政治ネタ? いいえ、生態観察です。時事ネタ? いやいや普遍の意味を求めます。
今これを書いている現在、兵庫県の知事さんが辞めろ辞めないの騒ぎになっています。東大出の元官僚、まだ一期め。蓄財も途中だろうし、ここで辞めたらこれまで人生賭けて築き上げてきたものがぜんぶ吹っ飛ぶのでご本人は必死です。わあ面白いなあ。他人だし他県なのでどこに帰着しようが構いませんが、ただ人ひとり亡くなっていることだけはお忘れなく。
官僚というのは昔で言う国家公務員Ⅰ種、今の総合職試験の合格者です。任官すると最初は中央官庁勤務ですが、やがて地方に配転になります。二・三十代の若造が行った先ではいきなり管理職、豪華な執務室に革張りの椅子、実務なし。自分の父親ほどの年齢の「お世話係」が朝から晩までご機嫌取り。蝶よ花よと毎日おだてられあやされるうちにこの都の高僧のような扱いに慣れて、思い通りにならないと大声を上げる、モノを投げつける、今日は気分が乗らないと言ってはプイと外出して戻らない。本来優秀だった人間はこうして数年でクズなダメ人間になって中央に帰るわけです。…… あ、これあくまでも私の世代の官僚について見聞きしたことですよー。まさか今どきこんなこと。
最近の流行りは、国のカネで海外、多くは米国に留学してMBAなんかの学位を取り、帰国したらすぐ退職して外資系企業の幹部になってしまうこと。うん、これぞ頭のいい奴の処世術。厚顔無恥なんて悪口を気にしてたらせっかくの経歴を生かせません。
さあそこで県知事です。政党系の知事が辞めるとき、次の知事に対立党や県職員、タレントなんかに立候補されてはいろいろと都合が悪い。そこで目を付けられたのが東大出の官僚です。こいつなら中央官庁とうまくやれるし、肩書で票も集まるだろう。上記のように退職していればベスト。官僚としての出世コースから外れたキミだけど、県内最高権力者になれるよ。蓄財だって思うがままだよ。…… いえね、最初から知事になるために東大入ってお役所行く人はいないと思うのでそう想像するんですけど。今どき本当に優秀で才覚ある人は起業するので、役人になるあたりが狙い目でもあるでしょう。
知事になる人物に興味を持つ篤学の士はちゃんといて、各都道府県の知事の経歴をずっとリアルタイムで調べている方がおられます。この八幡和郎さん(実はこの人も東大エリート官僚)という方の調査によると、47 人中実に 28 人が官僚出身。そのうち東大出身者が 25 人、うち留学経験者が 8 人。「東大出の官僚」知事は関東ではおひとりですが地方に行くほど割合が増えるようで、まあなんとなく事情が伝わります。で、かの兵庫県知事も 25 人の1なわけで、知事の中の多数派でした。というか、東大官僚知事がこんなにいるとは思わなかった。知事の 47 人はサル山のような「群れ」ではなく、各個で自立した人の「集団」なので多様性がないことは問題になりませんが、それにしても片寄ってますね。肩書がいかに重要かという証左ではあります。
決して、東大だから官僚だからと決めつけはしません。私なぞ及びもつかない優秀な人なのは間違いないし、中には本当に現場で有能な方もおられるはずです。企画力や情報力に優れ、人脈があり、人柄良く部下から慕われる「人物」な方もきっと。ただ兵庫の知事さんはたぶんガリ勉タイプの、典型的なダメの方だったということです。個人的には他人に怒られたことがない、頭を下げたことがない、現場の空気を知らない、そんな奴に人の上に立つ資格はないと思っております。知事になる方には、こんな先入観を打ち破ってくださることを切に望みます。
ああそれにしても、どうしてこうも人は栄達とか富貴とかを求めるのでしょうか。「力」を得るといろいろな勘違いしてしまうのはなぜでしょう。人生はそれほど長くなく、それほど必要な物もないのに。もっとも、誰もが私のような反社会生活を始めたらあっという間に日本のGDPが今の半分以下になってしまいます。人それぞれでいいとは思いますよ。
少し調べものをして書いただけですが、それなりに面白かった。人の生きざまって面白い。私の周囲の生物屋に聞くと、いちばん好きな生き物/いちばん嫌いな生き物のいずれかに必ず「人間」と答えます。まこと人間ほど観察しがいのある生き物はありません。
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