ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

招霊の木 / いえオカルトではありません

 

       


 最近前置きやうんちくが長いです。年寄りですから仕方ない。ちゃーっと写真まで飛ばして構いませんので。

 


 メキシコの漁師、というお話をご存じでしょうか。


 アメリカ人のビジネスマンが、メキシコの漁村にやって来ます。そしてのんびり生きる地元の漁師に提案をします。漁業を企業化し、船を増やし人を雇いカネを儲けましょう。何十年かすればあなたは金持ちになり、リタイヤ後には時間をたっぷり使う優雅な生活ができますよ、と。 …… でもその優雅な生活とは、漁師の今の暮らしそのものなのでした。


 思いっきり縮めました。全編は「メキシコの漁師」で検索を。


 何が正しく何が幸せなのか私にはわかりません。このビジネスマンのようにやれ投資だ起業だと声高に騒ぐのは私の価値観の対極にあるものですが、否定はしません。私自身も結局は身を削って何十年も働いてしまった。そして今ようやくに「漁師の暮らし」を手に入れました。それはこの何十年かの結実であって、決して回り道だったとは思っておりません。


 何を言っているのかというと、ようやく手に入れた穏やかな日々に満足してますと、ただそれだけのことなんです。以前にご紹介した「ヘンリ・マイクロフトの私記」そのままの、散歩と読書に費やせる日々。茨木のり子の「一人は賑やか」もまた引用しましょうか。何の予定も入れず、やりたいことをする。隠居ジジイと呼んでくれ。一人ぼっちの暴走族を気取るのもまた楽し。へへーんだ。


 散歩にはかなりの時間を割いてます。街でも原野でも、私にとってそこはダンジョン。何が出るかわからないわくわく感がたまりません。

 


 雨の上がった朝、水戸駅まで4キロ歩いて南口のペデストリアンデッキ

 


 背の高いクスノキの若葉を間近に見る機会なんてこれまでなかった。

 


 クスノキの花ってこんな構造だったんだ。これも散歩の効用。

 

   
 クスノキといえばトトロの木。でも気温の低い水戸では巨木になることはないと思っていました。ところが弘道館公園で見つけてしまった。樹齢数百年の古木です。

 


 思わず手を合わせました。幕末の水戸藩のゴタゴタもすべて見ていたことでしょう。

 


 歩き続けて、珍しくもないベニカナメの葉。多忙な日々にはその赤の美しさを愛でることはありませんでした。

 


 生垣に生えたつる植物。なんだか毛むくじゃら。花が咲いたら名を調べてみよう。

 


 またクスノキの、これは切り株。本当に水戸にも大木があったんですねえ。むかし仕事で訪れた九州・宮崎市内に巨樹がぼんぼこあって驚かされたものですが。

 


 そこにキクラゲが生えてました。木材腐朽菌です。こうして巨木もまた分解され土に還るか。

 


 ビナンカズラ。市街地にもたくさんあった。ウチの庭にも芽生えました。

 


 コンフリー。流行りは遠い過去の薬用植物。たくましく生き残ってます。カメラを構えていたらクロマルハナバチが割りこんできました。

 


 ノイバラ。茨城の地名の元になった茨。もてはやされることもないまま、頬をほんのりピンクに染めてます。

 


 時計を気にしなくていいお散歩を楽しんでおりますと、鼻にぷんと強烈なバナナの香りが届きました。…… バナナ?

 


 おおこれは。

 


 カラタネオガタマ。西日本の暖地にオガタマノキ招霊の木という高木があって、よく神社に植えられます。いいですねえこのいわくありげな和名。ただ東の国には分布せず、高木では扱いに難儀することもあって、中国から近縁種が導入されました。それがこの唐種招霊カラタネオガタマオガタマノキにも芳香はあるのですが、カラタネのそれは強いバナナ臭。神社にバナナ臭。もっともこれも寒さには弱くて、茨城ではあまり見かけません。そういえば水戸市立植物園にはあったかな。

 


 最古の顕花植物であるモクレン科。このおしべめしべの構造が原始的なんだって。原始的だけど1億年も生き残った種族なので、私は敬意をもって接しています。

 


 これが植えられていたのはさるお宅の玄関前。敷地の傍らには石仏が祀ってあります。うむこの家こそ代々この地の祖霊を鎮める任を負った一族の末裔に違いない。


 …… なんて伝奇的な背景を期待したのですが、たまたま庭仕事に出ていたお家の方に尋ねたら、木の名こそご存じでしたが石仏とは関係なく、つまりはただの庭木でした。うーん残念。伝説の剣を手に入れ損なった気分です。

 


 こーんな感じでマイペースな日々を楽しんでいます。明日も今日と同じ日常を。現状維持のための努力を怠りなく、私のスローライフは続きます。

 

 

 

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