ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

しっぱいリカバリー

 

 レンズに関するマニアックな話が続きます。写真だけでもご覧いただければ。

 


 本当にショックなこと、心的ダメージの大きいことって、かえって口に出せないものですね。記事にできなかった失敗談を。


 タムロンSP 90 mm F2.8 マクロ モデル 72B


 一眼レフカメラに装着する交換レンズの名です。タムロン社の 90 ミリレンズはカメラマンの間では「タムキュー」と呼ばれ、優れた描写力で人物撮影に多用されるなど揺るがぬ定評があります。改良されつつ 40 年以上続くこの 90 ミリシリーズの中で、この 72Bというのは手動でピントを合わせるマニュアルレンズ時代の最後に登場した、いわばマニュアルの最終進化形、1996 年の発売です。私は発売直後にこれを入手して、そのシャープな描写とボケの美しさに魅了されました。以後 28 年間、私のメインレンズであり続けました。それが

 


 こうなった。ぐはあ。

 


 声が出ませんでした。めまいがしました。撮影を終えて愛車に向かう道で、突然前触れなくアダプターが外れて、半回転しつつアスファルトにガっと。後端のレンズが割れました。斜めに激突したので鏡筒全体が歪んだ可能もあります。修理できなくはないでしょうが、たぶん新品が買えるほどの請求が来るでしょう。そしてこの世にはもう同形の新品はありません。アダプターの経年劣化に気付かなかった私の不覚です。この当時のタムロンのマニュアルレンズはカメラとの接合部のマウントが取り外せて、そのマウントアダプターを交換することで規格の違う全社のカメラに使えるという合理的なシステムでした。よもやその交換アダプターがアダになろうとは。


 突然のことで、たぶん心理的にこの事実を認めたくなかったのでしょう、すぐ中古市場で同じものを探しました。いくつか良品もありましたが、アダプターが付属してないものがほとんどでした。アダプターが原因だったんだよな、そりゃ 28 年も使えば摩耗するよな、状態のいいアダプターを別に探さなきゃ…… なんて考えるうちに疲れて、すっかり気が萎えました。90 ミリマクロというとソニー純正のものを持っているので、これからはこれ一本で行けばいいこと、うん、そうしよう。…… はあ。


 いえ、ソニーのレンズはもちろん優秀ですよ。何と言ってもオートフォーカスに手振れ補正付き。カメラとの相性もいい。でも私の主戦場・マクロ撮影では「小絞りボケ」という致命的な欠点が出ました。巨大なレンズの重さもいろいろな不都合を産みます。それを痛感したのが前記事の高温石英撮影。絞りを一段開けて小絞りボケを回避するのでピントが浅くなる。レンズの重みでカメラはコケまくる。ああこりゃダメだと。


 気を取り直して、というか前回より冷静になってもう一度中古市場を覗きます。するとあったんです、アダプター付きの出物が。即注文しちゃいました。

 


 届きました。ちゃんと箱付き。

 


 アダプターも付いて、取説もあって、何とソフトケースまである。

 


 ちゃーん。鏡筒が金属でないことに「安っぽい」なんて文句をつける人がいますが、ナニを求めておるのじゃ。レンズは写してなんぼじゃい。

 


 「レンズ内多少のゴミ有り」とのことでしたが、私の使っていたのが 28 年ぶん汚れておりましたので気になりません。正直な業者でよかった。

 


 絞り羽根の動作もなめらか。

 


 これでまた思い通りの接写ができます。

 


 と、これでレンズの問題は解決したのですが、被写体でも私は失敗していました。10 月 9 日の記事で書いた、県の南端・波崎海岸で拾った美しいルリガイの貝殻。ぜひともタムロン 90 ミリで撮りたかった対象です。

 


 これね。生物体が残って腐臭を放っていたので、土に埋めて微生物に分解してもらおうと思いました。

 


 そしたらこうなった。

 


 2週間ほど経ったら掘り出して撮影する予定でした。そこでレンズが壊れた。気が抜けてそのまま土中に放置して、掘り上げた時には一か月が経過してました。その間に殻がぼろぼろに。色も抜けてます。よく考えたら日本の土壌は酸性で、殻のカルシウムが溶けだしてしまったんです。ああなんてことだ。生物体はきれいに無くなってましたが、殻まで損なってしまった。落ち込むなあ。

 


 いやいや、重ねる失敗というのもこれまでの人生で何度もあった。とにかくやれることをやろう。ダメージの小さいのを集めて、これを撮ってやりましょう。

 


 遠く南瞑の海から旅してきた貝。

 


 すいません、拡大したら付着したままの土くれが目立ちました。やる気あんのかコラ、なんて貝に怒られそうです。

 


 美しい貝です。いずれクリーニングし直して、きれいなのを撮ってあげましょう。


 と、ここでひとつ思い付き。サンショウガイと並べてみよう。

 


 おお、赤と青。良い色味になりました。

 


 実はここでブラックライトも当ててみたのですが、ルリガイはぼーっと白く光るのみでサンショウガイとの組み合わせはいまいち。可視光で撮るのが吉でした。

 


 結局サンショウガイの撮影になってしまいました。やっぱりこの貝はフォトジェニック。ルリガイはまた日を改めて。今回は私も貝も本調子ではなくて。

 


 これ厳密にはサンショウガイじゃないかも。同様にルリガイにも複数種が混じっている可能性がありますが、それは今回の主題から外れるのでお許しを。

 


 高温石英も撮り直してみました。F32 まで絞ってもシャープなピント。タムロン 90 ミリは、やはり私の人生に必要なレンズです。

 


 これで失敗のリカバリーは完了に見えて、実は一つ残ってます。あの割れたレンズです。もちろん不燃ゴミで捨てればいい話ですが、28 年連れ添ってくれた者をポイと、なんてできません。せめて何らかの形で供養してやろうと思ってます。

 

 

 

 

↓ 「絞り」の説明が図入りであります。

↓ カメラは代わっても。

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