ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

青の渚

 

 ただ美しいもの、不思議なものだけを見続けていたい。それだけが望みです。

 


 茨城の海、ざざーん。

 


 悪天候に見舞われたGWでしたが、その前後何回か海岸を歩きました。きっと何かあると。

 


 ほら。

 


 海岸の拾いもの記事をカテゴライズしようと思ったとき、カテゴリー名は迷わず「青の渚」。そうです、茨城の海石を代表するこの黒メノウ、佳いものはこのように青い光を放つ、それを強調したかったんです。

 


 始まりは 2019 年6月 23 日の記事。ただのメノウ拾いのつもりで歩いた海岸で、この青に呼び留められました。当時のいかなる図鑑、石拾いガイド、私が知る限りでの文献、ネット記事にもこんなものの記載はありません。いくつか観察するうちに、それがメノウ/玉髄が黒化しさらに白い被膜をまとったものと理解しました。黒化、つまり世に黒水晶とか煙水晶とか言われるものの成因はわかっていて、石英が億年単位で放射線に晒されて黒化したものです。白い被膜は蛍光の発し具合からみて、おそらく海水中に豊富なカルシウムでしょう。でもそれがなぜこんな青い光をまとうのか、不思議です。不思議は不思議のままが面白い、かな。

 


 当初は黒化メノウ、のちに略して黒メノウと呼ぶようになります。「黒瑪瑙」で検索すると宝石商・パワーストーン屋さんが次々とヒットしてしまうので、茨城のものを表現する語として記事中では「黒メノウ」に統一しました。おかげさまで市民権を得て、ネットでも紹介されるようになりました。


 はい自慢たらしい能書きはここまで。このGWに豊漁だった茨城の黒メノウほか海石の数々をご覧くださいませ。

 


 これくらい豊漁。なぜ黒メノウばかり、とは思います。

 


 いきなりですがこれ、メノウじゃありません。海岸で潮に濡れた姿が真っ黒で、その漆黒に魅せられました。こういうものに弱いんです。メノウではないのでしばし葛藤しましたが結局拾ってしまった。しょせんビンボー人なのだ。

 


 乾いた表面に薄く葉理(層)が見えるので堆積岩ぽい。でも黒くてカタい。粘板岩あたりかなと思います。

 


 はいこれもメノウじゃない。白と黒の対比にダマされました。火成岩のひとつ、閃緑岩です。白は石英、黒は角閃石など。いずれも反射光が美しい。

 


 柱状に光る角閃石の結晶。こんなものにも私は、タマムシの翅の極彩色やセツブンソウの花の微細構造に見入ったときと同じ「美」を感じます。自然の造形には無限の含蓄があるんです。

 


 これに至ってはただの砂岩。削孔性の貝に開けられた穴にぴたりと小石がハマったところが妙味なんです。まあデカい鼻の穴、と見てもよろしい。

 


 石の来歴の不思議を想います。

 


 それでは2の皿に参ります。こちらはほとんどメノウ系です。

 


 まずはこちら。長辺 10 センチの、今回の黒メノウでは最大ですが問題はソコではない。片面はこの通り普通の姿ですが

 


 反対側が …… おわかりでしょうか。白い被膜の表面が滑らかで、つやつやと光沢を放ちます。以前にもこんなのがありました。古参の読者さまにはご記憶の方もいるかな、メルカリ詐欺に写真を勝手に使われたと騒いだ、あの黒メノウです。今回のはずっと大きい。

 


 つやつやつるつる。どうしてこんな表面ができるのか、これも楽しい謎です。

 


 青白い蛍光を放ちます。

 


 とそこに現れる旅の僧。名を是界坊ぜかいぼうとおっしゃいます。呑む打つ買うの三拍子そろった立派な破戒僧です。でも法力は確か。

 


 私の今回の石との対話にお付き合いくださるそうです。

 


 さてこれは。

 


 きめが細かくて美しく磨くことができました。よく見かける種類のこの石、じつは正体が知れません。ジャスパーであろうとは思います。市販の磨きさざれ石パックの中にメノウ類と一緒に入っていたりします。

 


 赤のジャスパー3連発。

 


 私は2つめの滑らかな質感が好みですが

 


 是界坊さまは3つめのに何かを感じたようです。

 


 次のは …… おおおこれぞ黒メノウ。晶洞は真っ黒い仏頭状構造で満たされてます。

 


 そこに飛び乗る是界坊さん。子供か。まあわかるけど。

 


 それよりもこのメノウ、透明感がすばらしい。

 


 こちらの黒メノウも

 


 お気に入りのようです。

 


 次のこの黒メノウですが

 


 側面に見事な晶洞がありました。いつぞやの銘「黒海」のような。

 


 この水晶の白と玉髄の黒の対比が見どころです。

 


 それぞれに見どころのある黒メノウ。

 


 おなじみオルソクォーツァイト。

 


 おい坊さん浮かんでるよ。

 


 赤メノウに白被膜というパターン。透過光が美しい。

 


 透明感のあるメノウは

 


 同じアングルでも光しだいで別物になります。

 


 是界坊さま、同化してしまった。

 


 さてお立ち合い、この黒メノウにご注目。

 


 仏頭の削れた同心円模様も見事ですが

 


 この部分、おわかりになりますか。右から左に、白い被膜が徐々に赤く色づいて私の言うところの「柿渋」になっていく過程が見て取れるんです。白いカルシウムイオンがより安定な鉄イオンに置換されていく、と私が考えるその現場だと思いたい。

 


 とにかくこのメノウ、小さいながらほかにも見どころはいろいろあって、例えばこの晶洞あたり。

 


 この縞模様の配色から、ウルトラ警備隊の隊服を思い出してしまった。

 


 さて「柿渋」。今回は大小2個しか拾えませんでしたが、その1個。これをひっくり返した裏面が、なんというかエモーショナルでした。

 


 おおお。仏頭状構造が削られて、内部の黒メノウが覗いています。さながら外界を窺う目のように。

 


 木星の大赤斑を撮影してる気分になります。ミニマムサイズの青い大赤斑。

 


 ちなみに長径は3ミリほど。接写という技術がいかに我々に新しい視点を与えてくれるものか。顕微鏡を発明したロバート・フックさんてエライなあ。

 


 是界坊さん、法力でここからビームを撃とうとしています。え、法力ってそういうもんだっけ?

 


 さて写真が 60 枚を超えてしまいました。ご紹介したいものはまだあるのですが、これくらいにしましょう。いくら我が読者とはいえ忍耐の限度もあるでしょう、ふふふ。

 


 あと一皿、小さいメノウを集めたのが残りました。またいずれの機会に。

 

 

 


 ご心配もいただいておりますので、最後にひとつ、少しだけご報告を。長きにわたり家族の手をわずらわせていた父ですが、先週、98 歳で穏やかに旅立ちました。葬儀も済ませました。十分な準備期間を置いてのことで、心の準備もとっくにできておりましたのでご配慮は無用です。喪主としてまだ多忙ですが、これまで通りのジノ。でございますよ。どうか変わらずのご厚情を。

 

 


↓ 青の渚、最初の考察。

↓ 黙して語らず。