6月初め、八溝山の山頂に来ています。千メートルちょっとですが、これで茨城県の最高点。
すぐ隣にお城型笑の展望台があって山頂より高い。つまりここに一人でいる間は「茨城でいちばん高いところにいるやつ」なのです、うわははは…… 何やってんだか、我ながら。
那須のお山がよく見えます。
山頂付近に誰かが植えたゼンテイカ(ニッコウキスゲ)が増えに増えて…… 水戸では5月半ばに咲いていましたが、この標高ではこれからのようです。
さて、水戸からはるばるここまで来た理由、それはムカシトンボ。今年もとうとう成虫を見ずに終わってしまいました。それではと、以前に幼虫を確認した沢で、周辺のウワバミソウに産み付けられる卵を探してみようと思い立ちました。今年のものがあればムカシトンボの健在を知ることができます。今の私はそれで十分満足できちゃいます。で、ウワバミソウの茂みを素手でガサゴソやっておりましたら腕にじくううっと痛みが走りました。こ、これはイラクサ。
ご覧ください、ワナですよワナ。左がウワバミソウで右がムカゴイラクサ。よく似たイラクサ科どうし、無害なものの中に毒刺を持つ奴を混ぜる。これをワナと呼ばずして何とする。
毒刺びっしり。いやもうすっかり油断しておりました。イラクサの刺傷は1時間もすれば痛みが消えますけど、結局ムカシトンボを見つけられないまま傷心で帰宅…… と思うでしょ。いやいや、今日の本当の(裏の)目的を完遂していないのです、ふふふ。
前日地域局のテレビで、茨城のナチュラリストにとってどえらいニュースが動画と共に伝えられました。なんとなんと、八溝山のある大子町から抜ける山道の途中でツキノワグマが目撃されたのです。ドライブレコーダーにくっきりと、小型ながらクマ以外の何物でもない奴が草むらに駆け込む姿が写っておりました。おおおお、その場所はよく知っておるぞ。これは私も行って確認せねば…… ええそうですよ、ヤジ馬です。八溝山のトンボにかこつけて、帰り道の寄ってみようと考えたんです。
ここらへんかな。勢いつけてきた割には、やっぱり怖いので車中から撮影笑。もちろん何もいません。
茨城に熊と猿と鹿はいません。かつてはいましたが絶えました。ただツキノワグマとニホンザルに関しては、たまに移動個体と思しきものが目撃されます。今回のもそれでしょう。定着・繁殖することはまずないけれど、しばらくは熊鈴鳴らして歩こうかな。
片側の斜面、繁茂する葉が一面に白いのはマタタビです。このあたりは特に多く、かつて私も採取しに来た覚えがあります。しばらくは控えよう。
※ 茨城県のHPより↓
言いたくないんだけどこの話、オチがあります。帰宅して県のHPにアップされた情報を見たら、どうやら今日行った場所とは違ったらしい。ああああ、馬鹿なことをした。テレビの映像見ただけで考えなしに行動するというのも愚かです。普段の私はもう少し用心深いはずなんだけど、マクロレンズを使えなくなったこと(前々回記事参照)も含めて、これはスランプというものなのだろうか。何だかぱっとしない一日になってしまいました。
翌日、夜に降った雨が上がり陽が出たのを見て「水の森」に行ってみようかな、なんて思いました。水は変幻自在に形を変えながら生命に力を付与してくれます。その水にあふれた森に分け入って気分転換、できればスランプ解消を期待しました。ちょっと情けない。
増水した川。いつもなら石を伝って渡れるのですが今日は無理。降ろうが降らまいが、空中湿度がべちょべちょに高いフィールドです。
樹々の枝からキヨスミイトゴケが垂れ下がりしずくを滴らせ、陽の光に輝きます。これが「水の森」のゆえん。
それでは森に潜りましょう。雨上がりです、もちろん林床はぬとぬとぐちゃぐちゃ。クモの巣も貼り付いてきます。これくらいの試練がないと私の魂ゴーストは動かない。
これはギンバイソウ。ようやくつぼみが出たところ。茨城では珍しい部類の植物です。
高湿度の森ならでは。落ちたスギの枝にクモラン(左)とカヤラン。ともに落ちたら最後の着生ラン。並んでるとて仲が良いわけではありませんが、同じ運命を辿ることになりました。
もはや土に戻りつつある倒木にびっしりとコケが付き、遥か頭上に咲き誇るオオバアサガラの小さな花が散り敷いてます。疑うらくはこれコケの花かと。
同じ倒木のこちら半分からは、雨を吸ったイヌセンボンタケがびっしりと萌芽しています。千本どころじゃありません。木材を分解するという生態系での大役に長い時間をかけ、今まさに開花の時を迎えました。
ひとつひとつの、露をまとった姿の美しさったら。
スギナの葉にも露。よくある絵ですが好きな画題です。
プロの撮った写真では水滴の輪郭、葉、水滴に映る遠景、そのすべてにピントの合っているのがありますけど、あれどうやって撮っているんだろう。合成 ?
うまい具合に遠景の赤いイチゴが写り込みました。
これがそのヤブヘビイチゴ。よしよし、接写の感覚が戻ってきたぞ。
少しだけ満足して森を出ます。花期終わりかけのハナウド。セリ科らしい「複散形花序」という花の集まりです。緑色の実になっているのは茎の先端の花序だけで、わきから出る花序は雌しべのない雄花のみ。雌花が結実したあともそのまわりで白い花弁をひるがえし、歌い舞い踊る賑やかしを続けます。アダ花かくあるべし。
わずかながら感覚が戻ってきた気がします。群れないナチュラリストとしての正しい立ち位置を、もう少し模索していこうと思います。
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