ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

灯点し頃の丘

 

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 昨日。


 他の事業所がやらかしたトラブルが波及して私の職場もひと騒ぎ。もともと私が関わるイベントが入っていた日で,トラブル処理プラス通常の業務もこなさねばならず,結局朝7時半から17時まで息つく間もないフル稼働の一日でした。もちろん疲れましたよ。昨年までの役職ならそのまま残業でしたが,幸い定時で帰ることができました。


 こういう神経をすり減らした日はまっすぐ帰る気になりません。ああ,深呼吸をしたい。そこでいつもと反対に舵を切り,フィールドに出てみました。日足が延びたことに感謝です。


 いつものように山の下に車を停め,168段の階段を駆け上がり…… と言いたいところですが体もくたびれています。ヒーヒー言いながら丘の上に出ました。

 

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 見上げる夕暮れの空。ウグイスの谷渡りの声に満ち満ちて,静かに今日の日が夜のとばりに沈んでいきます。


 ほんの数週間前まで天地を満たしていた冷気は消え失せ,春のにおいが丘の上に漂っています。その甘やかな大気を鼻から腹を大きく膨らませるように吸い,口からゆっくり吐く。これを数回繰り返すと副交感神経が知覚を阿頼耶識あらやしきへと導いていきます。そして私は遠い目線で,来し方行く末を想います。

 

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 あの光のかなたに私の歩いた道はあるのでしょうか。私はどこまで行けるのでしょうか。

 

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 藪の中に白い花が浮かぶように咲いています。放射相称の純白の花。てっきり梅花かと思って手を伸ばしたら鋭い痛みが走りました。

 

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 花は自然界の鉄条網,モミジイチゴのものでした。甘い実に寄ってきた人を容赦なく傷つけ,身動きを封じる悪魔のトゲ草。でも今だけはまるでその心根を語るかのように,バラ科そのものの端正な姿を見せています。


 ここにモミジイチゴがあることを不覚にも知りませんでした。近年草刈りがなされ陽射しができたのちに生えたものでしょう。初夏の実りが楽しみです。

 

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 ごろんと壊れかけたベンチに横たわります。月齢五の細い月が私を見下ろします。別に励ましてくれるでなし,助言をくれるでなし。ただ見守るだけ。人には時にそういう存在が必要です。

 

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 ふと,このままここで一夜を明かしたい誘惑に駆られます。いけない。それをすればもう人界に戻れなくなる気がします。私にはまだやることがある。

 

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 近くの街に灯が点り始めました。天地の気を取り込んで,少しだけ元気が出ました。家に帰って明日に備えようと思います。


 三月。年度末のあれこれで落ち着かず,あまり記事の更新ができないでいます。読者の皆さまもご同様なのでしょうか,今週はアクセス数が伸びません。お忙しいんですね。お互いにこの物憂い季節を乗り越えて,山野に野の花が満ちる日々を待ちましょう。あと少しの辛抱です。

 

 

 

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