毎度おなじみ私のフィールドが点在する常陸大宮市。一度行かなくちゃと思っていたのが陰陽山森林公園という場所です。
山下の駐車場。山上にもありますから楽したい人はそちらへ。
ウリカエデ。
ミズキ。駐車場のまわりはいい感じです。
なぜこの場所かというと,以前ここで自然観察会があって参加したかったのですが所用で果たせず,どんな場所か気になっていたのです。さあ登るぞ。
なるほど。
地図ではここは池のはず。おーい埋まってるよ。遷移が進んで湿地になり果てているよ。
いろいろとオチが読めてます。とりあえず地図の左下の展望台とやらを目指します。
ぐずぐずの道。百円掛けてもいい,展望台は植物に埋もれてるはず。
ほらね。
ウコギの花が咲いてました。本当に森に埋もれてます。整備する予算がないんでしょう。以前同じ常陸大宮の百観音というところでも同じ経験をしました。水戸の森林公園だって草原と地図に描いてある場所に行ってみると低木林だったりします。日本の国は森の国。整備しなければすべて森に埋もれていくんです。ジノさんイチ押し Dr.STONE という漫画でも,三千年後の森に埋もれた日本が舞台でした。
途中にこんなものもありました。あずまやの跡かひょっとしたらこれが展望台だったのか。…… 廃墟とか,人間の営為が自然に埋もれていく様は個人的には好きです。アンコールワット,マヤ,アステカなどなど。
キンポウゲにキリギリス類の幼虫。自然の手に戻されつつある公園で,生を謳歌しています。
山上の駐車場にまた案内地図が。さきほどの地図もそうだったのですが,まったくアテにならないことがのちほど判明します。しかし何より
この絵。
これ。
ぐああボクの心のミューズが悲鳴をあげる。名は忘れましたが洋画家でこんな人物を描く人がいましたが,それより天才すじの絵柄です。夢に出そう。
なんて感じで,ここが陰陽神社の参道になります。
予想外,超・石段が出た。… 今回,まったく予備知識なしに来ています。陰陽という名だけでなんとなくわかったつもりで。そう,アレですよね。そういう形の石か木彫りかがあって,スケベなオヤジが女の人に見せて喜んでいるような。そんな猥雑な先入観があって,少し軽蔑というかナメてかかっているんです,最初から。
石段を登りきると拝殿が。
でもさらに参道が続きます。ここは前宮らしい。
イイ感じの道が続き
本殿に到着。さて陰陽とやらは。
社の裏に大岩があります。そうかここは岩蔵が陰陽か。何やら縁起が書かれています。
ふむふむ光圀公が。大体このあたりの名勝というと義公(光圀)か烈公(斉昭)の名が出るよな…… って,え?
えええええっ
く,崩れた。ご神体が。大震災で。
陰陽どころの騒ぎじゃありません。ご神体が地震で無くなってしまったんです。
倒れた大岩,しめ縄も生々しく。これは「陽」のほうでしょうか。なんと痛々しい。
「陰」のほうはとりあえず存続しているようですが,もうどれがどれだか。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。猥雑とか言ってごめんなさい。こんなひどいことになっていたなんて。
三百年以上も崇敬されてきた神さまの,そのご神体が崩壊してしまったんです。氏子の皆さんの落胆はいかばかりか。百トンクラスの大岩,こんな山上でどうすることもできません。互いに何と励まし合ったか,それを思うと胸が痛みます。
お社はこんな凝った作りです。本当に由緒ある神さまなんですね。サイフの小銭ぜんぶ賽銭箱にぶちまけてきました。
本殿裏の展望台はちゃんと展望台でした。
南方向が遮るもののない絶景でした。冬に来たら素晴らしいでしょう。
ここまで来て何ですが,あの2枚の看板地図,絵は天才過ぎるし道はデタラメだし位置関係はめちゃくちゃだし描くべき対象が足りてないし,およそ役に立ちませんでした。
周囲は主にカシ類の森。水戸近辺では珍しいアラカシがあります。その樫の木が茂る中を下山したのですが
どこだここは。
これはひょっとして,裏側にあったゴルフ場ではないか。
来た道を辿ったつもりが,裏道を下ってしまったようです。どこで間違えたか,全く憶えがありません。というかこんな見事に道を誤ったのは久しぶりです。タヌキに化かされたような…… いいえ,神さまでしょう。こちらの心根がしっかりバレている。形ある依り代はなくなっても,神さまはご健在のようです。
さあそこからが大冒険。また長い石段を上がるのも嫌だなあ,と見ると傍らに藪に消える道が。どうやら山をぐるりと巻いて反対側に抜ける道,と判断しました。ダメだったら戻ればいいや。
ああ,百観音でもこんな冒険したよなあ。
廃道寸前の荒れた巻き道でしたが,生き残った看板があったりして
なんとか元の場所に帰れました。
ご神体の崩落なんてひどい目に遭った神さまに,失礼な物言いをしてしまいました。次はもっと敬虔な気持ちで参ります。
いろいろと反省の多い山歩きでした。
↓ 常陸大宮侮りがたし。
↓ どうか。