ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

ミヤマスカシユリいずこ

 

         


        ミヤマスカシユリの写真が欲しい。

 


 せっかく一番確実な産地に住んでいるというのに、持っている写真ときたら

 


 こんなのしかなかった。奥久慈男体山の崖から身を乗り出して1000ミリ相当のレンズで撮ったものです。そこまでしてこの程度。遠すぎる。垂直の崖にしか咲かないイカれた花なのです。


 男体山の健脚コース沿いにあるという話も聞きましたが、アレを登るには覚悟がいる。確実に楽して撮るのならあそこです。

 

  
 袋田の滝。写っている火山角礫岩の崖の上から下にまでぽつぽつと生育しています。

 


 こんなふうに。やっぱり遠い。もっと近くで見たければ、上の写真の左下の観瀑台で、滝に向かって右端まで行って後ろの崖を見てください。

 


 私の知る限りの最近距離に、何個体か垂れてます。さあ入場して見てやりましょう。

 


 風があああっ

 


 シャッター速度をいじって何とか写真になった。検索で出るミヤマスカシユリの写真はだいたいここにあるものです。

 


 原産地の埼玉県武甲山は山そのものが崩されてしまい、野生状態では絶滅です。岩手・宮城で見つかったものは元の報告があるのみで写真が一枚も出てこない。

 

 
 日本で一番写真に撮られているスカシユリです。


 目的は達した。思いっきりありきたりの写真だけど。せっかくだからエレベーターで上の観瀑台まで上がりましょう。

 

 



 うおおおショボい。ショボいぞ袋田の滝。こんな情けない姿は初めてだ。

 

 
 通常はこんな感じです。観客に容赦なく水しぶきが掛かるのがこの滝の真骨頂なのに。今年は特に雨が少なくてご覧の通り。もう一つ残念なのは、この滝に重なるように枝を広げるカエデの木があって、秋の紅葉時には滝とペアで一枚の絵になっていました。明治時代の画にも描かれています。それがとうとう枯れてしまいました。地元では跡継ぎになるカエデの苗木を植えましたがまだ50センチほど。絵になるのはいつの日か。

 


 代わりにというわけでもないでしょうけど、ネムノキの花。

 


 新たにヤマユリも、これは自然に芽生えたそうです。

 


 みんなが袋田の滝を盛り立てようとしているようで、心強い限りです。


 さてどうしよう。ミヤマスカシユリは撮れたし、これで帰宅してもいいはずです。しかし撮れたのが月並み写真なのがやっぱり気に入らない。ぶつぶつ言いながら吊り橋を渡ったら、目の前に現れやがったんです。そうあの

 


      ラッタルの野郎が。


 説明します。軍艦に備えられた鉄の急階段をラッタルと言います。ここ袋田の滝では滝と並行して急峻な断層崖を登る道が付けられていて、その鉄階段部分を私は勝手にラッタルと呼んでいます。その先の石段部分を含めて、もちろん超ハードな登りになります。全くそのつもりはありませんでした。でもそのラッタルがニヤニヤしながら囁くのです。崖を見ながら登る道だぜ。滝の上まで行けるぜ。滝の上に咲いているのは見たろ? それに登り切った稜線はずっと岩場だから、スカシユリがあるかもしれないぜ。

 


 周辺の岩に咲くマルバマンネングサが野次馬顔で見ています。よしわかった、行ったろうじゃん。

 

  
  ぜーはーぜーはーぜーはー い、いかん 足が 心臓が

 


 とっ時々はっ ぜーはー カラダをっ ぜーはーぜーはー フルに回しておかないとっ ぜーはー いけないんだよなっ ぜーはー


 …… 結論から申し上げます。見える範囲にスカシユリは1ッ本もありませんでしたっ

 


 高度差300メートルを稜線まで登り切り、月居山の山頂を越え、また降りるのがひと苦労。オオバジャノヒゲの写真を撮っただけ。…… 例えば流行のSDGs。あんなもんで地球環境が改善するわけないのはちょっと算数すればわかることで、きっと10年後にはあれは無駄ではなかったなんて無駄な総括がなされていることでしょう。私もこの山越えを、体力維持・足腰の鍛錬に役だったと考えることにします。ラッタルめ。

 


 結局、次点に考えていた場所で新たにミヤマスカシユリを見ることができました。全くアップダウンせずに行ける場所です。本当に何だったんだ。

 


 滝よりずっと近くで見ることができます。


 ミヤマスカシユリは海岸のスカシユリの変種です。ご参考に母種の方もご覧ください。

 


 砂浜で。平らな場所では茎が短く詰まり、広く分厚い葉が密に付きます。

 

 
 傾斜地では下垂してからぐいっと上を向いて花を付けます。これがミヤマでは、植木鉢で育てても垂れて曲がって上を向くそうです。母種と並べても成長が遅いとやら。いろいろと面倒くさい、気難しい奴です。だから絶滅危惧なのか。

 


 いえいえ、この種が危惧されるのは人間の欲望の対象だから。崖の斜面というとこのイワヒバや、それこそ貴重なウチョウランが生育します。そのテの人の目には宝の山でしょう。ただ袋田周辺は地形が急峻で人が近寄れない場所が多く、そこに根を張る限り絶滅はありません。この硬い火山角礫岩の山を崩そうとする人もいないだろうし。ちなみに原産地の武甲山石灰岩採取のために崩されてしまいました。いかに繁殖力があろうとも、環境が消失すれば生きるすべはないのです。

 


 オミナエシが咲いていました。旧暦ではまだ6月ですが、秋の七草が咲き始めています。次に晴れたらキキョウでも見に行こうかと思っています。

 

 

 

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