またアニメで変なスイッチが入りました。優しい心で見てやってください。
9月には
ヒリついております。今大いにヒリついております。理由は2つ。1つは9月のブログアクセス数でありまして、これまで 100 回くらい記事にした件、毎年この月に数が下がることです。今月ここまでは Google 検索からのを筆頭に順調にご来訪頂いています。昨年も月初めから調子良かったのですが 9 月 19 日に突如ガクンと下がってそれが 10 月まで続きました。30 日が事故日であるJCO記事絡みで操作されてるのは間違いないと思いますが、ブロックではなく、まるでフィルターをかけられたかのように全体のアクセスが減りました。今年はどうなる? 来るとすればいつから? 戦々恐々です。
そして理由の2つ目が…… こちらの方が大きいかも知れません。「異世界失格」の最終回はどうなるのか?2期はあるのか?です。深夜アニメです。コケないでください。
というわけで久々のアニメネタなのだ。元漫研会長の暗い情念が炸裂するのだ。我慢してるぶん爆発もデカい。文章ばっかりなので興味ない方はご退出してくださって構いませんコトよ ♥ ちなみに今期の「覇権アニメ」(最も人気の出た作品)はラノベ原作の「負けヒロインが多すぎる!」で衆目の一致するところですが、これについてはまた別の機会に。
深夜アニメとは
深夜 23 時から 03 時までの間に放送される「深夜アニメ」は、3ヶ月を1クールと呼ぶ単位で 12 話前後が制作されます。7月はじまりのクールで放送されるのが「夏アニメ」。何と 60 以上の新番組がひしめきます。これを全チェックして、最初の5分間を見て視聴取りやめの「1話切り」、3話まで見る「3話切り」…… とつまらない作品を切っていって、10 話でようやく愛想が尽きるのもあります。とにかく「良作」を絞って行かねば視聴する時間が馬鹿になりません。そして絞って絞って最終回まで行き着いたものから、BDに残す作品をを選別します。もちろんCMカット作業を完璧にしますけど、たまにああわし何やっているんだろうなんて思います。9月の最終週は「最終回ウィーク」、さあどうなる。
「異世界もの」について
今回は本題の前に「異世界もの」と呼ばれるジャンルについてご説明申し上げねばなりません。本来は、主人公であるところの英雄が現実とは異なる世界で冒険し何かを得て帰還する物語で、基本パターンは世界中の神話にその原型アーキタイプがあります。でも今の日本で異世界ものと言えば
① 中世ヨーロッパのような社会制度と技術レベルの世界で、王族や神官、騎士が存在するのみならず、冒険者なる職業、魔法使い、エルフ、ゴブリン、竜、といった空想上の存在と、魔法や魔力という未知の力があり、その存在が広く認知されている。
② そこに現代日本から主人公が「転生」や「召喚」で現れる。たいていは学力も身体能力もなく何の努力もしていない「ただの男子高校生」や「疲れた社会人男性」、ところが異世界では特別に法外に理不尽に強力な「力」を与えられている。なぜお前ごときに。
③ 主人公はその力で魔王を滅したり暴君を倒したり王国を興したり、現世では孤独だったくせにこちらでは仲間に助けられ美少女にホレられとにかく英雄っぽいことをぜんぶ難なく次々と安安と成し遂げていく。
④ でも永遠に話は完結しない。現世に帰還することもない。作品が人気のうちは次々と新たな敵が現れ新たな目標が生まれ、なぜか仲間は増え続け美少女の群れがハーレムを作り、いつまでも冒険が続く。人気がないと執筆が止まり、いつの間にか読者に忘れ去られる。
書いていて気持ちが悪くなってきました。こういう筋の小説が何千とあると聞いて、皆さんはどう思われますか。今この瞬間も新たに書かれ投稿され続けてるとしたら。とにかく基本設定というか枠組みテンプレートが与えられていて、あとは主人公をどういう奴にするか、転生か召喚か、どんな無敵能力を持たせるか、エルフとかゴブリンとかのどれを味方にどれを敵にするか、なんてピースをパチンパチンとはめていくことで作品になってしまうんです。これを創作と呼んで良いのだろうか。もう一つの大ジャンル「学園もの」と合わせて、こういうのが「小説家になろう」というサイトに毎年何千と投稿され、人気の出たものが毎年百冊以上ライトノベルのレーベルから出版され、数十がアニメ化され…… すいません、気が狂いそうです。ラノベとして出版されたものには表紙に今風のマンガのイラストが使われ、本文にも数ページおきに同じ絵で挿絵が入ります。読者の想像力が入る余地を与えません。この絵柄がまあどの表紙も似通っていて、最近のイケメン俳優や集団アイドルみたいで見分けがつきません。肝心の文章も読者に読解力を一切求めず、舞台設定や状況の説明がくどいほどに続くと、あとは登場人物の会話のみ。申し訳ないけど一冊読むのに 30 分かかりません。実は読者対象が 30 ~ 40 代の男性だと聞いて驚きを禁じ得ないのですが、つまりはこういう時代なんですね。
はあはあはあ、すいません、腹に詰まっていたものを全部吐き出させて頂きました。ああすっきりした。「なろう系」で検索して頂くと、数々の識者や創作者が意見を述べておられるのでどうかご参考に。
異世界失格
さてようやく本題「異世界失格」です。これは原作付きの漫画として小学館から出版されたものを元にした夏アニメでした。分類上は異世界ものとなりますが、実質そのパロディと言ってよく、ギャグ仕立てで話が展開します。最初にトラックに轢かれて異世界に転移するという、これもよくある設定のパロディネタ。そろそろトラック業界から苦情が出そうな気がします。4話では「闇落ち」した転移者に「もと居た世界で何もうまくいかなかった奴が突然力を与えられて勇者になって、それで見知らぬ世界を救うと思うかぁ!」なんて異世界ものを根本から否定するような正論を言わせてます。うんわしもそう思う、人間てそんなもんだよね。本作の世界には数多くの現代人が魔王を倒す勇者として転移させられてますが、ほぼ全員が山賊や強盗に成り下がってます。
さあしかし何よりもこのアニメで私の心をわしづかみにしたのが、作品内で闇色の不健康なオーラを放ち圧倒的な存在感を示す主人公。それが「太宰 治」その人であります。はいそうですよーあの文豪ですよー。女たらしの自殺マニア、太宰 治を異世界へというこの発想。その太宰が最後の心中相手に選んだのが「さっちゃん」。互いに手と手を赤いひもで結び、玉川上水にさあ飛び込むぞというところで例の「転移トラック」が現れて、気付けばひとり聖堂の床に横たわっていた…… というところから物語が始まります。ふつう転移者が授かるはずの超能力はまるでなし。ふところにタバコとマッチと手帳・万年筆、そしてたびたび自殺未遂に使われた睡眠剤カルモチンのびん。厭世的に生きてきた太宰先生ですがここでは明確な生きる目標ができました。同時に転移してこの世界のどこかにいる「さっちゃん」を探し出し、今度こそ心中を果たすこと。ちなみにまだ没後百年に達してないためか作中に「太宰 治」の名は一切なく、主人公は一貫して「センセー」と呼ばれます。
センセーの旅にはすぐお供が付きます。巨乳エルフの女神官、ネコ耳の女武道家、大剣を背負った盗賊の少年。その手の異世界ものにお詳しい方、すぐそれぞれのビジュアルが浮かぶでしょ。たぶんその通りのキャラクターデザインです。パターンで塗り固められたこの異世界ものというジャンルを完全にナメてます。この3人に自分の入った棺桶笑を引かせて、センセーはこの世界を巡ります。
キャラデザと言えば、1回限りのゲストキャラにも容赦ありません。2話の間抜けな王さま、8話の賭場の親分、9話の暴走族ヤンキー、みなマンガのような役通りのビジュアルで、特に親分なんか丸い黒メガネにステテコ腹巻なんて姿で画面に現れた瞬間に吹き出してしまいました。
しかし前例のないキャラクターもあります。そう、主人公のセンセーです。太宰そのものはこれまで何度もビジュアル化されてきましたが、よりにもよって異世界ものの主人公だなんてもちろん前代未聞です。さあどんなキャラになったか。
で、これ ↓ 画面キャプチャー
肖像写真がたくさんあるのでご存じと思いますが、かの文豪はかなり濃い顔立ちの美男子(享年 39 歳)です。それを敢えて三白眼で白ッ面の陰気な顔にしています。本人はデカダンス(退廃主義)な面を強調されがちですが、むしろ作家としては稀代の物語作者(ストーリーテラー)と評されます。そこでビジュアルでデカダンスを表現し、能力ではストーリーテラーを前に出す。原作者の配剤がまことに心憎い。
主要人物が出てくるので、よろしければ主題歌の映像をご覧ください。1分半です。
アニメ本編は一行が行く先々で出会うエピソードの連なりです。各エピソードは1話か2話で完結します。前半はセンセー自身や3人の供、ゲストキャラが事件を起こし、笑わせ、後半にセンセーが事態を収めます。世のため人のために何かをするようなキャラクターではないのですが、結果としてセンセーは無敵です。実はセンセーにはある条件で発動する特別な能力があるのですが、それを決して自分のためには使いません。供たちも、転移者も、村人も、登場人物はみな悩み、苦しみ、心の闇を抱えています。そんな人々の魂を救済しながらセンセーは旅を続けます。とにかくセンセーかっこいい。それ以上のネタばらしはしません。今はネットで視聴することができるようなのでぜひどうぞ。お薦めは8話と 1 1 話です。
主題歌
上でご紹介したオープニング主題歌。最初に聞いた時はいまどきの若い人の歌に耳がついていけず、歌詞が聞き取れないので特に印象はありませんでした。でも耳が慣れるにつれ、太宰 治の凄惨な心境を織り込んだうえでしっかりとこのアニメの主題歌であることに気付きました。なんだこれ凄いぞ。見れば作詞と歌は「伊東歌詞太郎」さん。あ、本当にこういう芸名の方です。以前別のアニメのエンディング曲を作って歌っておられて、ああなんていい歌、いい歌声と感心してその名を覚えておりました。
ユーチューブにフルのミュージックビデオがあったので聞いてみました。ものすごく音域が広く澄んだ声、歌詞も付いているので今度はしっかりと言葉を追うことができました。自意識、何もかもしくじった、六道輪廻の外へ、道化と落ちた身…… うわあ太宰だ。
この伊東さんという方、読書家で自身も小説を書くらしい。たぶんこの歌を書くために太宰の作品を読み返したことでしょう。以前にも書きましたが、主題歌の制作者がここまで身を入れるには、その人に実力があることはもちろん、アニメスタッフが目標意識をしっかり持っていてきちんと主題歌に求めるものを説明できたこと。すなわち、主題歌のいいアニメは出来がいい。
興味を持たれた方は ↓ フルでもどうぞ。
原作付きアニメの1クールめ最終回
さてその異世界センセーもいよいよ 12 話目、最終回を迎えます。どうなるか心配です。これがアニメオリジナルの作品で最初から1クール完結という予定なら、お話をきちんとまとめられることでしょう。そんな傑作がいくつもあります。ところが原作付きは難しい。そもそも原作に人気があるからアニメ化されたわけで、全10巻とか20巻とか出ているはずです。1クール 12 話に収まるはずがない。アニメも人気が出れば第2期の制作が決まって、残りのストーリーをアニメにするチャンスが降ってくるのですけど、大人の都合もあってなかなかすんなりとは決まりません。
コミックスで言うと5巻とか7巻とかでアニメ1クール分です。アニメスタッフは原作の残りも作品にしたいでしょう。大抵は同じ制作会社に発注されるので経営的にもそうしたい。でも第2期のゴーサインがなかなか出ません。さあどうしよう。そこで最終回は
① とりあえず目下の伏線が回収されて、これからも日常は続きますよという平和な終幕。
② 何の伏線回収もストーリー上の決着もなく、プチっと終わる。
③ 新たなる敵とか組織とかが次々と現れて、主人公ピンチ!新展開が始まる!と盛り上げてブツンと終わる。
この②や③のように、制作者側が露骨に2期を作らせろと叫んで投げつけてくる最終回を「ブン投げ」と申します。キミたちがつまんないアニメにしたから人気が出なかったというのに何だその態度は、と何度もブン投げられ裏切られてきた私は思うのです。
「異世界失格」は
さあそこでこの作品。境界線です。コアで熱いファンがいて、毎回の放送後にはネット上で感想を言い合うサイトも存在します。でも毎回美少女にパンチラさせて評判を取っているようなアニメと比べれば劣勢です。最近のガ〇ダムみたいにユーチューバーやネットニュースに取り上げさせて架空の人気を煽り立てるような予算もありません。どうなるのだろう。残りのストーリーが気になるのなら原作を読めばいいという意見もあります。1期めで大評判を取った「推しの子」は、原作に忠実なあまり2期のストーリーが遅々として進まずもう視聴はやめようかななんて思っていますが、「異世界失格」は前述の有能なスタッフによるアニメだから面白いと私は考えます。あああ動くセンセーの活躍をもっと見たい。だから最終回の展開がどうなるのか、終幕後に「2期制作決定!」と出るのか、火曜深夜の放送を前に気が気ではありません。ご飯がのどを通りません。ウソですけど。
お付き合いありがとうございました。次の記事はいつも通りです。
↓ ジジイになってもアニメという宿痾から逃れられない。
↓ ランキングサイトです。