ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

廃屋とフラサバソウ

 

 本当は「3月お散歩まとめ」にする予定でしたが、特にピックアップしてご紹介したいものができました。

 


 寒いころは「駅までさんぽ」、往復するので精いっぱい。それがこれこのように桜まで咲く陽気になって、あちこちわき道にそれる余裕が生まれました。余裕って大事よね。

 


 ちなみに図書館前の桜、サンシュユの花と競演です。通る皆さんがスマホを向けていました。サンシュユなんてマニアックな、と思っていたら結構皆さんその名をご存じなので感心しました。日本人ってすごいなあ。

 


 図書館寄ってスタバに寄って、てくてく歩きます。

 


 初めて通る道に、ああこういう物件に弱いワタシ。

 


 この住宅に幸せに暮らす家族がいました。しかしその一家はなぜかこの家を手放すことになって、家を手に入れた次の住人は多くの人を住まわせる必要があり、家は増築を重ね鉄パイプの階段まで作ることに。それなりに荒っぽいけど活気あるコミュニティの暮らしがあって、でもある日突然すべてが無に帰して、住人の消えた家は時の手に委ねられました。…… なんて、この家の歴史を想像するだけでストーリーがひとつできてしまった。あ、勝手な妄想ですから信じないように。

 


 東京に行っても、華やかな商業ビルに集う笑顔の人々よりも、うらぶれた通りの廃れようや人に見られることを想定していない角度からの視点に心が動きます。あの街は退廃風景の宝庫と言えますので、その意味で楽しい。こんな性癖は一般には廃墟マニアに分類されるのでしょうが、自分では文明崩壊愛好家を名乗ってます。我ながらおかしなこの視点の理由を解く言葉を、最近読んだ本で仕入れることができました。いわく「自然観察者の目で見る限り、都市は驚異であり奇怪だ」。そう、これです。自然の造形を見慣れている者には、都市の景観はあまりにも奇怪な異形の造形なんです。それだけでも新鮮なのに、それが崩壊し自然に戻ろうとする光景が楽しくないわけがありません。〇〇のランドマークなんて言われている建物が崩壊して緑に覆われている姿(そういう絵を専門に描いている絵師さんがいます)なんて心が震えます。…… すいません不謹慎でした。

 

 


 でも古いビルの古い階段とか

 


 繁華街のビルの裏側とか

 


 垣間見える想定外の姿とか

 


 白いドームにはかつて天体望遠鏡がありました。今は廃ビル。以前記事にしました。バブル時に隆盛を誇ったこの眼鏡屋さん、裏通りのビルの1室で今も営業していることをこの散歩で知ってしまいました。少し胸が痛む。

 

       


 この家も市街地の狭小な敷地を上手に利用して建てられた様子がよくわかります(もし住んでおられる人がいたらごめんなさい)。

 


 閉店した洋食屋の店先で今も客引きするコックさん。

 


 ああ、キリがない。

 


 そんな目線で旧市街地を彷徨しておりましたところ、もとは武家屋敷の間の坂道、今や荒れたやぶ、廃屋の間を縫って通る人もまばらな石段わきの斜面に、初めて見るものがありました。

 


 これ。

 


 花だけ見るとオオイヌノフグリに似てますが遥かに小さい。特徴的な葉の形で名が知れました。これフラサバソウと申します。何だフラサバって。

 


 ヨーロッパ原産の帰化植物です。この類は学名ではウェロニカ属Veronica と言って女性の聖人名、でも和名は「~フグリ」とか「~クワガタ」という微妙な名が一般的。しかし名付けに際して植物学者久内清孝が「フグリでは面白くない」と、明治日本に貢献した二人の仏人フランシェとサヴァティエから取って和名にしました。面白い植物学者もいたもんだ。


 目立つわけでなし繁殖力旺盛というわけでなし、外来種のくせに一時は絶滅を心配されたりした小さき者です。こんな市街地のど真ん中の空白地でささやかに土の露出した斜面。まさにお似合いの場所で細々と生きてます。いえ今まで意識しなかっただけで、意外とそこらへんにあるものかも知れません。今度注意して歩こう。

 


 人知れず朽ちていくいにしえの建物。人知れず生を紡ぐかそけき草花。4月から1年歩き続けましたが、発見は尽きません。

 

 

 

 

 

↓ 眼鏡屋さんの廃ビル、ちょっとだけ触れてます。

↓ お願いします。

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