ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

花埋み

       

     【アリ拡大注意】ですよー。え? もっと早く言えって?

 


 フサザクラの花を見ようと山道に来ましたがもう終わってました。今年は季節が早い。

 

            
 何かないかなーとそぞろ行く林道。すると傍らに黄色い花がひと群れ。タンポポでなしヤマブキでなし、もっと鮮やかな、太陽のかけらが発するような強い光がスギの木の下闇から目を射りました。なんだなんだ。

 


 これ。最近見かけるようになりました、ヒメリュウキンカです。

 


 ヨーロッパ原産、北米に帰化して大繁殖。日本にどうやって入り込んだか知りませんが、あちこちで版図を広げています。私の知る範囲では、在来の花がないような路傍で、その空いているニッチを埋めるように咲いています。

 


 誰が在来種の「リュウキンカ」を引き合いに出したか知りませんが、同じキンポウゲ科というだけで全然別属の植物です。

 


 キレイな花だなあ。花弁(花びら)が消失する傾向のキンポウゲ科にあって、これはちゃんと花びらなのだ。

 


 金色の光沢は、日なたでは本当に陽光を反射してまばゆく輝いて、これは在来のキンポウゲも同じ仕組みです。春の喜びを人にふりまき、花粉を運ぶ昆虫にはいいアピールとなるでしょう。花びらの根元が黒いのはこれも昆虫に対するサインで「蜜標」と言います。昆虫の眼には相対的により黒く見えているはずで、ほうらここに蜜があるぞ、と言ってます。

 


 日陰で撮ったとは思えないでしょ? このまま小さな花瓶に挿してもいい絵になるでしょう。人にも虫にも愛されるのは、花を発達させるという企業努力の成果です。どこにでも根付くという強靭さもしかり。人に守られて生きながらえる希少種、国に守られて努力を忘れたデフレ期の日本企業、いずれも見習ってほしいものです。

 


 なんて余計なことを考えながら写していたら、花の上を歩き回る者に気づきました。

 


 アリだ。私の大好きな小型種のアリだ。体長は3ミリに足りません。体の百倍もの高さまでよじ登って花蜜を集めています。ちょっと目が合ったので、これも縁でございます。撮らせてもらいましょう。

 


 これこれ逃げるな、って、そう言われてもアリだしなあ。

 

             
 出てきてくれました。期待通りのいい顔です。花粉まみれなのが働き者っぽくてなおよろしい。

 


 めしべの上に憩う姿。アリにお詳しい方、ケブカアメイロアリでよろしいでしょうか。

 


 トリミングして表情を見ます。全長2.5ミリ。ピグマリオンのように輝くなめらかな肌と、徹底的に合理化されたデザイン。精巧な、自然という造化の神が造り給うた芸術品です。驚くべきは、これが目的をもって自律行動をしていること。神経細胞の数はヒトの40万分の1ほど。なのに使命を自覚し、状況判断をし、危険を避け、目的を果たせば迷わず帰巣する。個々の能力は劣っても、全体のシステムがそれを補完する。信じられないことに働きアリごとの個性まで存在します。世界中の子供から大人まで、一般人から数多くの研究者までを魅了してやまない昆虫の、その魅力を写し取れたと自画自賛することをお許しください。こんな写真を撮りたくてカメラを持ち歩いているんです。

 


 オオヤマハコベ シワクシケアリ

 


 コニシキソウ アミメアリ

 


 タニタケブカアメイロアリ

 


 ツワブキ キイロシリアゲアリ

 


 花を接写していると、やたらフレームに入ってくる小型アリたち。花に埋もれてせっせとお仕事。ゴマ粒ほどの体にはちゃんと脳も心臓もあります。排出器官も消化器官も持ってます。それぞれに悩んだり戸惑ったりしながら、今日もお仕事に明け暮れます、家族のために。

 


 悩みすぎないで。生きて無事おうちに帰れれば、今日のところは勝ちですよ。

 

 

 

 

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