疲れて帰宅したら玄関の花瓶に盛大に花が盛られていました。撮らねば。この場合の撮るとは,私には接写すると同義です。
大輪の,ガーベラの舌状花が管になったようなキク科の花。園芸種の名は知りません。
キク科は無数の小さな花が集まった「頭状花」を発達させました。中心に密集した小花(筒状花)が外側から開いていくのがわかります。まずおしべが花粉を出す「雄性期」があり,次にめしべが伸びて開く「雌性期」があるようです。自家受粉を避けるための仕組みです。ヒマワリの花も似たような仕組みだったような。ただここには他花の花粉を運んできてくれる昆虫はいない。それでも花は定められた営みを続けます。
右下すみに開いためしべ,中央左には盛んに花粉を出すおしべ。花が植物の生殖器官であることを再認識させてくれます。
カスミソウのつぼみ。
カスミソウの花。あわあわとした肉眼での印象とは別に,陰影の中に情念をにじませます。
これもガーベラっぽい別の花。ススキの穂のような繊細な毛があることに,拡大して初めて気づきました。
花といういわばその種の運命を背負った存在は,細部にまで神が宿ります。人の浅薄な知恵など及ぶべくもありません。
花瓶の花。やがてしおれて朽ち果てる運命です。それでも生命の営みを最後の瞬間まで黙々と続けるのでしょう。花を美しくして人間に保護・増殖させる生存戦略,という見方が今どきの流行りとは思います。でもそういう高次の話とは別に,個々の花はただその勤めを果たそうとするだけです。高いところで戦略戦略と語る輩より,現場で汗を流す人を私は信じます。
それはいいんだけど,花瓶を動かそうと隣にあった木彫りの熊をどけたら魔除けみたいなのがいた。…… こういうの,やめておくれよう。
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