先日,写真のキレイさに思わず買ってしまったコケ植物図鑑。あえて手を出さずにいたコケ分類の世界にあっさり堕ちてしまいました。
となると実践せずにはいられません。先日県北山地を歩いたときに持ち帰ったコケ数種。さあ検索・同定だ。
この場合の同定とは,種名がわからない生物のその分類上の位置を特定すること。要するに名前を調べることです。フィールド生物学の基本中の基本作業なのですが,チョウや哺乳類のように野外のその場で種名がわかるものはごく一部。植物でも菌類でも多くの昆虫やら水生生物やら,たいがいはそれを持ち帰って顕微鏡で拡大して文献を精査して,初めて完結するものです。
なんてエラそうに言ってますが,実は実体顕微鏡下で分解して計測してなんてレベルまでする気はありません。手持ちの図鑑でわかる範囲まで。専門の学者さんてホント大変なんですね。
コウヤノマンネングサ
いきなりこずるい真似をしてしまいました。あらゆるコケの中で一番検索が楽というか一目でわかるやつです。ヤシの木みたいな姿で落葉樹林の林床を埋め尽くします。
拡大すると杉の枝そっくりです。むかし高野山ではこれを紙袋に入れたものをお守りとして売っていたとか。
トヤマシノブゴケ
これも一目でシノブゴケ類とわかるものです。いくつか候補がありますが,
透明尖という構造(白く突き出た部分)があるのでとりあえず表記の種にしておきます。
よく沢沿いの湿地を埋め尽くしています。繊細な美しさが魅力のコケです。
胞子体を出していました。
先端部の蒴歯さくしという構造です。分類の決め手になる場合も。ステキな造形してると思いませんか。
サナダゴケ類
これは種まで落とせませんでした。あ,落とすとは同定を完結させることです。
でも平らに付いた葉が美しい。
サワラゴケ近似のタイ類
あ,小さなタイ類だ,と軽い気持ちで持ち帰ってしまいました。拡大してびっくり。
毛むくじゃら。
どうやら葉先が分岐して毛のようになっているらしいのですが,何種類かある候補のどれにも収まらない。季節的な姿かも知れないので,また調べてみようかと思います。
これは胞子体かもしれない。
ネズミノオゴケ
びっしりと岩の上を覆っていました。一個体はこんなもの。
ネズミの尾とはよく言ったものです,うろこ状の葉が重なって。種子植物なら乾燥地や寒冷地の植物に見られる特殊な形態ですが,コケではありなんだ。
赤い胞子体との色の対比も美しい。
コケがこんなに接写しがいのある被写体とは,知ってはいたけどやはり面白かった。続けていこうと思います。以前にも打って置いた逃げ口上ですが,種名のいい加減さは大目に見てくださいね。
せっかくの晴れた休日を半日潰して,私は何をしているんだろう。
↓ よろしければポチっとな。