水戸の気候。夏場の3か月間は全国の県庁所在地でもっとも湿度が高い。その一方で冬の3ヶ月間は関東の県庁所在地でいちばん寒い。そして乾燥もすさまじいのです。季節風の通り道になることと、何より雪が降らないというのが大きいと思います。これが同じ県内でも山間部になるとさらに過酷さを増します。
水戸と、同緯度で雪国の福井市の今年1月 23 日の最低気温と最低湿度をご参考までに。
最低気温 最低湿度
水戸 -6.0 ℃ 25 %
福井 -2.5 ℃ 87 %
お話変わって我が家では。父が有料老人ホームに落ち着き、母も安定しました。昨日は市役所に母の療養費の請求に行き、それで当面の手続きは終了です。ようやく長男のひといき。気ままに生きてるようで現実にまみれてました。さあ深呼吸、「山気」を補給せねば。

というわけでコケ類の豊富な「水の森」にやって来ました。この季節「生命」を感じるにはコケの緑を見るしかないと考えたもので。ここでは以前に美しい胞子のうを出すタマゴケを見かけました。あわよくば冬虫夏草ヤンマタケも期待できる場所です。…… なんてほくそ笑んで車を停めた駐車場で、いきなり洗礼です。何かがあります。

なんて美しい鳥。イカルです。過酷なこの地の冬を、乗り越えることができませんでした。

本当は埋めてやりたかったのですが、近くの養鶏場で鳥インフルが発生し何万羽もの鶏が処分されています。ただ手を合わせました。…… 森に入ります。

ああ極低温で水のない世界を写真でどう表現しよう。氷点下で雪も氷もない世界。水と適温、生命の存続に必要な二大要素が欠けているのです。動くものとてない時間すら凍った森。

特に乾燥の影響は大きく、シダの仲間がカピカピの乾燥海苔みたいになってます。でもこれは死んでません。雨が降りさえすれば復活します。何万年もかけてこの気候に適応しました。困りはするけど滅びはしないのです。
雪国の難儀が伝えられます。まこと「北越雪譜」に描かれたとおりのご苦労、お察しします。ただ、申し訳ないけど困っているのは人間だけ。それ以外の生物にとっては予定調和です。むしろ雪の中は温度も湿度も一定に保たれて、いくつかの備えさえあればむしろ快適なはず。対して当地の生き物たちにはその防壁がありません。小さな身で過酷な環境に晒される、その苦難やいかに。

スギの落枝にクモラン。果実をつけてますけどこれまたカピカピです。樹上に着生して生きるもので本来乾燥に強いのだろうけど、さすがにこれは生きてるのかドライフラワーなのかわからない。コケや、先程のシダは体の造りが簡単なぶん水分が抜けても復活できます。でもクモランは立派な被子植物、さてどこまで耐えられるのか。

アオキの葉上に顕微鏡サイズのカビゴケ。南方の生きものでここは北限に近い生育地、でも立派に乾燥と低温に耐えてます。
結局タマゴケは胞子のうを出すほどには成長しておらず、ヤンマタケも見つかりませんでした。でもそのタマゴケのために今日は小さな霧吹きを持ってきています。コケの撮影で重宝するものです。一度だけ使っていきましょう。

これは崖地で干からびていたコケ植物。

一般の方が見たらただの乾物です。

これに水を吹きかけると、みるみる水を吸って生気を取り戻します。コケってすごいと思わせる瞬間です。

種名もはっきりしました。ムチゴケです。オオムカデゴケという別名はこの姿からおわかり頂けますね。

ペロンと伸びるムチのような枝は「鞭枝べんし」と言ってこのムチゴケ科の特徴です。

たちまちにモニター画面は生命の気に満たされました。気温は0度近いままの、霧吹きで造られたいわば演出写真ですが今の私には十分です。次に来るときは最初からこのセンで行こうなんて思ってしまった。最初の野の花が咲くまでの辛抱です。

倒れるものがいて、生き延びるものがいる。そんな茨城の冬なんです。
↓ タマゴケ。コケ界のアイドルだそうです。
↓ ヤンマタケ探しが冬のライフワークになってしまいました。もちろん楽しいです。