファッションとかおしゃれな街とかに興味の無い私が,なぜ東京? それは間違いなく,東京に出なければ買えないものがあったからです。最初にビデオデッキを買ったのは秋葉原。まだ電気街だった秋葉原。そのころは地方にまだ定価売りの電器小売店しかなく,いろいろなメーカーから選んで安く買うというのは秋葉原でしかできない芸当でした。

 

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 神田神保町古書店街にもよく行ったものです。洋書の画集,読みたかった絶版の文庫本。エッチな写真集。何でもあった。1日楽しめました。


 その神保町の古本屋に,写真集専門のとんでもない店がありました。品揃えのことではありません。もはや異常としか思えない店主の性癖が爆発する店でした。


 靖国通りすずらん通りの間にあったと思います。木造平屋の暗く汚い店内には,これでもかとばかりにちょっと昔のアイドルの写真集が法外な値札と共に吊り下げられ,本棚にはグラビア雑誌がこれまたいい値段と共に全号揃いで並べられていました。話に聞く中東のバザールもかくやという品揃えです。そして本棚の足元には,週刊プレイボーイとか平凡パンチとかが平積みにされていました。○○のヌード掲載!若き日の××裸体!なんて手書きの札が付いています。でも値札は無い。これがポイント。××の若き日の裸体なんて言われたら,そりゃあ興味が沸くってもんさ。その客の様子を,番台みたいな帳場に収まった店主は横目で観察しています。ついに客がその一冊を手に取り,「すいません,これいくらですか」の「す」を言ったその瞬間!


『そこのに触んじゃねえっ! そこまだ整理してないんだよっ』


 まるで万引き現行犯を取り押さえたようなとてつもない大音声だいおんじょうでわめくのです。


 これやられたひと,手を上げてください。おそらく千人じゃきかないと思う。毎日毎日,一日何回もこれをやってストレス発散しているのです。もちろん私は初見でこれをやられ,他人がやられるのを目撃し,なにかの媒体でもこの話が載っているのを見ました。


 この店主,電話の応対も大したもので,とある写真集の在庫の問い合わせにぞんざいに応えたあと,「うちは日本全国相手に商売してんだよ」と毒づいているのを見ました。どんな接客しようが,客は向こうから頭下げてくるんだよ。実にわかりやすいカン違い小売店主でした。地上げが横行する前の,神田古書店街の黄金時代のお話です,はい。今はもうこの店ありません。


 写真集専門というと,駿河台下交差点あたりにあった店も,店主のふんぞり返りぶりは同じようなものでした。どちらの店主も,今頃は荒稼ぎしたカネで左うちわの生活しているのかな。悔しいなあ。


 これほどではないにせよ,私の地元・水戸の商店でも,なまじ商売のうまくいっている店のおかみさんはだいたい接客態度がひどい。南町の表通りの写真屋のカミさんがご近所さんと談笑していて,声を掛けても無視され続けたことがあります。自分がそんなまともじゃない人間に見えたとは思いたくないのですが。


 秋葉原アメ横も,50代以上の店員にはひどいのがいっぱいいますね。あの横柄な接客。客が向こうからいくらでもやってきやがる,ああ面倒くさいというあの態度には怒りよりも驚きが先行します。アメリカではトイザらスが潰れたそうですよ。ネット販売が盛んになって,店にはただ実物を確認する客ばかり来るようになって。


 本当に,東京あたりの個人商店でモノを売る商売している人たちに警告。これからの敵はネットです。店を続けたかったら,ネットにはない付加価値を付けましょう。最低限,丁寧な接客と笑顔を。


 実際のところ,私自身買い物目的で東京に行く機会は減りました。行くのは良いものを扱っていて,まともな接客ができる店だけ。だってネットで手に入るもん。


 私が高校生のころ,近所に驚きの文房具店がありました。表通りの潰れた店舗を借り受けて,ベニヤ板の台に鉛筆や消しゴムを並べてました。小柄で福々としたおかみさんが店番をしているのですが,私のようなただの高校生が消しゴム一個買っても,満面の笑みで腰を90度曲げて,心からの発声でありがとうございましたと言ってくれました。当たり前と思うでしょ? いえいえ,水戸の店でこんな接客をするのは天地神明にかけて他にありません。本当に驚いたものです。


 それから30年の月日が流れ,勤めが水戸になり,県庁のそばを通りかかったときです。視界の隅に,いつか見たあの店名が。ええっ? 戻ってみると,まごうかたなきあの店です。そうか,場末からこんな官庁街に進出したか。入ってみます。昔は吹きっさらしの店先でしたが今は自動ドア。いらっしゃいませーと元気よく声をあげたのは……あのおかみさんでした。30年経っても変わらず福々として。どこかにしまいこんで忘れていた宝物を見つけ出したようで,胸がいっぱいになりました。聞けば商売は息子さんの代に移ってましたが,店番はお嫁さんと交代でやっているようです。息子さんは親の姿を見ています。きっとDNAは正しく受け継がれ,商売は続いていくでしょう。応援してます。

 


 まっとうな商売人に祝福を。ナメた商売人に鉄槌を。お客様は神様だなどと心得違いをしているわけではないんです。私は基本的に店員さんとは敬語で接しますし,コンビニで馴染みのバイトさんから商品を受け取るときには頭を下げます。互いに対等な大人。なぜそれがわからぬか。

 

 

 

 

 

参考記事

死なずのバッグをてにいれた - ジノ。

アメ横のナイフ屋の話 【恨み節です閲覧注意】 - ジノ。

今日も負けた - ジノ。

 

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