レイン・フォレスト,雨の森。
そもそも晴れ男なのであまりフィールドで降られることがないのですが,雨は好きです。「富士山で嵐に遭っても大丈夫」というカッパも持っているのに使わずじまい。今日のように朝から本降り,気象予報士が胸を張って一日雨ですと言った日にあえて出かけない限り。いかんこれでは雨を知らない自然観察者だ。
というわけで雨にけぶるブナの森に来ているのです。
雨の森を歩いたことはありますか? 一面に雨滴が葉を打つざあああという声が通奏低音として響き,その葉から滴るしずくがぽつりぽつりと古い物語をささやく,どこから届いているのかわからない鉛色の光に包まれた森を。
沢は濁流。本当によく降る梅雨です。
梅雨の雨水は森の地下に蓄えられ,夏の森の生命世界を回す力の原資となります。
葉が受けた水の一部は幹を伝ってブナの根元に集められます。ブナは特に水とかかわりの深い木だとか。
ブナは近縁のイヌブナに対して白ブナと呼ばれます。樹幹一面に地衣類が付いて白く見えるから。幹を流れ下る水は,このブナをブナたらしめている地衣類をも潤していきます。
ブナの実がたくさん落ちてました。これは事故的落下。ブナの実は秋に熟して実るドングリ。その中からまた何百年か続く長い生涯の一歩を踏み出すブナがいます。そしてブナの森は未来永劫維持されていくのです。
イチヤクソウが咲いていたのが意外でした。暖かい土地のものだと思い込んでいたもので。
沢にはバイケイソウ。
梅雨キノコの数々。
伝説の生まれそうな森。
雨音が気持ちよくて,車内で軽くお昼寝。目覚めたら薄日が差していました。何だろうこの微妙な晴れ男パワー。
森を出たところでヤマホタルブクロが咲いていました。
レインハットとおっさん。雨に染まる一日も,たまには悪くない。