ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

英語外部試験とシンゾーくん

(この記事は私が執筆を予定している「ボンボン首相一代記」という小説の一篇,そのストーリーボードです。実在する人物・組織には何ら関係いたしません)


(いつもの読者の皆様へ 今回はかなり毛色の変わった政治的というか教育的というか,そんな内容です。別人が書いてると思って無視してくださいませ)

 

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 ここに一人の政治家がいました。名をシンゾーくんと言います。


 代々続く政治家の家系で,もちろんお金持ち。必死で努力したことも食うに困ったこともありません。与えられた役割さえ演じていれば安泰です。野党が粒ぞろいのせいか血筋のおかげか,どんな失策をしても選挙には勝ってしまうので外国の政治家からは気味悪がられています。


 2012年,シンゾーくんは無事総理大臣になりました。すると父祖の代からのタニマチすじ,財界の方々からお呼びです。


「これ,シンゾー」
「へへえっ なんでございますか長老さま」
「お前を総理大臣にしてやったのは,この国をわれら大企業の楽園に作りかえさせるためじゃ。わかっておろうの」
「なんでも仰せのままに」
「最近一流大学出のやつを採用してもさっぱり役に立たん。この国の高等教育はどうなっておる」
「しかし大学生が遊んでばかりで役立たずなのはこの国の美しい伝統ではございませんか」
「大学の学者なぞに教育はできん。高校生で役に立つのが大学に入れるようにしろ」
「役に立つと申しますと」
「すぐにビジネスに使える奴ということじゃ。まず英語は文法なぞいらん。文学などもってのほか。ほれなんだあの,エーケンとか持っていて会話ペラペラのヤツが大学に入れるようにしろ。国語もじゃ。源氏物語? 夏目漱石? いらんいらん。そんなもん商売の役に立たん。契約書とかビジネス文書が読めればいいのじゃ」
「そのようなことは入社してからの社員教育で対処していたのでは」
「コストの無駄じゃ。ワシらの会社の利益に繋がるように。シンゾー,頼んだぞ」
「へへえ」


「おい文科役人」
「なんでしょう」
「長老さまがかように仰せである」
「わかりました。こちらの言うことを聞きそうなボンクラどもを集めて,テキトーに言いたいこと言わせて,最後にこちらの資料通りの結論を出させて形にしましょう。会議の名称は…… 教育は危機的状況である,という認識をデッちあげて改革の必然性を演出できるよう『教育を再生させちゃうぞ会議』としましょう。こいつらに『提言』させて『チューキョーシン』で後追いさせて」
「ことほど,さように」


「さあ自称文化人ども,打ち合わせ通りに,せーの」
「小学校から英語! 大学ではカネになる研究だけさせる! すべての学校のすべての授業をアクティブラーニングに! 大学受験は推薦重視で! 高校での活動記録を大学に提出! 高校の国語から文学を無くす! 受験の英語は外部試験だけ! 現場無視! 計画行政! 独善主義!
「よくできました」


「ぐへへ,お役人様」
「これは。顧客データ流出で屋根の傾いた受験業者ではないか」
「お役人様,うかがっておりますよ。ボンボン総理の無茶ブリと,現場を知らない学者どもの能天気な絵空事を」
「これ声が大きい」
「私共にはすべてをお手伝いする準備がございます。どうかお任せくださいませ」
「ことほど,さように」


 2019年,いよいよ英語外部試験の実施が来年度に迫りました。


「英語外部試験,費用の事とか問題になってますが」
「1万円ぽっちの受験料が払えない者がいるというのか。食うに困ったことのない私には理解できん。決定事項だから押し進めよ。そうだ手下のデブメガネを文科大臣にして文科省に睨みを利かせよう」

 


(困った。商人と学者と役人の言うとおりに進めたけど,無理じゃんこれ)


(おかしい。偏差値的に優秀なボクが考えた道筋がなぜかうまく回っていない)


(マスコミどもが気付き始めた。ワイドショーのネタになったらまずいぞ)


(話がここまで進んではやめるにやめられん。それが政策というものだ)


(大変だ,役人の言うとおりに準備して予約金まで集めたが,このままではウチは大損だ)


(ひと儲けするつもりがなんかキナ臭いぞ。もう少し様子を見よう)


(この3年で仕事が5倍になった。これまで通りにセンター試験だけならルーティンワークで済んだのに)


(学者どもめ,現場も知らずに夢物語押し付けやがって)


(役人め,ろくでもないこと思いつきやがって)


(役人の言う通りに結論出したら,妙なことになってきたぞ。俺の経歴に傷がつかなきゃいいが)


(シンゾーめ)


(シンゾーめ)


(シンゾーめ)


(長老め)


(ああ誰か一発かましてくれないかなあ)


「外部試験,貧乏人は麦を食え」


「よく言ったデブメガネ」
「でかしたデブメガネ」
「よし非難ごうごう,これで中止にできる」


「中止に…… いや中止と言い切っちゃうといろいろあるので,延期にします」


「ああこれまでの心労は何だったんだろう」
「ああこれまでの残業労働は何だったんだろう」
「ああこれまでかけた数億円は何だったんだろう」
何だったんだ,この7年


 シンゾーくんのひと言から,多くの人が奔走し,悩み,残業し,ヒーヒー言っちゃいました。みんなが振り回されました。エーケン協会も大学ニューシセンターもみんな被害者です。結局誰も得することにはなりませんでした。いや唯一,高校生たちはこの愚行から危機一髪逃れることができて,まあ得したのかな。大人たちの乱痴気騒ぎも楽しめたし。


 さあ主人公シンゾーくん,落ち込んじゃいけないよ。無くなったのは英語外部試験だけ。あとの施策はみな残ってます。シンゾーの名を教育史に残すのだ。頑張れシンゾー。負けるなシンゾー。

 


追記
 もしこの文章を30年後に読むひとがいたなら。そちらの時代では,日本人は自然科学系のノーベル賞取れてますか? …… ああやっぱり。それはね,30年前にシンゾーという総理が大学で基礎研究をできなくしちゃったからですよ。覚えておいてくださいね,この政治家の名前を。

 

 

 

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