ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

ボクの欲しかった力はそれじゃないんだ / ソニー純正マクロレンズと小絞りボケ

 


 ※ カメラのレンズに関するマニアック記事です。よしなに。

 


 はっきり意識したのはこのヒナノヒガサのマクロ写真。

 


 どこにもピントが合っていないこと、おわかりいただけますか。


 使っているのはSONYの純正90ミリマクロレンズ。この2月に使い始めてから、マクロ撮影でおやと思うことがたびたびありました。小さきものを撮るときは、三脚を据えて、絞り優先モードにして、絞りを最小のF22にして遅延シャッターを5秒後にセットしてシャッターを押します。ブレはないはずです。でもピントが来ない、というかピントの芯がどこにもありません。

 


 私は接写が命。カメラ機材はひたすら接写=マクロ撮影のためにあります。その写真が何だかおかしい。どこにもピントがない写真なんて、私の存在意義に関わります。いや本気で。問題は「絞り」にあるようです。

 


 悪い癖だと思うのですが、写真の絞りに関して講釈してもよろしいでしょうか。え?釈迦に説法? そこんとこはお許しを。

 


 絞り、アイリスとも言いますが、光学装置に入射する光の量を調節するものです。我々の眼では「虹彩」がこれに当たります。光を遮るのが役割ですけど、これが写真ではさらに大きな意味を持ちます。作例で見た方が早いか。ちなみに絞りの数値が大きいほど実際の絞りは小さくなるとご理解ください。

絞りF2.8(絞り開放)


絞りF22(最小絞り)


 ね? 絞りの数値が大きい方が、ピントの合う範囲(被写界深度)が深くなるんです。そのぶん暗くなってシャッター速度が遅くなり、手ブレに気を付けねばなりませんが、私は生物の造形を立体的に写し込みたいので、絞りを絞ってピント幅を広くして撮影するのが基本でした。これまでは。

 


 大急ぎ、人間の眼をモデルに説明図を作ってみました。カメラの場合絞りはレンズの後方にありますが、基本原理は同じです。絞った時にピントの幅が広がって見えるのは一種の錯覚、絞っても絞らなくても本当のピントは一点です。でもこの効果は大きい。ちなみにモノを凝視するとき目を細めるのも、この絞り効果を利用しています。

 


 カメラレンズの絞り。たくさんの絞り羽根が中央のすき間を開閉します。


 マクロ撮影で絞りを絞る理由は以上です。レンズメーカー・タムロンの伝説の銘玉 90ミリマクロ(型番72B)を使っていたこの20年、何の問題もありませんでした。問題はこのソニー純正90ミリマクロにあるようです。久しぶりにタムロンを持ち出して、缶コーヒーの能書きの文字を同じ条件で撮影し、拡大してみました。


F2.8 どちらもシャープです。ピントは浅い。

 
      ソニー             タムロン


F22 ソニーの方が字が崩れます。

 
      ソニー            タムロン

 …… うわあ、こんなことだったんだ。もっと早く気づけば良かった。なんなんだこの現象は。


 微小な土壌動物の写真を撮っている方の本で初めて知りました。これは写真レンズ特有の現象「小絞りボケ」です。回折という物理現象が写真に現れるものです。その写真家の方は、高倍率撮影のさいは小絞りボケを嫌ってF5.6まで絞りを開けるそうですが、それではろくなピントにならないでしょう。写真は見事なものだったので、腕がモノを言うのでしょうけど私には無理、やっぱり絞りたい。その意味で、本当に申し訳ないことですが、ソニー純正レンズ、落第です。いかにAF性能が良かろうが、手ブレ補正内蔵だろうが、技術を注いでほしかったのはソコではなかった。ボクの欲しかった力はそれではなかったんです。


 念のため申し上げます。決して天下のSONYの技術力を揶揄しようというのではありません。円筒のボディ内にAF駆動装置から手ブレ補正機構まで詰め込んで…… まあ重く巨大になり定価は17万5百円になりましたけど、ポートレートレンズとしては無敵、身の回りの小物を軽く撮るのにも最適。手放す気はありません。査定は6万円にしかならなかったし…… 。まあ、高い授業料になったことは確かです。くくく。

 


 私が撮りたいのはこういう写真なんです。

 


 ソニー純正の最小絞りはF22、対するタムロンはF32。そこまで絞ってもこの画質。このタムロンの旧レンズの「伝説の銘玉」という二つ名はダテではなかったんですね。残念ながら現在のタムロンはこのレンズを作っていないし、同じ光学系を用いたとする最後のAFマクロレンズも描写性能は劣ります。伝説は伝説として霧の彼方に消えていくか。

 


 一度はお蔵入りさせたタムロンの90ミリ、大切に使っていこうと思います。なに、古いものを大切にするのは得意なんです。

 

 


 幾山河を君とともに。 これまでも、これからも。

 

 

 

 

 

↓ 買った時にはそれなりに盛り上がったんだけどなあ。


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