今回のタイトル、今ごろこんなネタを使うセンスの古さをお笑いくださいませ。それでは。
老母が、那珂市にある茨城県植物園に父と共に連れていけ、と言い出しました。珍しいことです。近くだし天気もいい、是非はありませんでした。道々聞いてみると、先日友人に連れて来られた時に見た園内の風景を見せたいというのです。…… で行ってきたわけですが、そこで驚くべき情報がありました。ここが7月から閉鎖されてリニューアル工事に入るというのです。リゾート施設になるという。ええええ。
行政がそういうからにはそうなるのでしょう。40 年も昔から親しんだ施設です。現状記録のため再訪しました。梅雨に入りましたが晴れ男パワーで雲を退けます。日暈(にちうん、日傘)が太陽にかかるくらいは仕方ない。
茨城県植物園。ここは県が造り「公益社団法人茨城県農林振興公社」が管理運営しています。年1億円が「指定管理料」として県からこの公社に支払われています。これを「毎年1億円の赤字を計上している」と言って「自律採算ができる持続可能性の高い施設を目指す」のだそうです。
うまい! 全国の自治体の皆さま、この手は使えますよ。公益社団法人って赤字で当たり前、もうけが出たらむしろ問題になる団体ですが、そもそも公立施設って自治体が予算を消費して運営するものです。これを赤字と言い換えて独立採算せよと因縁つける。財務省が国立大学法人化で使った手口です。潰したい施設をおカネでじわじわと締め上げる。ボクもそんな楽しいお仕事してみたいです ♥
入場してすぐの噴水広場。植物園の定番ですね。計画ではこの手前にドンと植物で作った壁が立ち
この噴水と花壇は取っ払われて、サウナまで備えた温浴施設になります。もちろん有料。園への入場が無料になる代わり施設ごとに料金が設定されます。温浴ってことは燃料を使うんだよね、平日の閑古鳥鳴いてるときも。それっていま以上にぶっとい赤字のモトになるんじゃ…… いやいや、このあたりは農家の人や年金生活者が多い。平日でも採算は取れるはずです。お役人さまの計画に不備はない。
とにかくこの植物園、おカネがないんです。トイレは和式も混在しウォシュレットなんかもちろんありません。開催するイベントも、この時は「変異植物展」をやっていましたが要するに山野草業者が斑入りのウチョウランなんかを並べた即売会でした。業者頼み。上はおカネを出さず施設の更新もさせずに老朽化に任せ、入場者数が激減したところで現場への説明なしに改革を申しつける。おお詰め腹斬らせるとはこのことか。すごいなあ。
木漏れ日の美しいベンチ。多くの家族連れがここでお弁当を広げたことでしょう。もちろんそんな生産性のないことは許されません。ここはグランピング施設になる予定です。
この芝地も何も生みだしません。子供が喜んで駆け回る空間も生産性がないと言われりゃそれまでです。広々とした空間もまた人々の共有財産(コモン)だという発想、すべてをおカネに換算して考えるような浅ましい経済人間には理解できません。新宿御苑をご存じの方、もしあの広々とした芝生を潰して商業施設を作るなんて話が出たら、神宮外苑と同じように著名人を巻き込んだ大反対運動が起こること、わかりますよね。何もない広々とした空間がいかに人を和ませるか、私には信じられないことですがそれをまったく理解できない人間というのがこの世にはいるんです。こうした人がエラいさんで、ここを何とかしろと言い出したら、説得を試みて左遷されるよりもわかりましたと帳尻合わせた資料を作るほうが利口ってもんです。でここもグランピング施設の用地です。
科学万博の会場から移されたというお姉さん。流転の運命は続く。
県花バラ園。ここもなくなるのかな。実は再開園まで9ヶ月しかないのに、計画の細部が詰められてません。
母が見せたかったというのが、このあずまやからの風景でした。
おお。母の眼には絶景に写ったようですけど、私もこの緑に感動せずにはいられません。でもこれを見ても何の興趣も起こさない人はいて、ここにはボタニカル・レストランとやらが建つらしい。
ここにも何か建つんでしょう。秋にいろいろなキノコが出る場所でした。
ボクの好きな「羽根突き」の木ムクロジ。
くるくる果実の木シナノキ。みんな伐られちゃうのかなあ。
展望塔。見るからに古臭い、でも子供さんは気にしません。
見えるかな、赤い服着た女の子がパパーッ!とか手を振ってます。ここでそう叫んだ最後の子になるんでしょう。
さて熱帯植物館。320 円の入園料が無駄でなかったと思わせる唯一の施設です。
ここは建物そのままに「バニラドーム」と名を変え、内部はカフェになります。周囲にはコテージが立ち並ぶと。…… いえもう何も申しません。
現職員の方々が精いっぱい維持してきた屋内施設、でも先立つものがなければ限界がありました。今回のリニューアルには基本設計に 8800 万円、建設に 30 億円を掛けるそうです。同じ老朽化問題を抱えた水戸植物公園では温室の中身を総入れ替えして評判を取り戻しました。トイレも最新のものになってます。ここもそれではいけなかったのかなあ。
このオウギバショウ(旅人の木)や
熱帯植物たちはどうなるんだろうか。
カフェ、コテージ、グランピング、サウナ付き温浴施設、レストラン、バーベキュー場…… いやあ見事に「いま」の流行りを詰め込んだ計画です。お役人の計画ではリニューアル後5年で年間利用者 26 万人、売上 8.7 億円を見込んでいると。納税者の一人としてこの通りの成功をお祈りいたします。「自治体の植物園に宿泊施設というのは国内初」とのことですがそりゃそうだ、それをふつう「植物園」とは言いません。それに夜間常駐の職員も必要になりますけど人件費大丈夫かな。まあ、いずれにせよここはそういうリゾート施設になるんだと諦めます。
ナイトガーデン。毎年楽しみにしてました。このイベントは残してほしいけど、噴水広場が無くなったら場所がなあ。リニューアル後もライトアップがあるそうなので期待しましょう。
不穏な不確定情報ですけど、国営ひたち海浜公園でもグランピング施設を作る計画があるらしい。貴重な海浜生物の生息地を潰して。民業圧迫だし、役人が飛びつく頃にはブームが終わっているという定石をまた踏んでますねえ。赤字の責任誰が取るんだろう。
願わくば本当の意味で、誰もが楽しめる夢の園生そのうを。
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