大潮です。もうこの季節、昼間の引きは小さくなっていますが、夜の潮に合わせるほどの気合いもない。朝9時の干潮に合わせ、日立の初崎海岸に来ました。久しぶりにシーグラスと高温石英をつまみたくて。
嫌な予感はしたんです。笑ってくれていいですが、往き道で出会う信号がことごとく直前で赤に変わりました。だいたいこういう時は思い通りにいかないものです。…… さあ着いたぞ。
ああ、こういうことか。砂浜がやせ、シーグラスを含む礫れきがなくなっています。いつぞやの「悪魔の夜」と同じです。季節的な潮流の変化かどこかに作られた堤防のせいか、私にはわかりません。
「悪魔の夜」は一昨年 12 月。翌年2月末までには復活しました。この写真はその復活状況。これくらい礫がないとシーグラスは期待できません。いずれにせよこの海岸の衰退傾向はもう何十年も進行していて、それが海岸流の影響であることを地元・日立第一高校地学部がデータを示して明らかにしました。高校生すごいな。状況は続くので、いつしかこの海岸が復活しなくなる日が来るのかも知れません。
ざざーん。
ええい、せっかく来たんだ。無駄足になぞするものか。岩礁の間にわずかな礫の集積があるのを見つけて、砂ごとすくってきました。洗って乾かして、さあ拾い出せるかな。やがて潮が満ちて来て、今日の初崎はここまでです。
浜はこんなでしたが、何やら芳香が漂います。ススキに囲まれてユッカが咲いている。これではないな。
群れ咲くはクコの花。これでもない。
この花の香りでした、マルバグミです。これもこのブログでおなじみ、茨城が東北限の植物。来春に熟す実は食べられます。
そのころに、また来るからね。
せっかく来たので、というのはいかにもビンボー人臭くて内心じくじたるものはあるのですが、さほど遠くない場所に「東滑川海浜緑地」というのがあります。潮風に吹かれながらの昼メシというのもまた一興。コンビニで食べ物を仕入れます。
こういうところ。
何カ所かある洞穴で、ヒカリモが一年じゅう見られます。
ヒカリモの洞穴の入り口に浜の名花ハマギク。そこにチョウが来ていて…… ここに写ったものだけで記事3つは書けちゃいそうな情報量です。まあ内容が重複するので書きませんけど。
ハマギク。青森から茨城の太平洋岸にだけ咲きます。上皇さまがいと愛でられる花だとか。
そこにキタテハと
イチモンジセセリ。キタテハは成虫で冬を越します。セセリの方は幼虫が越冬できるか否か、当地のあたりが境界です。ともに虫けらと呼ばれる身、裸一つで冬に耐える切なさを想います。
そしてこれがヒカリモ。自ら発光してるのではなく、カメラのフラッシュ光を反射して金色を呈しています。本来水中を泳ぐ単細胞の藻類で、通常春から夏にかけて水面上に立ち上がって一層に並び、それが光を反射させる。この「立ち上がる」というのが実は天敵の捕食性動物プランクトンを恐れ、必死に水面につま先立ちしてる姿なんです。ところがここでは一年中水面上に立ってます。つまり一年中何かを恐れている。だとすると藻類というのもなかなか楽には生きられないものなんですね。
まあ他人をおもんぱかってばかりでもしょうがありません。昼メシを食いましょう。…… どうですこの風景、雄大な海を前にぽつんと遊具。このブログのカテゴリーにある茨城県北芸術祭ではアート作品がこんな具合に海岸に転がされていました。それと同じようにシュールな光景です。
あちこちにあるウ(ウミウ)の意匠。当地の名物なんです。いえ食うんじゃなくて、ここの少し北にある岬の崖の上に、日本でただ一か所のウミウ捕獲場があり、厳密な規則のもと特別な許可を受けた猟師さんが伝統的手法でウを捕まえて、これが全国の鵜飼いに使われます。
正面にある島の名が「グミ島」、奥のてっぺんにいるのがウ。
さあ記念撮影をどうぞ笑。
海に近いこのベンチで昼食を広げます。
暑からず寒からず海からの風は東風。びょうびょうという風音とざざーんと響く波音に、忘我のひと時を過ごしました。
空に今年は珍しかった秋の雲、巻雲。きれいだけど1日後の天候の悪化を告げる雲です。明日遅くは雨かも。さあ帰りますか。
持ち帰った砂は水洗いで塩分や有機物を流します…… なんか白いもんが浮いてきた。
ヒメスナホリムシだあ。砂に紛れていたか。水を吸ってふやけてます。気の毒なことをしたけど、これまでこういうことはありませんでした。今年これが大発生だったというのは本当なのでしょうか。そういえば、ヒメスナホリムシの過去記事に今夏はえらい数のアクセスがありました。今日も Google 検索からのアクセスで最多、試しに「ヒメスナホリムシ」で検索したら私のが上から4番目に表示されました。まさかこんな記事がドル箱になろうとは。
一見して、シーグラスはやっぱり不作のようです。砂が乾いたら心がトランス状態になる、あの楽しい楽しい砂つまみでシーグラスと高温石英を取り出します。成果よりその過程が楽しいので、問題はありません。
で、言い忘れるところだった。初崎海岸にシーグラス採取の遠征をご予定の皆さま、上記のように今はブツがございません。春を待てば潮も獲物も確実です。待て、しかして希望せよ。
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