ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

たそがれに還る

 

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 メノウ関連のワードで検索したら「メノウ拾い」の YouTube 動画がいくつも表示されました。びっくり,これはこれで一つのジャンルになっていたんですね。石好き,石拾い好きの人がいっぱいいて嬉しいな。特に首都圏に近い産地ということで久慈川・玉川で拾ったという動画が多くて,背後に映った風景であ,これはあそこだと見当がついたり。本当にいいものをゲットする方があれば,集めたメノウを自分で河原に置いて大漁を演出する方もいたりしてそれぞれです。おなじみ富岡橋でメノウを探す動画もあって,思わず頑張れ!と声援を送ったり。私が置いたのとは違うものを自力でゲットなさいました。微笑ましいのは遠路仲良くおいでになったご夫婦がやった!見つけたあ!なんて喜ぶお姿でしょうか。多くの方々が自分なりにメノウ拾いを楽しんでいて何よりです。それもこれも全部ひっくるめて,みんな石好き,石拾い好きのお仲間だと思ってます。


 さてそんなユーチューバーの中で,良い目と運をお持ちで,初めてという久慈川本流の河原で赤いメノウを次々と拾い上げる動画をアップしている方がいます。これは演出ではありません。おおすごいと感嘆しつつ,そういえば自分の最近の石拾いは既知の場所ばかり,安全策というか冒険心や探求心を失っているのではと思い至りました。いかんこのままでは滅びの道を転がるだけだ。まだ歩いたことのない河原がある。すでに他の人が入った後でしょうけど,自分で歩かねば気が済みません。ああもう行かねば!ねば! …… 結局他にやることもあるというのに,休日の午後を潰すことになりました。

 

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 ここは栄橋上流の広河原。

 

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 河原への降り口まで出来ていて,どう見てもメノウ拾いの定番地のようです。まあこれくらい広ければ,そこはヒトのやることです,必ず目こぼしがある。

 

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 こんなものかな。そのまま置いてきました。拾える場所だと確認できただけで十分,今日は河原の状態確認ができればオッケー。真っ赤なメノウがあれば最高です。できるだけ多くの河原へ,どんどん車で移動して,車を置いたらひたすら歩いて。

 

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 うわあ,えらいとこに出た。何があった。…… 地図で調べたら対岸はあの!恐怖の!ふざけた民家カフェのある集落じゃないか。くわばらくわばら。

 

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 あちこち歩いて,でも動画のような真っ赤なメノウはもちろんありません。

 

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 最後に,ある橋の周囲を調べて終わろうと考えましたが,堤防工事で立ち入れなくて車の停め場所がありません。少し離れた,安全で迷惑にならない場所を見つけて,そこから何か所か,河原への降り口を探しながら数キロを歩き回ることになりました。冬至はとっくに過ぎてますが冬の日は足が速い。もはや夕刻,阿武隈高地が紫に染まります。雪のない茨城の冬景色。

 

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 堤防工事のすき間を縫って河原へ。

 

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 いい感じの石が並びますが,ここもボウズで終わるのかなあ。採れた話ばかり記事にしていますが,実は新しい場所では空振りも多いんです。でもそれが楽しい。一人であれやこれや考えながら歩くのが楽しい。たぶん中学生くらいの時分には,こんな風に一人で街を,フィールドを歩き回っていました。友達とか仲間とか,別に欲しいとは思わなかった。いえ,コミュ力はあると自分では思っていますし,仕事での人間関係もそれなりに器用にこなしています。ただ一人が好きなんです,負け惜しみでなく。

 

    一人は賑やか            茨木のり子

 

  ひとりでいるのは 賑やかだ
  賑やかな賑やかな森だよ
  夢がぱちぱち はぜてくる
  よからぬ思いも 湧いてくる
  エーデルワイスも 毒の茸も

    (中略)

  ひとりでいるのは賑やかだ
  誓って負け惜しみなんかじゃない
  ひとりでいるとき 淋しいやつが
  ふたり寄ったら なお淋しい

  おおぜい寄ったなら
  だ だ だ だ だっと 堕落だな

  恋人よ
  まだどこにいるのかもわからない 君
  ひとりでいるとき 一番賑やかなヤツで
  あってくれ

 

 新聞でこの詩が紹介されて,ああこれだと思いました。私の記事で折々に出てくる群れたがる人への侮蔑の気持ちもまさにこれ。孤独は楽しい。社会人としてきちんと人付き合いしてまともに生きていても,本当はそう思っている人がいるのだと信じたい。私以外にも。

 

 

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               あ。

 

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 とうとう見つけました。動画にあったような真っ赤なメノウ。

 

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 まず玉川由来で間違いないのだけど,不思議なことに玉川ではここまで赤いのはほとんど見かけません。玉川から流れ来るのに久慈川にしかない。そのあたりも探求したいところです。

 

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 ともあれ今日は日没コールド。忠犬のように私をじっと待つ車まで数キロを歩かねばなりません。

 

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 北風の吹き付ける灯点し頃の野を歩く。苦行のようですがじつは楽しい。心が軽くなり驚くほど饒舌になるこの感覚,お伝えするのが難しい。思えば二十代くらいまではふつうにこういう風景の中に身がありました。思い出すのは常に秋から冬の夕暮れの,一般には寂しいと言われるたそがれの空の下を歩いていたこと。何より心が自由でした。就職して世に,仕事に,社会生活に自分を適応させるうちにいつしか忘れていました。いま,定年を間近にして仕事にも生活にも余裕が生まれ,あの感覚を思い出しつつあります。一人たそがれを行く。たそがれに還る。

 

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 西空にすみれ色のとばりが降りていきます。漆黒の闇があろうとも,極寒の朝が来ようとも,私には自由の天地です。

 

 

 

 

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