ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

昭和の残影とヒカレイノチ

 

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 先週は、花束を2つももらうイベントがありました。有難いことです。退職するのはまだ1ヶ月以上先ですが、こうして一歩ずつ人前から下がって行くのは静かに去りゆく感じで大変よろしい。私が去れば若い人がそこを埋める。そうして組織の世代交代が進みます。余計なものは残しません。老兵は死なず、ただ消え去るのみ。

 

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 また年寄りが暴力を行使する事件がありました。世話になったはずの医師を猟銃で撃ったと。その前には50代の男が医院に放火するというのがありました。共通するのは、身勝手な思い込みや逆恨みで、周到な準備をし、人の命を簡単に奪い去ったということ。問題解決の手段として、迷わず暴力を選んだということ。

 

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 これほど大ごとでなくても、新聞の社会欄を見ていると、いい年配の男が引き起こす暴力事件が多いことに気づきます。若い人にありがちな、その場の激情に駆られてというのではなく、年齢的にはもっと落ち着いているべき年代の者が、暴力を第一の正当な行動だと考え、それを準備し、実行しているのです。みな、私同様「昭和」の人間です。…… 仕方ないんです。彼らはそれしか知らないのだから。

 

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 昭和という時代は、鉄拳から言葉まで、近所のいさかいから民衆に対する国家権力の行使まで、ありとあらゆる暴力に満ち満ちていました。その昭和を生き抜いた特に50歳あたりから上の男には、暴力を安易に容認する傾向があると、私は考えます。

 

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 もちろん実行してしまうのはごく限られた、褒められない人生を送って来た者だけです。怠惰、傲慢、無計画の累積が限界に達し、進退窮まって凶行を計画するのでしょう。同情には値しません。少なくとも私は、そんな「大人」にはなりたくなかった。でも彼らと同じ因子を内包していることを否定しきれません。私だって昭和を生き抜いた人間なのですから。


 これを読む昭和の方々にお尋ねします。皆さんのまわりに若い人はおられますか。その人たちと自分たちの間に、何か違いを感じませんか。ジェネレーションギャップ以前の部分で。というのも、私の周囲の十代から30歳くらいまでの人は、明らかにそれ以上の年代と比べて他人に優しいと私は感じるのです。もちろん中には暴力を行使する者もおりますがそれは例外物件。多くは温厚で真面目で、特に自分の身近な人間には優しく接する、そんな人が多いような気がしています。

 


 ひとつ、曲をご紹介します。いわゆる今どきの音楽です。ドラマ仕立てのミュージックビデオもあるのですが、歌詞を読み取ってほしいのでアニメの静止画面のもので。

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 このヒカレイノチという曲、私は深夜アニメのエンディング曲として知っていました。曲として売れているのか知りませんが、どこかの店で流れているのを聞きました。感じていただきたいのはこの歌詞に託された優しさ。辛いこと、悲しいことがあるけれど、自分を大切にして生きていこう。明るい未来を期待できないけれど、精いっぱい生きていこう。聞いていて、ああこれは今の若い人の優しさだと思いました。この世の不条理、思い通りにならない人生、暗い予想ばかりが語られる未来。今の若い人たちはすべてを受け入れ、理解し、その上で自分にできることをして一生懸命に進もうとしています。昭和の、幼稚な不満を社会に転嫁して暴力に及んだ団塊の世代とか、学校への不満を暴力で発散したそのジュニア世代。そんな愚かしい昭和の人間には今の若い人たちがどう映っているのでしょう。

 

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 私が言う「若い人」、ここでは平成生まれのおおむね30歳以下の皆さんを指します。バブルの狂奔を知らず、私たちから見たら元気のない日本、でもそれゆえに落ち着いたこの社会を見て育った人たち。景気が悪い悪いと大人たちが呟き、でもその大人たちは身勝手でだらしなく、楽な仕事というものが存在せず、未来に希望を見出せず、学校以外で同年代と出会うことが少ない。そんな中で成長した彼らは、情報機器を駆使し、仲間との繋がりを大切にし、他人に気を配り、就活に苦労し、何より人に優しい。おそらく史上もっとも穏やかで真面目な日本人の集団だと思います。

 

 

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 団塊の世代がようやく後期高齢者に差し掛かり、そのジュニア世代も事件を起こしつつ50代。昭和世代が表舞台から消えていきます。じきに日本社会の中心は平成の人たちになります。GDPは下がっても、きっと真面目で穏やかな、ある意味成熟したいい社会になるでしょう。浪費を慎み、他者を尊重し、利他をためらわず。人の幸せを喜び、他愛ないフレーズに感動できる人たち。…… ふと思います。老いた私たちは彼らにどう受け入れられるのでしょうか。その優しい社会に、私たち昭和世代の居場所はあるのでしょうか。

 

 

 

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