ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

飛べフランカー、彼らのために

 

 大寒波だそうですが暦の「大寒」なんだから驚くには値しない。民放ニュースは大はしゃぎに近い大騒ぎをしてますけど、この人らは何でもそうしますから。大寒大寒波なんて、私のブログじゃネタになりません。だいたい水戸の最気温-5℃だと言っても、最気温が-10℃の旭川の人に笑われるだけでしょう。


 それに…… 室内では、この冬は秘密兵器があるのです、うふふふふ。


 その名も「手足の出せる寝袋」。-1℃まで快適対応。

 

 

 

   
           誰、笑ったのは。


 これで北向き三畳の書斎にゲーミングチェアのオットマンまで出して寝そべってごらんなさいな。ブラインドを下ろせば昼夜の区別もなくなって、ここは永遠に春の続く異次元の楽天地。じっさい、この冬は暖房を使っておりません。

 

 


 ほらこんな。ぬくぬくぬく。ああ神さま、私はこれ以上何も望みません。どうかあと少しだけ、この幸せな時間をお与えくださいませ。

 


 なーんておふざけはここまでにします。わかっております。寒かろうが何だろうが人には仕事がある。私も永くお勤めを続けた身ですから、寒風酷暑に働く辛さをよく存じております。ただそれは、それでおカネもらってる、仕事なんだから当たり前の辛さです。

 


 だがしかし、この大寒波の中、利益も見返りも求めない、ただおのが信念に忠実であらんとする漢オトコたちがいるのです、百里基地のまわりには。

 


 1月26日、最低気温-5℃。快晴。再度百里基地に向かいます。

 


 茨城空港の見晴らし台。今日も人がいっぱい。駐車場は一昨日より混んでます。平日なんだけどなあ。まずはここからエプロンの様子を見て、今日の状況を考えます。

 


 一昨日は姿のなかったC-17輸送機。要員と資材運搬のため、フランカーと一緒にインドから来ました。これまたデカい。インドのものはみなデカい。


 風向きを考えると、今日の離陸方向は北から南へ。離陸する雄姿を撮るなら南側のポイントがいい。俗称「アラハン前」のポイントに行こうと思います。


 アラハンは「アラートハンガー」の略で、「緊急発進用格納庫」のこと。スクランブルが掛かった時に5分で離陸できるよう整備された戦闘機が待機していて、いつでも実弾装備のF-2がいます。これが滑走路の東南の端にあって、その向かい側が広い駐車場所のある撮影ポイント、「アラートハンガー前」です。

 


 そのアラートハンガー、いつもは扉が閉まっているのですが、一瞬だけ全開になって中のF-2が見えました。すぐに閉じられました。あとで気付きました。じつはこれ、向かい側で待つ私たちへのサービスだったんです。

 


 アラハン前の駐車スペース。道は未舗装で、ここへ来るまでに泥だらけ。百台には足りませんが、それでも数十台の車が整然と停まっています。整然なだけでなく、基地周辺のすべての撮影ポイントで言えることなのですが、ゴミがただの一つも落ちていません。飛行機写真を愛する男たちの人となりがよくわかります。


 男たちを乗せてきた車のナンバーをざっと見ます。もちろん県内が多くて、さらに春日部やら宇都宮やらの関東ナンバーもたくさんあります。しかし驚くべきは遠隔地のナンバー。岩泉、宮城、仙台、名古屋、大阪、和泉、福井……、東北から関西・北陸まで、いったい何時間かけて、何泊の予定でこんな所まで来てるんだ。


 皆さん車の中に待機しているんですが、飛行機が飛びそうだとなると一斉にバタン!バタン!と飛び出してきます。…… パチンコ屋の開店時間みたいだなあ。

 


 あっというまに臨戦態勢。わああ、これだけの人がいたんだ。全員男性です。このアラハン前まで来ようというのはやはり、少し頭のイッちゃった漢ばかりなのでありましょう。まあトイレが無いしね。

 


 飛ぶのはF-2ばかり。でも舌打ちしたり悪態ついたりする人はいません。たとえ見慣れたF-2であっても、男たちはその都度手持ちのレンズを向けて、流し撮りの要領で連続シャッターを切っていきます。みな知っているんです。さっきハンガーが開いたのと同様、この飛行がサービスであることを。

 


 基地の周囲にフランカーを待つたくさんのギャラリーがいることを、空自の人たちももちろん知ってます。でもフランカーは飛びません。そういう予定なのか、何かトラブルが発生したのかそれはわかりません。そこでせめてものサービスにとF-2を飛ばしてくれているんです。ああ涙が出そうだ。

 

  
 片時もポイントを離れない男たちに倣って、昼食は携帯口糧で。


 今日の風は南風です。冷たいは冷たいけど、昨日の強烈な北風、最高気温1℃だったよりは遥かにマシです。その風の中、カメラ諸氏はじっと耐えていたのでしょう。今日は飛ぶはずと。でも飛ばなかった。忍耐が報われる事なんて、現実にはそうはないのです。どんな気持ちできのう1日を終えたことでしょう。


 では今日は飛ぶのか。さっき見たC-17輸送機は後部ハッチを開けていました。実はこれ、明日の離日に備えて積み込みを行っていたんです。資材を積みこんでしまうからには、今日フランカーが訓練に飛び立つ可能性は低かった。私よりもカメラ諸氏のほうがよくわかっていたはずですが、それでも待つ。極寒の風が吹く中、ただじっと、わずかな可能性にも賭けてみる。本当に泣いちゃおうかな、わし。


 15時を回って、今日はフランカーが飛ばないことが確定しました。これから飛べば帰還は夜になって、いくら何でも不慣れな滑走路に夜間着陸はないでしょう。みなさんカメラも脚立も仕舞って…… でもそそくさと帰る様子はなく、仲間同士で談笑したりしてます。どうやら今日は帰宅しない人がおられるようです。一昨日も昨日も今日もフランカーは飛ばなかった。でも飛ぶところを撮りたい。そうです明日の朝、離日の瞬間なら確実に飛びます。もう最後のチャンス、逃すわけには行かない。フランカーが飛ぶのを日本で撮る、そんな機会はもう一生ないでしょう。極寒だろうが風呂なしだろうが食事はコンビニだろうが、その場にいないワケには行かないのです。誰のためでもなく、おカネになるわけでもなく、ただおのが信念に殉ずる覚悟です。

 


 私は帰路に就きます。茨城空港のゲート前に道の駅があって、私は防寒服や長靴を脱いで一服するのに寄らせていただきます。同様に周辺の撮影ポイント帰りの方々がいて、車が泥だらけなので一目でわかります。お疲れさまでした。


 翌27日、インド人たちは無事に帰って、カメラ諸氏はいい写真が撮れたことでしょう。そう思ってツイッターを見たら、…… 飛ばなかったって。


 機材か人員か、何かトラブルがあったのでしょう、離日せず、フランカーは格納庫に頭だけ入れて動かなかったそうです。ひえええ、ひたすらその瞬間を待って多くの男たちがカメラと脚立を構えていたというのに、この吹きっさらしの極寒の中、また1日待ちぼうけだったと。人生を、少なくとも老後のすべてを航空写真に捧げる男たちにまた試練です。もう諦めるかな。…… いいえ、きっと多くの方は明日も早朝からここに立つことでしょう。

 


 諦めなかったことで栄光を得た男の話は、歴史に枚挙のいとまもありません。皆さんどうか頑張ってください。ジノ。は心から応援しております。

 

 

 

 

      追記 この記事を上げた直後の28日朝、無事飛んだようです。よかった。

 

 

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