よう,と声を掛けられました。チンピラが目を付けたカモに近づくときのような,不愉快になれなれしい口調で。
こんなやつ。
うわあ。誰がどう優しく見ても毒キノコ。下卑た顔つきの奴がニタニタ笑いながらこちらを見ているようでぞっとします。
裏筑波の森の中での話です。本当に声が聞こえたような気がしてそちらを見たら,このキノコが立っていたんです。
たぶんテングタケ科。テングタケ科の白いやつとなると,猛毒の種しか思いつきません。傘のふちの形状がネックになって種名が特定できない,でも食べてはいけない。これほど毒持ちなのがわかりやすい奴も珍しい。おい君,その容姿を何とかしなきゃカモには逃げられるばかりだぞ。
そんなわけで筑波山の北側に来ています。中腹のかつてユースホステルがあったあたりで,車道がかなり上まで通じていて最近は中高年の方々のお手軽登山の基地になっています。みなさん平気で路上駐車するのでもう大変。私は登山目的ではないので,下の方のちゃんとした駐車スペースに停めます。
この森は馴染みの場所です。もう20年も前に冬虫夏草探しに歩き回りました。あまり戦果はなかったけど,とても肌に馴染む雰囲気がありました。今回は,夏の森の残滓を探しての訪問です。
ツクバネソウが実も落として所在無げに立ってます。もうすることがないと。
果実を落とした後の,これは果托とでもいうのでしょうか。ここに黒く熟した果実が乗っていたはずです。造形が面白いので接写しました。何か物言いたげに見えます。
はいこの風景にクモが一匹います。どこでしょう。
あはは,ピントはここ。松葉に擬態したクモ,オナガグモでした。
獲物を待っていたのを邪魔してやったぜ。ゴメンね。
白いキノコ,ツチカブリ。同じ白でもさっきのやつみたいな毒毒しさはありません。
でもナメクジになめなめされてます。ヤだろうなあ。
これは毒,クサウラベニタケ。茨城県で人気のウラベニホテイシメジのそっくりさんで中毒例が多い。と言ってもハライタ程度ですけど。
その毒も昆虫には関係ない。ヒシバッタが憩いのひと時を。
「夏の森」を懐かしんで筑波まで来てみましたが,ここも秋気漂う快適な森になってました。草間に伏し隠れる者もあれば空を飛び襲い来る者も,そんな多種多様の昆虫たち。蜘蛛も多足類も空に地にうごめき,ヘビやトカゲが落葉の間から窺い,何より細胞構造からして私と異なる植物という者どもが繁茂する。そんな異形の者たちが高温多湿の環境で生を謳歌する夏の森は,私には異世界のダンジョンに思えます。むせかえるような生命の気と,装備や気配りに手を抜けばケガや痛い目かゆい目に遭うそれなりの危険。ぞくぞくするような異世界探検を今年は雨の中でたっぷり楽しみました。また来年。
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