何事にも初手があるものです。
本屋でふと手に取ったコケ図鑑の写真がきれいで,思わずレジに持って行ってしまいました。初めてコケ植物に前のめりになりました。これまで興味がなかったわけではないのですが,意外と大きな分野なので手を出しかねていました。あとはちょっとしたきっかけだったのだと思います。
帰宅してさっそくページを繰ってみました。とにかく写真。著者の経験と腕前と,今どきの機材の性能というのもあるのでしょう,ああ美しいなあというのが感想です。これまでコケ図鑑と言えば白黒線画のものしか見たことなかったので。美しいと思えば,自分で撮りたくなるのが私です。α-6400 に90ミリマクロを装着して,いつものフィールドに出撃しました。とうとうコケ世界へはじめの一歩を踏み出してしまった。
陽の良く当たる芝生の片隅にハイゴケの群落。これはなんとなく名を知っていましたがまじまじと見るのは初めてです。
まずは季節がら乾燥した状態のものを。コケはどんなに乾燥して干からびても死にません。シンプルな構造ゆえの強みです。
霧吹きで水をかけるとみるみる本来の姿に戻ります。
わあ。どこにでもあるハイゴケがこんな。
伸びた葉先がくるんと丸まるのが特徴だそうです。知らなかったなあ。それにしても,この季節にこんな柔らかな緑が見られるとは。
ちなみに,最大倍率で写っている範囲は幅8ミリほどです。以下の写真もその前提でご覧くださいませ。
お次は伐採され,林内に倒れたアカマツの幹。肉眼でほんのり緑色に染まって見える部分があります。これまでなら生物とは思わなかったでしょうが,今日はそばに寄ってみます。…… 茎葉型という分類のタイ類のコケでした。
うわあ,コナコナしてる。
一枚の葉の長さ,1ミリほどでしょうか。コナコナしてるのは葉のふちにびっしりと付いた「無性芽」という構造です。この特徴からヒメトサカゴケと同定しましたがどうだろう。
同じ場所で小さなヒメトサカゴケに押されているのがこちらのコケ。
まだ種名がわかりません。
胞子のうを出してましたが…… あまり特徴ないなあ。
思えば,私が興味を持ってそれなりに詳しくなったもの,チョウとか植物とか冬虫夏草とかざくろ石とか高温石英とか,それらはみな何かのきっかけがありました。たいてい美しい!という感動から始まっていた気がします。すべてが美しい記憶です。コケの美しさも知ってはいましたが,とうとう一線を越えてしまいました。
こちらの切り株,なんの面白味もないように見えて
拡大すると先のヒメトサカゴケを含め数種類のコケがくんずほぐれつ。わあもう私には手に負えない。まさかこの季節にこんな生物群集を見ることになろうとは。
やはり個々の種の本格的な検索・同定には現物を持ち帰って顕微鏡で観察する必要があるようです。でも私は ~ 生物屋にあるまじきことだとは思うのですが ~ そこまでする気になりません。せいぜい「属」のレベルまで検索を落として,これは〇〇ゴケの仲間ですと言えれば十分だと思ってます。なんとなく,いまそこで生を営んでいる生物をはぎ取って持ち去るのには抵抗があるので。専門の研究者じゃないからお許しを。
まあぶっちゃけて言うと,肉眼では見えない微小な世界にダイブできて,きれいな写真が撮れれば私は満足なのだ。
これからときどき,コケの写真をご披露します。そんなわけで種名は怪しいと思うので信用しないでくださいね。
気の早いサトザクラがほころんでました。
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