水の流れ気の巡りとは、私のよく使うフレーズです。気脈/命脈と言ってもいい。長年この国の山河を歩き続けて、自然の中にそんなものが確かにあると思えるのです。それはその土地で花を咲かせ、雨を呼び、時に人を惑わせる。昔の人はそれを神と呼びました。アニミズムとか多神教とか、全知全能の唯一神を信じる人たちからは揶揄されますが、私にはこの天地にあまねくおわす神々という概念の方がしっくりきます。
何の話かって? 旅に出るって話なんです。
私の仕事は4月が超繁忙期でした。新年度とともに回り始める雑務と本業。土日にも安息はなく、息もつけずにGWまで駆け抜ける。近年はそのGWさえ仕事でした。4月に遠出なんて夢のまた夢。ところがこの国の山河は春の目覚めの真っ最中です。日をずらしながら次々と開く新芽そして花、冬を耐え抜いて飛び出す昆虫。春の数週間しか見ることのかなわぬ生物に満たされます。ああ何度、仕事をほっぽり出そうと思ったことか。
春にしか現れぬ生命、それが地元で見られるものならまだ良いのです。ところがこの国はご存じのように南北に細長く、気候も様々です。冒頭に書いたようにそれぞれの土地に異なる気脈が流れ、現れる生物も土地ごとです。他所に行かなければ見られないものだらけ。このブログがそうであるように、地元にこだわり続けては毎回同じものばかりご紹介することになります。いえブログの問題ではない、私自身の問題です。見ぬうちは死ねぬ、そんなものだらけ。中でも私の長年の憧れだったのが
なにそれ、と思われる方が大半でしょうか。きわめて原始的なアゲハチョウの仲間で、黄色と黒のだんだら模様をもつ中型のチョウです。のちに大昆虫学者となる名和靖によって明治16年に発見されました。発見地からこの名が付けられましたが、秋田県から山口県のどちらかというと日本海側の多雪地帯に分布します。太平洋側にも産地はあるのですが減少が著しく、東京都では絶滅しています。これがだいたい、その土地の桜の季節にだけ現れます。茨城にはいません。調べると、全国で絶滅危惧種に指定されているようですが新潟県にはまだ産地が多いらしい。
よろしい、ならば新潟だ。
4月に旅に出る。これがしたくて仕事を辞めたと言っても過言ではない。世の中の働く男たちよ許せ。私はこのために命削って頑張ってきたのだ。
はいいきなりですがここは関越自動車道駒寄パーキングエリア。水戸を出て2時間経っての休憩です。良く晴れてむしろ暑いくらいです。
これ榛名山でいいですか?
とにかく周囲は有名無名の立派な山だらけです。北上するにつれ、惚れ惚れするような山姿が次々と現れます。例の魅力度ランキングで下の方を争う、でも県民所得は上の方を競う。いろいろと似ている茨城と群馬ですが、こと山に関しては勝負にならない。群馬県スゲー。
車中より。赤城山は霞の中。
やがて前方に雪を被った、これぞ日本の山としか言いようのないモノが現れます。ああもうたまらん、鑑賞せねば。いまPAに止まったばかりでしたが、すぐ次の赤城高原PAに滑り込みました。
右前方、遠く武尊山。
標高2144メートル。
左前方、谷川連峰。
ここを越えて行きます。この脊梁山脈を越えた先には違う気脈がつかさどる世界、私にとっての異世界があるはずです。
ちなみに正面にポコポコと見える二つの山は手前から戸神山、高王山といって我が筑波山とほぼ同標高の山。筑波山もここに持ってくるとこんな感じなんだなあ。
台形の山、三峰山。歩いてみたい、あの上を。
山の名を調べきりません。山だけ見てると本気で群馬に住みたくなる。
さらに北上して
谷川岳が目前に。いよいよです。
全長11キロ。よく掘ったなあ。そしてトンネルを抜けると
雪国だった。これはたまげた。いくらスキーのメッカとはいえ、水戸では桜がとっくに散っているこの時期に。
塩沢石内SA。バブルの頃によく聞いた地名。
ここで買った弁当を広げて昼食。男の一人旅は気楽なものです。雪の中だけど陽射しが暑い。ボクはごきげん。
周囲は雪山。
とうとう出ました、越後三山。右から八海山、中岳、駒ヶ岳。今日から三日間見守っていただきます、よろしくお願いします。
で、越後入りした私ですが、いつも通りつまずきまくりコケまくりの三日間になります。さあ異世界の花は咲いているのか。ギフチョウには出会えるのか。次回を請うご期待。
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