お花の回です。
国立科学博物館・筑波実験植物園。広大な敷地に膨大な植物が秩序正しく生態展示、というか生きる姿そのままに植栽され、巨大温室や研究棟・標本棟を備えた、私にとって日本最高の植物園です。入園料320円は元が取れてお釣りが来るぜ。
ここ数年の楽しみはクレマチス展。毎年4月下旬から6月上旬に開催されます。敷地の一部を「クレマチス園」として、原種の蒐集から園芸種の育成までたっぷりクレマチス。誰を連れて行っても喜んでもらえます。
朝一番に入場して、一直線にクレマチス園へ。
どっかん。
いい色ですねえ。
ここらでいつものうんちくを。
クレマチスというのは1つの植物を指す言葉ではありません。学術的にはキンポウゲ科センニンソウ属Clematis の植物全体のことで、北半球を中心に300種あります。園芸的には、その原種のうち数十種を親として交配し作り出された園芸品種のこと。特徴としてはつる植物であること(例外あり)、花びらはなく萼片がくへんがそのように見えること。我々がクレマチスと呼ぶのは上の写真のような大輪・平開・多萼片(6~8枚)・一季性のものですが、欧米では小輪で花期の続くものをフェンスに絡ませたりします。大雑把には、日本のカザグルマ(大輪・8枚)や中国のテッセン(中輪・6枚)を母種にした大輪系と、センニンソウのような小輪を多数つけるもの、下向きの釣鐘状の花を咲かせるハンショウヅルみたいなものに分けられますが、もう現在は親子関係が入り組んで何が何やら。
日本人が好むのは、花びら(萼片)が多くて大輪でそれが上向きに咲くもの。何のことはない、日本のカザグルマの血が濃いものです。カザグルマの学名からパテンス系と呼ばれます。
日本産の原種をご紹介しておきます。
カザグルマ、水戸産のものが植えられてました。とにかく大輪、大きいもので12センチにもなります。説明によると全国で30箇所くらいしか自生地がないんだって。私は水戸、東海村、大子の自生地を知っています。環境省による準絶滅危惧種です。
センニンソウ。花期は9月、これは茨城県北部で昨年撮った写真です。
会場にあったハンショウヅル。水戸でもちょうど同じころ咲いてます。
これは絶滅危惧種になっている白花のハンショウヅル。園芸目的で掘り盗られます。野生のクレマチス最大の敵は人間なんです。
さて園内には実に様々なクレマチスがこれでもかと。
6枚花はテッセン系、という単純なものでもないらしい。
ハンショウヅルみたいなの。
外国では人気で、多くの品種があります。
大陸の原種には萼片4枚のものが多いらしい。これはインテグフォリア系。
5弁。
「大河」という品種ですが、こんなのが人を食ってるB級SF映画があったような。
個人的に気に入ったのがこのビロードみたいなの。深いぞ。
開花して数日経ったものは花がぼろぼろになります。
犯人はこいつ、ハムシ。クレマチスには有毒種もあるというのにまあモノともせず。そういえば我が家のナデシコやらハマナスやらも花びらを食われてます。
これでもかとばかりにクレマチスづくし。解説板も行き届いて勉強になります。
今ごろ記事にして申し訳ありません。クレマチス展の会期は6月までありますが、今回の写真を撮った5月中旬が一番の見ごろかと。もちろん複数回来場というのが理想です。どうか来年以降のご参考に。遠方の方でも植物好きならぜひ一度。
クレマチス以外にも、来れば必ず見るものはありますからご心配なく。これは湿生植物の池にあったコウホネ。
高木のヤマグルマの花はふつうこの距離では見られない。
クモ恐怖症の人ごめんなさい。どこかの県では絶滅危惧種のコガネグモ。
シソ科のカイジンドウ。
駐車場のカルミアも見ごろでした。これ以外に温室の熱帯植物も見もので、私ひとりならカメラ担いで1日居ても退屈しません。
昼食は、歩いて行ける距離に西欧・ロシア料理の店をネットで見つけました。そういうブログじゃないので料理の写真は載せませんけど、美味しゅうございました。
でもミソはついた。せっかくつくばに来たからと、これも私の定番・産総研の地質標本館まで行ったらなんと休館。多いなあこのパターン。表には「5月10日は地質の日」なんて垂れ幕下げているくせに、閉館のお知らせは玄関前のこの表示だけでした。お役所仕事と言われますよ。
この日のお話はここまでですが、実はこの記事、月末に公開予定している記事のマクラになってます。その時にまた思い出して下さいませ。
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