海が荒れた翌日、潮が良かったので海岸に出てみました。
暗雲立ち込めてたけど。
波も高めだったけど。
浜にはこの魚がおびただしく打ち上っていました。すいませんコレなんて魚スかあ? 身が薄くてあまり美味そうじゃないけど。
鳥さんも。魚とか鳥とか、海がちょっと荒れたくらいで儚いコトになっちゃうんだ。身一つで生きてるんだもんなあ。
ヨガやってるようなメガネ。
ほぼ骨になった大魚。残った部分だけで 60 センチにはなろうか、この海にはこんなのもいるんだ。生きてるときはさぞや小魚たちの恐怖の的だったろうになあ。権勢を振るう恐怖の大統領というのがあっちやこっちにいますけど、それも生きてる間だけだよメメント・モリ。皆さんそれまで耐えてください。
なんてモノノアワレを感じながら歩いていたら
へ?
こ、これはクロアワビではないかあ! アワビ界の王さま、超高級食材。岩の上を高速で走りながらアラメやワカメを食べて生きてます。
弱ってるけど生きてます。大波で岩からはがされたか。海の生物って意外に荒天にヨワイんですねえ。長径 15 センチを超えて、手のひらが隠れます。天然ものだし、那珂湊市場で一万円くらいするレベルでないかい。あ、念のため申し上げると、これを持ち帰ったら「密漁」ですよ。いやあ海で採りたてのアワビのバター焼きは素晴らしいもので、魚介類がさほど好きではない私ですら絶賛してしまいます。新鮮なものはぷんと磯の香りがして旨みも強く、コシのある咬み心地はまさに山海の珍味ですけど、もちろん私は知りませんてば、うふふふ。
表面に付いているのは別種の貝で、アワビの排せつ物を食べてます。いろんな生き方があるもんだ。宿主のアワビと運命を共にします。
しかし困ったぞ。いや困っているのはこのアワビか。岩場から遠く流されて、砂浜にひっくり返り起き上がるすべもなく、もう観念というか絶望しかない状況でした。ひょっとして私が今日海に来ようと思ったのはこいつに呼ばれたか、神さまに指名されたか。とにかく助けようという気になりました。ああ本当は海岸メノウを拾いに来たのに。
で、アワビさまを片手に捧げ持ちながら何百メートルも海岸を歩いて、防波堤の海藻が生えているあたりに置いてやりました。打ち付ける大波を避けながら、ああわし何をやってるんだろうと思いました。このための一日だったんだと自分に言い聞かせて。干潮時刻まで間がないのにえらい時間食ってしまったぞ。
黒メノウ赤メノウ玉髄シーグラス。
それなりに拾えたけど、いつぞやの「黒海」や「混沌」と号したような珍品はありませんでした。神さまからのご褒美を期待したのですが、まあその発想がいけないんでしょう。
アワビめはどうしたか、帰り際に様子を見ました。この窪みに放したのですが姿はなく
ちゃんと奥の岩陰に隠れてました。生きろよ。恩返しはいいから。
ちなみにイワガキも打ち上げられてるのがいました。ぴゅーっと水吹いてたからこいつも生きてます。まあカキだし、とか思って捨て置きました。我ながらこういうのがいけないと思う。
↓ のちに黒海(ヘイハイ)と名付けました。
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