ネタバレあり,です。
久しぶり,アニメ評でもさせてください。悪天候ゆえこの週末(7月初め)は休養日です。
4月始まりの,いわゆる「春アニメ」。一通りチェックはしました。ええ元漫研会長のサガでございますよ。
近年の深夜アニメは1クールかせいぜい2クール。粗製乱造,当たれば続編商材展開ヘタな鉄砲も数打ちゃどっかん。完全に安直なビジネスモデルが構築されてます。それで傑作が発掘されればいいのですが,多くはライトノベルに今どきの可愛い絵を被せたもの,お色気路線,正道から外れた少女漫画。いい加減にしろ異世界モノ。
原作の内容の薄さに加えて,何より目につくのが演出の力不足。「間」を読まずテンポを踏まず,あげくに次のセリフが読めてしまう陳腐さ。ある作品の初回,田舎から出てきた少女が都会の駅で見るからにパターン通りに浮かれてます。まさかまさかおいまさかやるなよと見ていたら,やっぱり荷物を盗まれます。
…… 昭和の演出やってんじゃねーよ。
このアニメはそこで視聴中止,ただちに消去しました。その先見る価値なし。あと,ここらでアレが出てきたらヤだな,若いのになぜか敵の大幹部でロン毛のイケメンのああ゛やっぱり出やがった,とか。
ごめんなさい,他人の悪口は書かないという誓いのブログなのですが,漫画やアニメにはやたら厳しくなってしまいます。
で,春アニメでした。
結局録画を消去しなかったのは「冴えカノ」(再放送,今回初めて知った。ラノベ・ハーレムものながら快作)と「ACCAあっか13区監察課」だけ。
ACCAは「オノ・ナツメ」という人の漫画が原作です。この作者の漫画はきちんと読んだことないけど,そのスタイリッシュでアクの強い絵柄は知ってました。アニメではそのアクが薄められより洗練されたキャラクターになってます。
舞台は鳥の形をした(!)島国。スケールはありませんが,亜寒帯から熱帯まで含むのですから大陸国と言っていいでしょう。いまは1つの王族が統治する立憲君主国,でもかつては13の独立国から成っていて,いまはそれぞれが自治権のある「区」とされています。いずれもはっきり外観の違う人種または民族で構成され,富める区もあれば貧しき区もあり,区界を越えれば気候も文化もまるで異なる別世界です。驚くべし,それなのに同一の言語を用い,一人の王さまを君主と仰いでいます。さらに驚くべきは統一された警察・消防・医療機構があること。この組織が「ACCA」で,各区のACCAが不正を働かないよう監視するのが「監察課」,主人公ジーン・オータスの所属する組織です。
ジーンの仕事はすべての「区」を回りその業務を監査すること。若く,頭脳明晰,眉目秀麗,常に冷静に物事に対処する,誰もが一目置く優秀な監察官です。誰からも好かれる不思議な魅力の持ち主でもあります。
このジーンが,ACCAの企てるクーデター計画に巻き込まれます。ただ淡々と仕事をこなしているだけなのに,その行動に意味を持たされます。なぜならジーンは…… 。
今期のアニメで大人の鑑賞に耐える唯一の作品。鳥の形をした大陸,なんてこの作品のための突飛な設定も不思議と違和感なく,むしろ重要な世界観の一部です。
ストーリーも組織内の権力争いを若い傍観者の眼で描くモノかと思っていたらあらびっくり,貴種流離譚(©折口信夫)でした。詳説は避けますが,最後まで先を読ませない展開と主人公の魅力で押し切られました。うん,面白かった。
漫画が原作。そこに十分な力量のあるスタッフが気を入れて作り上げた作品です。「異世界モノ」の,すでに使い古された平凡男が異世界では無敵だの露出の多い美少女魔法使いだのといった「部品」をただ組み合わせてでっち上げられた作品とのレベルの違いを見せつけられた気がします。創作とはこういうものだ,と。
ACCA,まったく話題にならなかったようですね笑。「春アニメ人気ランキング」にもまったく名前が挙がってませんでした。これが現実。良質な作品をていねいに作るより,お色気美少女出して数字取ったもんの勝ち。ううむ。
せめては関連商材にいくばくかおカネを使ってあげよう。スタッフの皆さんめげないでください。あとこれを読んでいる読者の皆さん,おっぱい美少女が出てこなくても納得できるなら,ビデオとかで見てやってくださいね。
画像はすべて番組HPからいただきました。問題があるならただちに消去いたします。