ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

どんぐり

 

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 家人が同僚の若いお母さんから尋ねられたそうです。


 ウチの子の宿題で,どんぐりを使った作品持ってこいって言われたのよ。で探しに行ったんだけど無くてさあ,今年は山のどんぐりが不作でクマが里に下りて来てるって言うじゃない? あたしも困っちゃってさあ。どっかに落ちてるとこ知らない?


 はいはい,ターゲットは私ね。家人の職場でも私の正体がすっかりバレていて,そのテの相談がやたら増えました。


 ああ,なんかまあるいどんぐりってあるよね。あれカワイイわよねー。


 ああクヌギね。拾ってくればいいのね。万事了解しました。…… どんぐりがふさくでこまっているもりのくまさんにどんぐりをとどけてあげよう。

 

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 幸い職場は郊外にあって,クヌギ林も近くにあるのを知ってました。これくらいの注文にはすぐ応えられます。大きいのを選んで拾ってきました。クヌギは虫食いが多いから気を付けてね。

 

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 ついでにシラカシクリも。すごく喜んでくれたそうで私もうれしい。

 

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 シラカシは関東に多い樫の木で,どんぐりには丸いのと細長いのの2タイプがあります。神社に生えている巨木の下は,秋にどんぐりのじゅうたん爆撃を浴びます。私にもなじみのどんぐりです。

 

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 爆撃の跡。

 

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 こちらは丸いタイプのシラカシ。ころころころころよく転がります。子供の手の平でころころする姿が浮かんで,なんとも微笑ましい。

 

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 公園では植栽のマテバシイのどんぐりが落ちていました。もともと茨城にないものですがよく植えられています。大きく美しいどんぐりは幼稚園児に大人気です。しかも実は食用で,生でもいけますが軽く湯通しすれば安全。甘くはないけど後を引く美味しさがあります。皆さまもぜひ。私も食糧危機に備えて備蓄しようかと本気で考えた時があります。


 はいそうですよ,おっさんがどんぐり拾ってるんですよ。怖いですか。気持ち悪いですか。私は海岸で婦女子に混じってシーグラス拾いをしてるくらいですからどうってこたあないんです。楽しいなあどんぐり拾い。


 どんぐりというと思い出すのが寺田寅彦の随筆「どんぐり」。岩波文庫寺田寅彦随筆集」第一巻に所載されてます。青空文庫でも読めます。短編です。


 寺田はそのさして永くない生涯に三度も結婚しています。二人目まで死別しているんです。「どんぐり」はその最初の妻と公園でどんぐりを拾った思い出を語り,その妻が残した幼い娘を連れて公園に行くという,少し切ないお話です。妻そっくりの幼な子が同じようにどんぐりに喜ぶ描写は,ほのかな悲しみが通奏低音のように鳴り響く名文です。寺田の初期の作品のなかでは傑作の一つだと思います。


 どんぐりを介して湧き上がる感情。どんぐりが過去と現在を結び想起させる愛と悲しみ。


みんなのうた」にも「小さな木の実」という名曲がありました。男の子が父の形見に握りしめる木の実,あれはきっと堅果,つまりどんぐりだと思います。

 

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 どんぐりって不思議です。どうしてこんなに染みるんだろう。

 

 

 

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