ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

田崎太郎展 神獣とメカオブジェの大祭典

 


 さあさやって来ました陶芸の町・笠間市茨城県陶芸美術館。

 

 
 目的は予告したこれ。そのまま印刷できる画素数です。よろしければ画像保存して。


 というわけで陶芸作家、田崎太郎さんの個展です。古参読者の方は常陽史料館での記事を憶えておいでかも。作家先生の脳内空想科学大冒険活劇に大ハマリして大絶賛しました。タマシイを持ってかれた感覚を吐露しまくった記事でした。なんとその記事を作家先生も見ておいでで、今回の個展のご案内をいただいたのです。おおお、これは重畳にして栄誉なり、お応えしないわけには参りません。月にしてのべ2万人の読者さまにこの世界観をお伝えしなくては。今回はそういう記事です。とにかく写真だけでも見て行ってください。


 過去記事と重複することは極力避けます。先生の来歴もチラシにあるので申しません。ここではただ、① 神獣② メカオブジェ に大別される先生の作品世界をご紹介させてください。

 


① 神獣

     
 これは入り口で出迎えてくれる「方位の4神が描かれた猫神」という作品です。田崎先生の創造する神獣の典型なので、これをネタに。

 モチーフは猫。神社の左右にある獅子狛犬を猫のイメージで再構築したもので「猫神」と呼ばれる、神獣シリーズの基本形です。モチーフとしてはこれ以外に龍など。いずれも全身が縄文土器のようなプリミティブな文様で埋め尽くされて、じっと見てると心奪われるような呪力を持ってます。

 


 これもすべての神獣に共通する「もう一つの顔」。

 


 そして背や体側に開く「目」。それだけだと不気味かも知れませんが、例外なくユーモラスな表情に作られていてむしろ心が和みます。

 


② メカオブジェ
 先生はそう名付けられてますが、私は空想科学大活劇装置と勝手に言ってます。どの作品も宮崎 駿の手になるアニメにポンと出てきて違和感のない、デザインや着想のみならずきちんと背景の物語を持っているキャラクターです。

 


 これは「宇宙戦艦」という作品。もう田崎先生の世界観そのもの。びょうに縁どられた赤さび色の船体、宇宙だろうが何だろうが表面を埋め尽くす短砲身の備砲、乗り組むのはこの世界の住人・ペンギンたち!

 


 必ずペンギン博士による解説があります。作家先生自身がこういう設定を考えるのが大好きなんでしょう。楽しそうに黒板の文字をお書きになる姿が浮かびます。いや正確には「書く」のではなく象眼という手の掛かる技法で作られているとのこと。何もそこまで。

 


 ベースになるのは第二次大戦当時の兵器とその発展型、アニメ、漫画に特撮。おいこれ知ってるかと試されてるようで、同じものが大好きな私には刺さること刺さること。例えばこの宇宙戦艦、海に浮かぶ船そのものの姿で宇宙へ行くって、アレ以外の何者でもありません。波動エンジンなんて言ってるし。しかも旧海軍の潜水艦がイ・ロ・ハで分類されていたのでこれは宇宙の「ウ号」だって。こういうわかる人にしかわからない小ネタで埋め尽くされた作品群は、表面に書かれた小さな記号や文字も見逃せません。

 


 ちなみに乗組員の制服、〇マトのものに似せてあります。

 


 すいませんさっそくアツくなりました。前置きはここまで。奇想驚くべき陶の創作者、田崎太郎の世界をたっぷりお楽しみください。

 


 で、前記事と重複させないって言ったそばからごめんなさい。入り口にあったこれは「造船所」という作品。常陽史料館で拝見して以来、この設定が大好きすぎて。

 


 この世界に行きたいと切に思います。では改めて、まずは神獣シリーズを。お気に召すものが一つでもあれば。

 

            

  

           

      


 茨城で活躍した偉人、岡倉天心の愛猫です。田崎ワールドではこんな姿に。

 


 これも以前に見ました。茨城屈指のミステリー「うつろ舟」で、うつろ舟を引くシャーマンペンギン。

 

           


 シャーマンペンギンについても触れておかねばなりません。田崎ワールドの重要なキャラクターです。造形は神獣のカテゴリーなのに、メカオブジェ世界の住人であるペンギンたちのシャーマンなんです。二つの世界をつなぐ橋渡し的存在。

 


 顔・目・文様。呪力溢れるその姿。それではここからメカオブジェの世界に入ります。

 


 ペンギン博士楽しそう。

 


 ちゃんと「宇宙文字」が書かれている。

 


 ちゃんと三本足のヤタガラス。

 


 機首に書かれた「航研」の文字に心震わす人がどれほどいるだろう。

 


 さあいよいよ重装艦ワールド。

 


 過去記事で絶賛した潜水艦。搭載機、カタパルト、オフセット艦橋。ああたまらん。

 


 旧海軍へのオマージュに満ちた三隻。

 


 「商船改装空母」というそれだけでアツい設定です。大戦中各国で実際に作られました。でもこれは…… 元は「さんふらわあ大雪」という大洗-苫小牧航路のフェリー。急造のため自動車の搬出口や船腹に描かれたあのマークがそのままです。

 

        
 ヒノタマモニターとヒノタマメリマック。モニターとメリマックはともにアメリカの南北戦争時に実在した砲艦で、交戦もしています。いったい見る人の何人がそれを知ってるのだろうか。田崎先生よく知ってたなあと思ったら、種明かしをして頂けました。「宮崎 駿の雑想ノート」という、かつて「アニメック」に連載されて 1992 年に単行本として刊行された本があって、かの人の軍艦・ヒコーキ趣味が全開の物狂い本です。モニターとメリマックはそのいちエピソードとして描かれているんです。そしてやっぱり、というべきでしょうか、田崎先生のバイブルなんだって、この本。 何百回読み返したか、お手持ちのはもうぼろぼろになってました。

 

          


 こんなものを見せられて想像力を刺激されないクリエイターがいるでしょうか。田崎先生は第二のミヤザキになるんじゃないかな。

 


 大型飛行艇。どう見ても元ネタは二式大艇とその発展形の新明和。戦争なんかしなければこんな発展もあったかな、なんて。田崎先生の作る兵器はみな、平和な世界が前提です。

 


 空中戦艦。これも田崎ワールドを語るうえで欠かせません。見てるだけでいろいろな物語が浮かんでしまいます。

 


 そして物語といえばコレ。前回も今回も一番楽しみにしていた装甲列車です。「個人蔵」とあるので、コレを買ったひとがいるんだ。あああうらやましい。

 


 艦載機。砲塔。無数の扉。すべてが物語です、活劇の舞台ですああたまらん。こういうの宮崎 駿が好きだろうなあと思ったら、なんと田崎先生、その宮崎監督から直接手書きのハガキを頂いたことがあるそうです。このメカ使えないかと本当にジブリからオファーがあったとも。刺さる人には刺さる田崎ワールド。

 


 装甲列車を見られたらもう満足、と思っていたのですが今回はさらに隠し玉がありました。題「預言の岩」。ペンギン世界でこの岩を手に入れたものは世界を制するという言い伝えがあって…… で展開する長い時間をかけた物語のそのワンシーン。

 


 ホピ族の預言が刻まれ

 


 猫神信仰の顔が作られ

 


 防衛のための砲塔が置かれ防塁が築かれ

 


 それを無数の通路が結ぶ。ああ、湧き上がる物語でもうおなか一杯です。

 


 以上でご紹介は終わりますが、前記事をご覧の読者さま、おや?とお思いではありませんか。おマエ写真ぜんぶ壊れたって言ったじゃん、と。 はいはい、それは事実でした。でもそれで終わる私ではございません。すぐ翌日に出直して写真 300 枚、撮り直したのです、ふふ。 さらにインスタに先生の会場出現予告があると受付のお姉さんに伺って、またもう一日、来てしまったのです。つごう3日間会場をうろつく黒ずくめの男。受付や会場係のお姉さんたちにさぞや怪しまれた事と思います。実際やってることはストーカーだしなあ。

 

 


 で、先生にお会いできて直接、作品の説明をして頂けたのです。宮崎監督のハガキや雑想ノートのお話もその時に。本当に光栄でした。田崎先生ありがとうございます。

 


 さて田崎太郎展、いかがだったでしょうか。美術作品すべてに言えることですが、現場に来て自分の眼で見なければその作品の本質はわかりません。興味を持たれた方、多少遠路でも笠間までおいでになることをお薦めします。まだ知名度は大きくありませんが、この通り「刺さる」人には間違いなく刺さる作家です。日本橋三越の個展では、会期初日に全 40 作品が完売したそうです。もしテレビで紹介されたりしたら人が押し寄せるのは確実、ゆっくり鑑賞したいなら今のうちです。

 


 当たり前な陶芸作品に飽きておられる方、ぜひびっくりしてください。宮崎アニメの愉快でマニアックな船や飛行機がお好きな方、アレを立体で見たかったら田崎太郎展です。あなたが興味なくても、周囲に空想科学好きの少年・青年・中年・壮年の男性がおられたら笠間にお誘いください。

 


 いま笠間は菊祭りの真っ最中。そもそも茨城でいちばん観光地らしい町で、陶芸やら食べ歩きやら、いくらでも楽しみがあります。

 

 

     
 アマビエ。笠間に一つ、兄弟関係の益子に一つ、ともに呪力で町を守っています。

 

 


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