【 薹が立つ 】 とうがたつ
・ フキノトウなどで,花茎が育って硬くなり食用に適さなくなること
庭のハクサイが花を付けました。いわゆる「薹が立った」という状態です。
アブラナ科独特の十字花で,というかアブラナそっくりで,切り花にして玄関に活けてあるのですがまず菜の花にしか見えません。庭では気づきませんでしたがほんのりとした香り。アブラナとはまた違う香りはそれなりに心良いものです。
放置されてたのは種を採るつもりかと思いましたが,どうやら結球が悪くて収穫されなかっただけのようです。ちなみにハクサイは「自家不稔性」と言って自分の花粉では受精しません。より良い子を残そうとする優れた性質です。ただ,遺伝子の多様性を願うあまり他のアブラナ科植物とすぐ交雑してしまうため品種の維持が難しいのだとか。売られているハクサイの種子はヒトの手で調整された「F1雑種」で,もし種子ができたとしても同じ形質のハクサイにはなりません。
食用でなくても「薹が立った」というのでしょうか,ハボタン。
植物種としてはキャベツと同じものです。江戸時代の日本で,外国から入った原種に近いものから作出されました。今は世界中で栽培されてます。
私の育った関東では冬の花壇の定番です。寒すぎる土地では越冬できず,暖かい土地では赤く色づかないとか。皆さんのご在所には植えられてますか。あ,これはむかし資料用に撮った赤外線写真ね。
昔は春になると花壇には本物の花々が移植され,ハボタンは花茎を伸ばす前に打ち捨てられていたものです。ところが最近の流行りなのか,開花まで据え置かれることが多くなりました。良い傾向です。
これも立派なアブラナ科です。残念ながら香りはないようですけど。
こいつらは花を咲かせ種子をつくろう,有性生殖しようという気概があるだけ立派です。ジャガイモは形だけ花を付けますがめったに実を結びません。サツマイモに至っては花そのものを付けない。いずれも人間がイモで増やしてくれるので,種子を作る労力を惜しむというかサボることを覚えてしまったからです。
これは痩せた砂礫地に放置されたサツマイモ。市街地の税金対策に農地と登記してある放棄地です。人間に見捨てられたと気付いたサツマイモが慌てて花を付けてます。葉の形まで変えてます。極限状態に追い込まれないと頑張らないというのもなんと人間的な。
薹が立つ,とはあまり良い意味では使われないようです。でも植物にしてみればこれが本来の姿。誇らしく花を開き,生物の大切な営み,繁殖行動をなしているのです。ハクサイもハボタンも,文句を付けられる筋合いはないと言うのでしょうね。