最後まで読むと胸が悪くなるかもしれません。
ご了解のうえ,読み進めてください。
今日は大学で生物の研修です。
午前は大学で教えるお医者さんの講義。炎症・免疫・腫瘍・生活習慣病というテーマです。NK細胞の作用とか細胞障害性T細胞とノーベル賞になったガン治療薬オプジーボの関係とか,かなり専門的な内容でしたが質問しながらなんとか理解できました。免疫の研究ってずいぶん進んでいるんだなあという感想です。講師の筑波大出身のお医者さんが誠実でお話が上手だったのも幸いでした。いや,医者にはかなりおかしな人がいることをよく存じているのですが,筑波大の方は概してまともです。
午後は解剖学実習。何をやるのかと思っていたらスケッチ用ケント紙を渡されて,内臓模型と神経模型と骨格標本(本物!)と人体標本(本物!)の観察とスケッチをしろ,とのこと。最後のやつでわし,失神するかも。
まずは神経模型。
脳はいくつものパーツから成っていて,この模型をバラすと組み立てるのが大変でした。おかげで「間脳」の形を初めて知ることができた。
脳スライス。そういえばアインシュタインとか夏目漱石とか,偉い人の脳って結構保存されているんですよね。
内臓模型。
心臓内部。教科書の図では本当のことは理解できない。
子宮って存外小さいものなんですね。
骨格標本。
中国製,本物の人骨。男女ありましたがいずれも小柄な方々です。
いかに優れた模型が作られようとも,実物にはかないません。私が特に感動したのがこの肘関節。上腕骨と尺骨・橈骨がいかに巧みに接しているか。
そして人体標本。これも中国製。「ご遺体」なので写真はありません。
この人体というのが,ご遺体をホルマリン漬けにしたあと水分を樹脂に置き換えたもので,完全防腐処理。一時期盛んに中国で作られて世界中に売り込まれたもので,一体なんと一千万円。実物でありながらあのホルマリン臭がなく,生々しいのが苦手な私にも何とか耐えられます。なにより「実物」の持つ迫力,説得力は模型の比ではありません。国内ではご遺体の献体の数に限りがある以上,お金で買ったものだとしても医学教育に大きく貢献していると確信できます。
でも。
スケッチはしません,いやできませんでした。じっと観察しながら,この人たちはいかなる理由でこんな姿になってしまったのかを考えていました。お顔はいずれも東洋人,骨格標本同様に小柄です。中国語の証明書には正規の手続きを経たものであるとか書いてあるのでしょうが,中国です。ひとかけらも信用できません。実は同じ東洋人顔の標本展をアメリカの博物館でも見ました。ものすごく大量に作られて外貨獲得に貢献したようで,いったいその人体はどこから供給されたものか。
「人体標本 中国」で検索したら,おぞましい記事が次々とヒットしました。これらはいずれも,江沢民以降の中国政府によって大弾圧された「法輪功」の人たちだと。共産主義にそぐわないと集団で捕縛され,どこかへと連れ去られた人々。拷問で殺され,トラックに詰められ,大連にあった「人体標本製造工場」に運び込まれたものだと。
めまいがしてきました。
現物の「人体」は,医療を学ぶ学生には絶対必要なものです。ですからこの現場に人体標本があることには一切異論をはさみません。問題は,この現代にこのような虐殺が平然と行われていたことです。法輪功の人たちは一方的に邪教信奉者と決めつけられ,逮捕状も裁判もなしに収容所に押し込まれ,殺されていったとのこと。さすがに事が世に広まって標本工場は閉鎖されたと言いますが,何と悪魔的な所業。二十世紀の悪夢とのちのち語られるだろう共産主義の,末尾を飾る悪行です。アメリカが中国の人権問題に盛んに言及するのも理解できます。
勉強になったけどトラウマにもなった。そんな研修でした。
タマムシを拾ってきた人がいました。普段なら喜んでひと騒ぎするところですが,今日は別のものに見えるのです。