毎度おなじみ旧県庁広場。
イチョウの黄葉と落葉が進みつつも、まだ寒さが極端でなかった頃、ここは周辺の保育園の子どもたちのよいお散歩先でした。そうかつまりボクのおさんぽ友だちだ。
こんな街中ですが保育園はけっこうあって、子どもの数もひょっとすると周辺の地域より多い。古い街区が整地されて次々とマンションが建つ、そのおかげでしょう。朝お父さんに抱っこされて送られる姿や行きたくないと愚図ってる様子がもう微笑ましくて仕方ない。黒ずくめの不審な男が子ども好きというのも社会的にアレで、我ながら困ったことだとは自覚しております。
さて広場の子どもたち。護送車笑というか手押し車に乗せられて到着です。一人ひとり精緻せいちな芸術品であるかのように保母さんの腕に包まれ、そっと芝地に降ろされます。その場に座り込む子もいれば弾かれたように駆け出す子もいて、さながら自由運動する分子の一粒一粒。保母さん達はその解き放たれた命ある粒のそれぞれに話しかけたり追いかけたり、イチョウの黄葉を集めて子どもたちにぱーっと振りかけたり。実は大変な気を遣う重労働を笑顔でこなします。子どもが好きで保育士になったのだろうけど、なんて尊い職業であろうかと思います。社会的に正しい待遇を受けているのだろうかなんて余計な心配までしてしまいます。
さてそんな園児と先生たちのご様子を、本当はそばのベンチでずっと鑑賞していたいのですが、きっと迷惑あるいは恐怖でありましょう。ほどほどに遠目で見守るのが常ですが、ふと、ちょっとしたいたずらを思いつきました。
マテバシイのどんぐり。
当地で手に入るどんぐりでは最大、色つやも美しい。この魅力に抗える子どもはいません。これを
いつも子供たちが降ろされる辺りの芝地にばらまいておくのだあ! 落ち葉の片付けられた芝の上で陽を受けて輝くどんぐりはああなんて美しいのでしょう。いい撒き餌だぜひっひっひ。
来た来た。当初はいつも通り駆け回っていた子どもたちですが
一人がどんぐりに気付くと、他の子たちもわーっと集まってきました。保母さんも一緒に拾ってくれました。わあ大成功。
どうやら持ち帰ってくれたようです。
子どもが喜ぶ姿に味を占めて、日を改めて今度はシラカシのどんぐりを用意しました。シラカシは多様性のある木で、どんぐりも細長いのやら小さいのやらスジ張っているのやらさまざまですが、特にまん丸いのを選びました。これが小さな手の中でころころするのを想像するだけで楽しいなーって。
…… 気付いてもらえなかった。やはりシラカシでは小さすぎたか。そもそもシラカシなんて道端にも園庭にもあるだろうしなあ。来年は落ちたばかりのマテバシイのきれいなのをたくさん拾っておこう、なんて考えましたが、ふと。
こんないたずら仕掛けておいて何ですが、迷惑じゃなかったかなあなんてあとから心配になりました。よく洗って磨いて芝の上に置いたので衛生的な問題は少ないだろうし、マテバシイは大きいので飲み込む危険もまあ大丈夫でしょうけど、ケンカの原因になるかも知れないし、保母さんの仕事を増やしてしまったかなんて、実行前に考えるべきことが次々と。
忘れるな、オマエは見てくれの怪しい赤の他人のジジイだと。人さまの子どもにこちらから関わろうとしてはなりません。ただ、法的に許される範囲において、見守りたいし喜ばせたいし助けたい。このご時世にあえて子を産み育ててくれている若い親御さんにも同じ気持ちです。
せめては、少しでもいい日本をこの人たちに残してやれればと思っています。
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