まず仮説。推論。そして実証。
いきなり何を、といぶかられるでしょうが、最近玉川で面白いものが拾えないこともあって、少し方向性を変えようと思ったのです。玉川メノウについて、それがどこから来るのか。
玉川メノウは、多くは現地性のものではありません。少し離れた場所でかつて火山活動があって、熱水の脈が周囲の地層に貫入して玉髄カルセドニー(白いメノウ)になりました。そしてその場所が川に浸食され、カケラとなった玉髄が下流に流されて礫れきとして堆積します。やがてその礫層を玉川が浸食し、再び流下し堆積した光る石片を私たちが河原で拾うことになるのです。そのどこか、地層中あるいは水中にあるうちに酸化鉄などによって赤く染色されて赤玉髄カーネリアンや縞瑪瑙アゲートになります。以上、私論です。
最初に玉髄が生成された火山活動の場所は無理でも、今の玉川メノウのふるさとである礫層を見てみたいなあ。いえ、ごく小さなかけらの含まれる層なら何度も見ています。でも、ご存じのように私は大きいものや変わり種の珍しいものをずいぶん拾っていて、そういうものが含まれる地層、本当の意味での玉川メノウのふるさとを見ていません。時間はいっぱいある。探してみようじゃないか。
そこで冒頭の、科学探求三題話になるわけです。地形図、地質図、これまでの経験を総動員して、候補地の一つを絞り込みました。
ここでーす。
ありました、礫の層。もうメノウっぽいのが見えます。
わああいっぱい。しかも2度目の川流れをしていないのでみな大きい。左のメノウは見えている横幅だけで10センチ以上あります。
で、結局これだけ掘り出してみました。大小15個。半分だけ持ち帰らせていただきます。先の写真の左側のは、大きすぎて結局掘り出せませんでした。神さまが欲をかくなと言っておられるのでしょう。こだわりません。
今回の最大級がこれ。私が玉川で見たメノウで一番大きい。
赤くありません。
他のメノウも白いのが大半。
なぜ赤くないのか。今回見つけたこの地層は、青い泥の、おそらくは酸素の少ない還元性の強い土質でした。玉川メノウが赤くなるのは酸化鉄によるので、この環境では着色しなかったのでしょう。
では今回の玉髄たちは、このまま川を流れたとして赤くなることはなかったのか。赤くなるとしたら、いつどこであの赤い縞模様の玉川メノウができるのか。これも仮説を立ててみましたが、さてこれは立証できるかどうか。
あ、メノウ教信徒の皆さま、オレの取り分持っていきやがってとか怒らないでくださいねー。今回の場所は何十カ所もある供給源の一つに過ぎません。メノウ拾いとしては邪道にして外道な方法だし。今回だけです。自分を試したかったんです。
いろいろ考えて、行動して。それなりのささやかな科学的冒険でした。ちょっと楽しかった。
↓ 玉川メノウ最初の記事と、変わり種メノウ。もし未読でしたら。