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2025.09.18 (木)
本日昼過ぎに前線が北から南へと茨城県を横切るという予報、そこから秋です。県境が北西方向にとんがったその先端にあるのが県の最高峰・八溝山。最初に前線が通過するのはここでしょう。その八溝山頂で、茨城で最初に秋を迎えるひとになろう。
7:30 発。通勤時間ですが水戸市内を抜ければ快走、国道 1 18 号。

9:20 八溝山頂着。山頂わきの電波施設の整備があるようで、駐車スペースが埋まってました。珍しいことです。山頂の八溝嶺神社に手を合わせ、今日の観測点、展望台へ。

いつ見ても心が躍る笑センスです。

定点確保。さあ来い秋雨前線。

四周は雲の中。ほぼ無風の、ねっとりとした夏の空気です。

定点から見た栃木県側。那須のお山は見えません。
ここまで読んでくださった皆さま、さて私は何を見、何を体感しようとしているのでしょうか。そもそも「前線」は目に見えません。寒暖の空気の境目に過ぎません。寒冷前線が雲の壁を伴っていたりするとあれがそうかと思えるくらいです。…… とにかくお付き合いください。
ひとりぽつねんと山頂で待つ。のんびりしていたら、どっと若い人のグループがお城に上って来て驚きました。みなラフな服装ですがそのうちお一人が名札を下げていて説明役。役場かNPOの人がイベントで働いてくれる人たちを案内してるという風情です。わしお邪魔かなあと思いつつ空に向けてシャッターを切る。人影のない山頂を思い描いておりましたが、さっきの駐車スペースといい平日でもいろいろと往来があるものです。

若い人たちが去った 10 時過ぎくらいから、急に山頂を覆っていた雲が消え始め、視界が開けてきました。
10:30 周辺はすっかり晴れて…… はいいのですが北風が吹き始めました。那須高原が一望できるようになりました。
10:50 北風が強く、夏装備の服装では肌寒くなりました。体が冷えそうで、慌てて車に戻り上着を着こみます。
ここいらの変化を定点カメラで。




現場ではただ体感の変化を感じただけですが、今にして思えばここらが前線通過だったようです。一気に雲高が上がり、視界が開けました。

11:10 那須高原の一部に天気雨が降っています。北関東の天気が手に取るように見えます。風は北から西に変わり、ますます強くなりました。

ただぼーっと雲の過ぎ行くを眺めてる。茨城のいちばん高い場所にいる茨城でいちばんヒマなやつです。

11:30 那須のお山が見えてきて、あれ雲が晴れたなと思ってふと南側を見たらごつい積乱雲が今まさにもくもくと湧き上がる最中でした。しまった背後を取られた、前線はあそこだ。西の栃木上空にぽつぽつとある積雲が、一列に並びつつみるみる発達して東に向かっています。発達した雲の下はすでに雨でありましょう。ああまたかわされた。

イカれた性癖の話をします。ワタクシ、雨… できれば大雷雨の中を車で走るのが大好きなんです。フロントガラスが滝を浴びたようなのをワイパーが全力で拭き飛ばす悲鳴にも似た擦過音、タイヤが左右に弾く水しぶきが道のみならず車底を叩き、雷鳴はもはやBGM。そんな状況に自分でも呆れるほどに心が高揚するんです。ええ変態です。変態ですとも。
ところが私がそこにいると、雷雲はことごとく迂回し、逃走し、しばしば消滅します。天気のジジイと呼んで ♥ 水戸の年間発雷日数 17.9 日。体感ではもっと少ないように思えます。年間 26.5 日の宇都宮の皆さま、雷雨にお困りでしたらこの私を移住させるのもテですよ。
で今日のウラ目的もそれでした。水戸を避けるというならこちらから出向いてやろうじゃないか。雷雨になった時点で観測を切り上げ八溝山を駆け降りれば、平地以上のスリルを楽しめるぜへっへっへっ。それを外されました。あああ。

11:45 急に西風が強くなりました。南の積乱雲はさらに発達。水戸など県央部に大雨を降らせ、那珂市を停電させました。ここからは見えませんでしたが、その南にも積乱雲の列ができて県南・県東部に大雨、つくば市では建て物が倒壊しました。いずれも人的被害がなかったのが幸いです。とはいえ大変な目に遭った人はおられるわけで滅多なことは言えませんが、…… あああ浴びたかったよう。

黒雲が次々に西から東へと流れていきます。
12:20 西風がさらに強くなり、定点カメラの三脚が不安になってきました。そこに今度は高齢の4人がお城においでです。少し違う訛と話の内容から福島の方々のようです。「 いばらぎ 」なんて言ってるし。しきりに寒い寒いとこぼし、すぐ降りていかれました。栃木・福島との三県境をなす八溝山ですが実質茨城側からしか登れません。まああちらはもっと立派な山がいっぱいあるしなあ。

周辺そちこちに小規模な雨が降っているのが見えます。そのうちの一つ、ごく狭い範囲の雨域が栃木県の大田原あたりからこちらに向かってきてます。風強く、肌寒し。

12:40 ついにここも雨域に突入、と思ったら5分ほどで通り過ぎていきました。つくづく雨雲には好かれません。見渡せば南の方角、茨城県内はかなり濃密な雨にけぶってます。もうここで待っていても雨は来ません。とにかく前線の通過は何となくだけど体感できたし、急ぎ山を下りて雷雲を追ってみましょう。

最後に、高原山から日光にかけての山々にごあいさつ。
一連の県内の豪雨被害は二日連続でNHKの夜のニュースのトップでした。それに付随する解説ではおなじみの気象用語が並びます。「前線が南下」、「大気の状態が不安定」、気温変化の予見と実際…… 耳慣れた内容ですが、どれをとってもいい加減な使われ方はしてません。公的な気象用語でなされます。局地的な天気の予測はまだできないけど、かつてのただその時々で天気を受け入れるしかなかった時代と比べれば遥かに進歩しています。なぜなら気象学、それは科学であるから。過去何百年にもわたる人々の知識と経験を積み重ね、データを集め、体系化し、理論を作り仮説を立てて現場で検証する。この条件ならこうなるという再現性。まごうことなき科学です。天気予報はいっさい悪用されることなく私たちに幸福をもたらすために行使される科学の、唯一の例ではないでしょうか。
前線が通る。天気予報でさらりと語られるその一言も、実は積み重ね洗練を極めた科学の用語です。今回それをフィールドで体験したく、この愚挙となりました。なかなかに楽しい体験だったと、正直に申し上げておきます

山頂草原ではキアゲハが天国みたいに群れ飛んでました。
↓ 標高わずか 1022 メートル。でも茨城のナチュラリストにはかけがえのない山です。
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