こんな美しい世界に住んでいたはずはないと考えこむ
串田孫一の散文詩にそんな一節がありました。そんなこともあるのか,フィールドにあり続けた人よ。
役職を降りて以来,なるべく定時に帰るようにしています。数年分の自分の時間を取り戻そうと躍起です。良くも悪くも要領はいいので,仕事はきちんとこなしています。
今日は一日雨でしたが,午後も遅くなって雲が切れて西空から晴れ上がってきました。ゼフィルス(ミドリシジミ類)の蝶が見たかったので,水戸市内,那珂市との境界近くにある「七ツ洞公園」を目指します。以前にミドリシジミの卵を見たことがあった場所です。
着いたそうそうの駐車場で繭を咥えたアリが小走りに行くのを見つけました。サムライアリ! サムライアリの奴隷狩りだ! そうかそういう季節だ。
蒸し暑い夏の日の午後に現れる黒いアリの大行軍を水戸ではよく見かけます。奴隷狩りという生態に人間的な基準を当てはめるのも愚かしく,特に感慨はありません。彼らは何万年もこうして生きています。私にはこの世界の美しさの一部です。
ミドリシジミの姿はありません。ちょうど発生期だと思うのですが,もうここにはいないのだろうか。ハンノキ林越しに西日が輝きます。
その西日を受けてノカンゾウ。先日の記事のニッコウキスゲの同族ですが,細くて小柄なかそけき夏の使者。前にも書きましたが「となりのトトロ」のサツキがメイを探し回るシーンの夏草に混じって咲いてます。
ガクアジサイの青が映えるのはまさに夕刻です。
水面に映る風景を逆転させても,決して現実の視点にはなりません。ここにない異界からの光景。鏡像世界のホロスコープ。
ひと時を憩うこのひとは,自分が風景の一部であることを知っているのだろうか。
私は私で思います。ああ,自分の住んでいる世界はこんなに美しいのだと。
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