ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

ヒスイカズラの花色は

 

       夢に出てくる色、というものがあります。


 年よりじみた物言いで自分でも抵抗はあるのですが、遠い遠い昔に目に焼き付けた色です。若き日に訪れた海景、一面の青緑色。小笠原の海です。


 熱風渡る亜熱帯の華やぎに満ちた陸の上と対照的な、精神世界を垣間見るような深い色。異界を覗き込む感覚で、岬の上から眺めておりました。それは旅で見た一つの絶景というより、もっと心の深い部分に刻まれる記憶となりました。


 この旅と前後する時期だと思います。地元で、同じくらい印象深い同系の色に出会いました。当時できて間もない水戸植物公園の温室で見たヒスイカズラの、その花色でした。なんて心に沁み込む色なのかと思いました。


 残念ながら水戸のヒスイカズラは枯れてしまいました。他県の植物園にはあるようなのですが、この花の花期は3月。私の仕事が年度末進行の殺人的に多忙な時期で、のんびり花を愛でに行くなんてできません。ヒスイカズラの花色は、若い日の旅の思い出とリンクしたまま、心の奥に封印されました。少なくとも30年。


 ヒスイカズラ。フィリピン原産ですが、世界中の熱帯に植栽されています。横文字で JADE VINE、ヒスイのつる、すなわちヒスイカズラ。ほぼ直訳ですが納まりの良い日本語になってますね。美しい花色は万人に喜ばれるようで、日本国内でも各地の植物園の3月の人寄せになっています。何とそれが! 私が日本一の植物園と公言してはばからない 筑波実験植物園 にも咲いていると知りました。行かねばならぬ。仕事辞めて良かった。


 前にも申しましたが、大人320円の入園料は元が取れてお釣りが来るほどにリーズナブル。いつ来ても見るものがあります。今は野外展示で

 


 オオミスミソウいわゆる雪割草。

 


 ユキワリイチゲ

 


 温室内ならランやら何やら花盛りです。雑ですいません、もう今日はヒスイカズラ以外どうでもいいんです。

 


 どこだどこだと迷って、一番奥の熱帯温室。

 


 曇るメガネ!

 


 曇るレンズ!

 


 曇るモニター!

 

 ものすごい高温多湿で、熱帯温室なんだから当たり前と言われるでしょうけど、実は朝の水やりの直後でした。強い3月の日差しで蒸気が立ち上り、汗が噴き出しました。私もカメラも撮影どころじゃありません。先に曇りのとれたコンパクトカメラ「権三ゴンゾー」さんに状況を撮ってもらってから

 


 ここだ! 咲いてる!

 


 壁一面がヒスイカズラ。花は低いところばかりで観察も撮影もらくちんです。ああこんなに簡単に再会できるとは。

 


 レンズ曇ってるけど。

 


 まだ曇ってる。こういう局面でいつも慌てて失敗します。落ち着いて。


 では撮りまくったヒスイカズラを並べますけど、初めに申し上げます。精神に作用する色なので、見続けていると気持ち悪くなりますぜ

 


 ああこういう写真しか撮れない。

 


 こういう撮り方って、やっぱり変態の域なのでは。

 


 どアップ撮影は時に気持ち悪い花を造り上げます。美女の毛穴を写すようなものか。

 


 いかんいかん、ちゃんときれいに撮らねば。

 


 ずっと私の心に住み着いていた花、その色です。

 


 ちなみにまだつぼみの房もあります。花期はこれから。

 


 温室の一隅、そこは本当に熱帯雨林のプロムナードみたいでした。

 


 汗だくになって脱水症状起こしかけました。でも長年の憑き物が落ちました。来てよかった。

 

 


 配色カードで花色を再現してみました。ここらのグラディエーションかな。緑がかった青、意外にも古来日本人が親しんだインディゴ、藍から染めあげた色に近いと思います。藍色の薄い順の色名で甕覗かめのぞき、浅葱あさぎ、縹はなだ、紺こん

 


         心の深淵に問いかける色です。

 

 

 

 

 

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