ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

磁鉄鉱の引き出しを

 

    

 この図使うの3回目のお気に入り  今回は鉱物話です。何が出るかな。

 


 林道を往きます。熱中症アラート発令中。買い揃えた今年のワークマンの最新対暑衣料が優秀で、炎熱に効果抜群です。夏でも続けている往復8キロの「駅までさんぽ」、汗をかくそこそこの運動ですが、35 ℃までなら快適に早足で歩けています。ただし今日のここは森の中、群がる小バエどもにはいつもの蚊取りで対抗するしかありません。

 


 暗いスギの植林地だったのがぱっと開けました。ここが目的地、予想通りの風景です。地形図、地質図、航空写真、文献、そして経験。あらゆるソースを総動員して、初めての場所なのに現地の見取り図まで作ってあります。知の総力戦で見つけ出した場所、ここは蛇紋岩地帯です。

 


 谷川まで降りる道も特定済みでした。ただ使った航空写真が古いもので、現地では生い茂る植物に道が埋もれていた。

 

    
 かき分けて至った水辺は、パンニングするには期待以上の環境、頑張るぞ。

 


 しかし困った。どれが蛇紋岩だ? シロートの悲しさです、緑色の蛇皮模様と言われても見分けがつきません。

 


 これがそうなのかなあ。まあいいや、今日はひたすらに川でパンニングすること、ただそれだけ。

 


 なぜ蛇紋岩地でパンニングか。少しくどい話になります。出だしは四つ前の「瑠璃の宝石」云々の記事、ざくろ沢で久しぶりに磁鉄鉱目当てのパンニングを試みたけど、失敗続きで戦果がショボかったこと。リベンジを考えました、新たな場所を開拓する形で。ざくろ石のついでではなく、確実にあの端正な結晶が得られる場所に辿り着こう。


磁鉄鉱の正八面体結晶は蛇紋岩中にある。
② 蛇紋岩は茨城にも小規模ながら存在する。
③ 茨城にはかつてシロートにも一辺1センチの巨大結晶が拾える鉱山跡があった。
磁鉄鉱は比重が大きいのでパンニングで産地を探せる。
⑤ 川が蛇紋岩帯を縦貫する場所はないか。
⑥ なんとあの鉱山と一続きの蛇紋岩帯で、山を越えた場所に理想的な谷川がある。
⑦ 行くしかない。炎暑も躊躇する理由にはならない。

   …… で今日に至るわけです。


 驚いたのは、地形図・地質図・航空写真を重ねたら、蛇紋岩帯の部分だけ木が伐採されていたこと。山の管理境界がぴったり地質に沿っているなんて聞いたことがありません。蛇紋岩は植物の生育に影響があるので、ひょっとしてここだけスギの成長が早いか遅いかで伐らざるを得なかったのかも。そんな妄想も含めながらさあパンニングだ。

 


 気合いのあかし。今日はヤブこぎや足場が悪いことを想定して、ジャングルブーツで水に入ります。軍用折り畳みスコップも今回の特別装備。見取り図を作ったことも含めて、これほどの本気、「正眼の構え」でパンニングに挑むのは初めてかも。

 


 経験の命じるままに、ここをポイントにします。お道具一式を手の届く範囲に並べて。

 


 スコップで表層の軽い砂や小石を除き

 


 パン皿に砂をブッコんで

 


 ぐーるぐる

 


 磁鉄鉱が主目的なので磁石で選別

 


 残った砂も磁鉄鉱以外の目ぼしいものがないかチェック。パンニングでこれほどていねいに作業したことがかつてあったろうか。

 


 ざくろ石を内包した結晶片岩のかけらがありました。これはもっと上流から来たものでしょう。


 外界は 35 ℃、ここはさして標高のある場所ではなく、林道での気温もそんなものでしょう。でもV字谷を吹き降ろす風は涼しく、足を浸した谷川の水は冷たく、その水で顔を洗えば今が夏であることすら忘れます。よもや陽射しを心地良いと感じる日があろうとは。林道で群がってきた小バエの類も姿はなく、虫といえばたまにオニヤンマやウシアブがこちらをじろりと見ながら飛び過ぎるだけ。…… 炎熱に焼かれながらの過酷なフィールドを覚悟していたのでいささか拍子抜けの、いえむしろご褒美みたいな採取行となりました。

 


 持ち帰った砂ぜんぶ。ほとんどは磁石で選別したものですが、一部「目」でつまみ上げたものもあります。

 


 あるぞあるぞ。青黒かったり面が正三角だったりするのが磁鉄鉱です。それ以外の鉱物は私が見てもわかりません。


 この場にある可能性の鉱物名はわかっています。同じ蛇紋岩脈の例の鉱山の記録がしっかりしているからです。滑石、苦灰石、緑泥石、透閃石、苦土蛭石、真珠雲母、苦土電気石、金紅石、曹長石、チタン鉄鉱…… まあ並べたところで私には異世界の花の名前を聞かされるようなもので何のイメージもありませんが、蛇紋岩地の面白さは伝わります。何より、かつてこうした鉱物をすべて調べ上げた人がいたことが驚きです。


 驚きといえば、今回は地質図にも驚愕しました。この日本という国、全国全土くまなく精密な地質図が作られているのです。明治の昔から先人が積み重ね、それぞれの時代の人が修正し訂正し、精度を上げて上げて今の地質図になってます。途切れることのない科学の継承、本当にすごい国だと思います。


 文献情報も豊富でした。今回の鉱山に限らず、県内にかつて操業していた鉱山の位置や産出鉱物は詳細に記録され、活字になって誰にでも閲覧できます。図書館の郷土資料コーナーで、名もなき先人たちの足跡にただ瞠目するばかりでした。

 

 


 さて戦果報告です。まずは主役、磁鉄鉱集合。

 


 残念ながら期待した1センチクラスはなく、大きなものはやはり損傷し欠けたりしてます。でもざくろ沢より大柄な粒、十分に人に差し上げられるサイズです。

 


 正八面体は美しい。

 


 この赤いのが気に入りました。

 


 それ以外の鉱物として、ざくろ。厳密にはこれは蛇紋岩由来ではありませんけど、他形結晶とはいえざくろ沢のものを超えた長径7ミリは賞賛に値します。ええ自画自賛です。

 


 これは真珠雲母と決めつけました。かの鉱山で特異的に産出したものです。

 


 さてこれは…… すいませんいちいちシロートであることを言い訳にしますが、見かけで判断するしかすべがありません。火山地帯なら輝石とするところ、この場では金紅石(ルチル)とさせてください。よく水晶に糸のような姿で内包されています。

 


 個人的には磁鉄鉱よりも大きな成果です。これまでもあちこちのパンニングで見かけていました。磁性はないけど金属光沢のころころしたかたまり。この場所で得られたことでクロム鉄鉱とアタリが付きました。

 


 読者の皆さま、ジノ。はさて何をしているのでしょう。


 たとえばここに価値観を共有する親しいナチュラリストの方がいたとします。その方から「磁鉄鉱の綺麗な結晶が採れる場所を知らないか?」と尋ねられます。明日からの私は自信を持ってその方をこの谷へお連れできるでしょう。つまりこの場所は私の中で「八面結晶の磁鉄鉱」という引き出しになったんです。いつでも自由に開いて役立てることができます。こういうのを「自家薬籠中じかやくろうちゅうの物」と言うそうです。つまり私は、この茨城県という広大なフィールドをひたすら歩き回り、動植鉱物を見つけては片っ端から自分の引き出しに収めようとしているんです。


 もちろんおカネは関わりません。ごくごく個人的な、その意味では内面的な作業です。ネットで詳細を公表するのは害も大きいと知りましたので、善良な多くのこのブログのファンの皆さまには申し訳なく思いますが内緒の部分が大きいです。私とて特別な情報ソースがあるわけではなく、誰でも目にできる公開データで探索をしていて、実はそこに至るまでの経過を楽しんでいます。それが伝わればいいなあ、なんて。


 とはいえ、県内の古参の読者さまで植物にお詳しい方には、いつか私のフィールドをすべてお伝えする約束をしています。その約束の履行も含めて、そのうち興が乗れば「ジノ。の会」なんて観察会をやっちゃうかも。…… 期待しないでね。取り急ぎ、正八面磁鉄鉱のご報告でした。

 

 


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