我が庭の、ヒメヒオウギズイセンが花咲く中にぽつんと一本、ネコジャラシことエノコログサが生えてました。はて、王国の住民にこんなのはいなかったはずです。どこから来た。謎はすぐ解けました。向かいの更地を覗いたら
ネコジャラ畑。
かつてはここにも家があり、私と同年代のお子さん方がおられました。みんな家を出て、ご両親は亡くなり、家は取り壊されて今に至ります。時おりご長男が草刈りにみえますが、まあ夏場の植物の成長に間に合うものではありません。
申し上げたいのは、雑草は一度はびこったら手に負えないということ。種子が隈なくばらまかれたあとでは、もはや根絶は不可能です。侵入させてはならない。侵入されたら初期に滅ぼさねばならない。というお話を枕に、以下をご覧ください。
6月の頃から、お散歩の途上で変なものを見るようになりました。
これ。
真っ白くまん丸な毛玉、直径は5センチに及びます。街を歩いていて、これが突然目の前にふわりふわりと現れます。ものすごく軽い。手を差し伸べるとその風圧で指先から逃れます。まるで意思があるようにうふふうふふと舞い飛ぶ、これは妖精さんかしら。
いやいやひょっとして、これはあの「けさらんぱさらん」ではなかろうか。日本各地、どころか世界中で類似したものが語り継がれる謎の毛玉生物。日本のは持っている人に幸運をもたらすとか、おしろいで飼育できるとか言われます。おお、そんなもんを遣わして神は私に何をさせようというのか。タコの次は妖精さんか。
んなアホな。
科学で説明できないものは大好きですが、それにはまず科学の眼で観察しなければなりません。これはどこからどう見ても植物の果実、その冠毛です。タンポポの綿毛と同じものです。キク科の可能性が高いけど断言はできません。
拡大すると、枝分かれした繊維が鳥の羽毛のように緻密なのが見て取れます。
タンポポの種子は傘にぶら下がりますが、こいつは頭から四方八方に毛を広げます。
すぐ脱落する。飛んで、落ちて、芽を出して、そして根付いて版図を広げる。タンポポと同じ戦略ですが、それよりはるかに遠くまで飛びそうな巨大な冠毛、全体の軽さ。市街地にまで進出する貪欲さ。こんなえげつない性格は日本の在来種には不要です。かなり過酷な生存競争を生き延びた、たぶん大陸生まれの外来種。でもさっぱり種名が思いつきません。このあたりでは新参の者と思われます。
正体がわかったのは7月に入ってから。いつものお散歩の帰り道、風に舞うヤツを見つけました。風上を見ると
コレだあ。
去年のお散歩で撮った花期の姿。
まあ花はアザミらしいのですが
見よ極悪のトゲ武装。「総苞片」というつぼみの覆いは栗のイガの如く、さらに葉も茎も日本在来のアザミとは段違いの鋭いトゲで覆われます。このトゲは皮手袋をも貫く。過剰と言えば過剰ですが、つまり大陸ではここまでしなければ生き残れなかったということ。それがこの穏やかな島国では人をも苛さいなむ過剰武装になるんです。大陸っちゃおっかねえ所だなあ。
そしてこんな極東に到達しました。二十年ほど前までは港湾部の荒れ地にあるものでしたが、今や全国に版図を広げているそうです。この繁殖のようすを見ればその厄介さが知れます。野原一面に繁茂したなら、毒がないというだけでその被害はイラクサに匹敵するでしょう。
この一株から何千、何万のタネがばらまかれます。本当は今年のこのタイミングが水戸からこいつらを排除するタイムリミットのような気がするのですが、まあなるようにしかならないよなあ。せめて我が王国だけは守りたいのですが、問題はお向かいの空き地と、
実は隣家も昨年から空き家です。半年でこんなになりました。かるーくヤツらが侵入するでしょう。あああっどうしたらいいんだ。
↓ どうかおひとつ、いや三つ。