本当は県立図書館で半日を過ごすつもりでしたが休館では仕方ない。きびすを返したその眼前に絵画展の看板がありました。
常陽藝文センターという立派な建物が図書館の隣の警察署の隣にあります。地元の大きな地方銀行が芸術活動の後援のために運営しています。そこの看板でした。
その日本画展はあまり私の興味を引きませんでしたが,張られていたポスターに気になるものが。
正野豪勇展「立体造形」。同じ水戸市街にある「常陽史料館」で開催中とのこと。なんとなく見たことのある作風。鉄の造形をするひとだと。これは見たい。
予定が狂ったのも好都合。二本の足は自由自在。江戸時代の人になった気分です。どこに行くにもてくてくてく。なんとも気楽で楽しい。1キロくらいどうと言うことはありません。
常陽史料館のあるのは備前町,水戸の人には京成百貨店のずっと裏,千波湖を望むあたりと言えばいいでしょうか。その昔は武家屋敷のあった,今でも閑静な水戸の一等地。立派なお屋敷や高級マンションが並ぶ,同じ水戸でも場末の生まれの私には縁遠い,なんというか匂いの違う場所です。
アオスジアゲハが生垣のクスに産卵に来てました。樹木の多いこのあたりは市街地にも関わらず昆虫相が豊かです。かつてサムライアリの奴隷狩りに出くわしたこともありました。
高級住宅街の犬は何か違う。というかヒマなのか犬よ。頼む高級っぽくしてくれ。
これが常陽史料館。同じ銀行系列の博物館・美術館です。茨城関連の作家の展覧会に熱心です。嬉しいことに撮影自由。
で,いきなりこの光景。うわあ。
正野さんの経歴。元装蹄師。馬の蹄鉄を扱うお仕事から絵に目覚め,やがて得意の鉄を使った造形で名を成しました。稲敷市在住というのは,近くの日本中央競馬会美浦トレーニングセンターにお勤めだったということでしょうか。
こんな廃材,鉄の部品からモノを作り上げます。
たぶん今でも馬はお好きなんでしょう。モチーフに多い。
以下,写真をご覧ください。どう思うかはあなた次第。
鉄のハートを持つ巨人。
もちろん生物ネタは私の好むところです。
カエルの楽隊,というのはよく見るモチーフですがそれが鋼鉄で出来ているとなると。
一番気に入ったのはこれ。昆虫をよく観察しなければこんなものは作れない。芸術家の眼を介して再現された昆虫は,リアルじゃないのに超リアル,これぞ芸術。
鋼鉄の体を持つ柔らかな生命たち。久しぶりに見た現代美術でありました。久しぶりに芸術で驚くという体験もできました。足で歩いて,足で見つけた面白いもの。まだまだ水戸の街は侮れない。
そしてこの正野さんの作品を見て思います。本当の芸術家になるのに美大を出る必要はない。感性を磨くにはむしろそれは有害な気がします。
コレを思い出しました。
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