秋と言えば秋。冬と言えば冬。今の気候を何と呼べばいいのでしょう。木々は紅葉の盛り、されど暦は 12 月。野山はどんな様子かな。新規成った 90 ミリマクロレンズを試すなら今。不思議なことに、こういう節目にひたち海浜公園に行きたくなります。秋か冬か、かの地を一日逍遥して見極めてやりましょう。お花回です。
海岸口から入ります。…… 駐車料金がまた値上げしていた…… この無人駐車場になぜ入場料より高い料金が必要なんだ。…… あの日光華厳の滝だって駐車場は無料なのに…… イカンまた迷惑かけそうな愚痴が始まった。早くフィールドの気を吸わねば。
ひたち海浜公園というとネモフィラやコキアの時期に西口「翼のゲート」からお入りになった方が大部分でしょうけど、私のようなああっカップルが妬ましいっ幸せそうな家族がにぐいいいっという歪んだ者には、この人影少ない海岸口がふさわしい。ふふふ。
本気にされると困るので修正しますが、いや半分は本音でありますが、自然観察が目的の時は距離的に海岸口がよろしいのです。ただし今日は原生の自然が残された「樹林エリア」には行きません。「砂丘エリア」を通って「南口エリア」を巡ります。呼ばれたんです。本気にしてね。
まずは砂丘エリア。
低木のマルバアキグミが実を生していました。小さくて食いではないけど母種のアキグミより美味だとか。これも茨城県が東北限の植物です。あ、1個頂きました。
拡大。実の表面の白い星形のウロコみたいなの、わかりますか。これがグミ類共通の星状毛。小学校のとき、両親がおもちゃみたいな顕微鏡セットを買ってくれました。貧乏なのに無理をさせちゃったなあ。そのセットには試料としていくつかプレパラートが同梱されていて、最初に選んで見たのが染色されたこのグミの毛でした。つまり私という生物屋が人生初めて顕微鏡で見たものです。思うことはさまざまに。
砂丘を這いまわる針葉樹、ハイネズ。うっかり手を出すとこの針葉に刺されまくります。痛いったら。
その果実。2年かけて黒く成熟します。その後どうなるかは知らない。
枯れ野の中に突如、という感じです。ただ1本カワラナデシコが咲いてました、そっぽを向いて。立ち入り禁止の柵に阻まれてこのアングルでしか撮れません。勝ち負けで言うところの負けね。
このあたりから砂丘を離れ、南口エリアに入ります。地面は砂質、そこに海岸種と通常種、自生種と外来種が交じり合うカオスゾーンに突入です。何が出るかわからない、だからここ呼ばれたんです。
ピラカンサとパンフレットには紹介されてますが、私はタチバナモドキと言ってしまいます。公園になる前から生えてました。遥か昔、ここが飛行場だったころから、いやもっと昔から、たぶん。
ポワンとした芳香が鼻をよぎりました。ヒイラギが咲いてます。モクセイ科オスマンサス属、属名は「香る花」という意味。実はキンモクセイと同属で、香りもよく似てます。これも北限に近い分布です。我が家ではイワシの頭に刺して魔除けにしてました。
葉にトゲトゲがなくて、当初ヒイラギとわかりませんでした。葉縁が丸くなるのは老木の特徴です。大きな株ではなかったけど、きっと何度も伐られてきたのでしょう。年をとったら丸くなれ、なんて説教されてるようで面白くないぞわしは。
今日意識して探しました。ようやくあった、トベラの実です。裂開して赤いネバネバした種子を陽に晒してます。
海岸植物ですが庭木にもされます。ヒイラギ同様玄関にかざして魔除けにします。トビラが訛ってトベラになったとか。
何枚もすいません、赤い実が嬉しかったので。トベラの木はたくさんあるのですが、雌雄異株で実を付けているのがあまりないんです。
なんていい気分のところで、今度はぷんと異臭が漂ってきました。これはアレの臭いでは。いやしかしアレの時期は早春なのでは。
アレと言ったのは山野にあるヒサカキ、その異臭を放つ花です。でもあったのはその海岸代替種ハマヒサカキでした。さすが親戚同士、ニオイが同じか。へえ花期が違うんだ。雌雄異株で写真のは雌花。近くには大きな雄花をたわわに付けた株がありました。
ここ南口エリアは自転車道、汽車道、歩道が網のように入り組み、上ったり下ったりがあって本当に立体迷宮の様相を呈します。そこをウロウロとカメラと三脚を手に彷徨しながら撮影していますと
南口に出ました。人けがありませんねえ。実はこの場所を開園前から知ってます。当時まだ水戸射爆場と言われたここの調査をしたいという大学の先生を案内して、まだ作りかけだったこの場所を通りました。あ、ちゃんと管財局の許可を取りましたよ。この閑散とした光景を見て、その当時を思い出しました。先生お元気かな。
石像やら石塔やら。昭和の時代にはこんなのが流行ったよなあ。
イロハモミジが真っ盛り。
メタセコイアも真っ盛り。昭和天皇の愛された木です。遊園地へと続くメタセコイア並木は南口の見ものとしてパンフレットにも紹介されてます。同じ木は県内あちこちにあるけれど、紅葉の色はここがいちばん。さすがです。
その並木の下にタカサゴユリが青々と葉を伸ばし、花芽を付けんとする勢いだけどおい大丈夫か。地上部を枯らす時期だろう。霜が降りても知らないよ。
また一つ丘に登ったら観覧車が正面に。水戸の県庁からもよく見える、本当にいいランドマークです。
撮影は続きます。退屈はしません。これはトキリマメ。
ツワブキ。我が家のはとっくに散っていますけどここは盛りです。海岸地域の気候がどう作用するのかな。
迷いました。道に迷う楽しさってわかりますか。旅をするときでも、なかなか目的地に着かない時はすでに旅を楽しんでいるのです。今日のこれも、迷いたくて迷ったんだと思います。これが南口エリアの楽しさです。
サザンカに見られてました。見透かされていたかもしれません。どうでもいいけどすごい大輪だね、きみ。
こんな場所に出た。
びっくり、ツルウメモドキのアーチです。この海岸地域に珍しいものではありませんが、それをアーチ仕立てにするとは心憎い。
その実にはさっきのトベラと共通した特徴があります。3つに割れること、赤い種子は鳥への食べて ♥ というアピールですが実は薄皮一枚が赤いだけで身がなく、ぜんぜん栄養にならないこと。騙し騙され自然界。
つる植物つながりでツタウルシ。
サルトリイバラ。
テリハノイバラは大輪の花の芳香で楽しませてくれますが、いまは赤い寂し気な実に。
イソギクは建物周辺にあって、パンフレットにも載っていますがたぶん植栽です。
ヒヨドリがぎゃあぎゃあ騒ぐ一角に出ました。私に驚いて一斉に飛び立ったその木には赤い実がたわわに下がっています。ああこれを食べてたのね。一見してヤマモモだと思いました。
見るからに美味しそうな色。でもあれ?家人がヤマモモのジャムを作っていたのは夏の頃だよな。熟すの今ごろだっけ。
ますます混乱したのはこの花を見て。え?え? アセビやブルーベリーとよく似た、どう見てもツツジ科じゃん。別の木の花?いや間違いなくあの実と同じ枝に咲いている。
帰宅して調べてもよくわからず、できれば使いたくなかった禁じ手、グーグルの画像検索でようやくイチゴノキという名が判明しました。もちろん外来の樹です。あの実も美味しくないとのこと、しまったひとかじりしておけばネタになったのに。
妖精さんを撮っちゃった ♥ わかります? 画面を横切る白い影。何枚か追いかけ回して撮ったけど一枚もピントが合わなかった。まあ雪虫、アブラムシの有翅虫なんですけどね。これが飛び始めたということは、午後もだいぶ日が回ったということ。
海岸口に戻る手前でフェンネル(ウイキョウ)の大株が何本もありました。セリ科らしい花火のような集散花序。
拡大。ヨーロッパ原産のハーブ/薬用植物ですが日本産は高品質で知られるそうです。
いかがでしたか、国営ひたち海浜公園南口エリア。混雑時期でも人が少なく、ダンジョンに迷う楽しさと世界中から集められた個性的な植物たちとの出会い。私がいちばんこの公園の「らしさ」を味わえる場所です。雑踏嫌いのナチュラリストがネモフィラやコキアの付き合いでおいでになった時の避難場所にお薦め。でもやっぱり、駐車料金には納得できないんだけど。
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