ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

凍れる木 珪化木三題

 

 「久慈川でメノウと珪化木を拾う」が、このブログが広く読まれるきっかけとなった記事のタイトルでした。なのに以後は大きくメノウに偏った石記事が続きます。だって珪化木、キレイじゃないんだもーん。


 これはイカンということで、面白いブツを拾ったこともあり、今回は珪化木を語らせていただきます。

 


 その最初の記事で触れた、河原の長大珪化木。

 


 ただの埋もれ木かと思ったらえらくカタかった。

 


珪化木とは


 木が最後に腐らずに(多くは水中で)土砂に埋もれるとどうなるか。大きく2つのパターンがあります。


① 炭化
 地下の無酸素状態では材の成分が腐ることはなく、高圧のもとで有機的な成分が絞りだされて、構成要素の中で炭素だけが凝縮され、高純度化していきます。段階はさまざまですがつまりこれが石炭。化石の一種と考えることもできるけど、元の植物体の形が残ることはほとんどありません。

 


 以前の記事でご紹介した、玉川で拾った石炭。褐炭というべき、炭化の程度が緩いもの。

 


 雨ざらしにしていたら、硫酸を吹きながら自壊しました。

 


② 珪化
 木の材を構成するセルロースは「食物繊維」とも呼ばれる炭素化合物です。この炭素が地下水に含まれるケイ酸に置き換わるという反応があって、ケイ酸は岩石の主成分なので材はどんどん固くなり、やがて木の姿はそのままに固い石になります。生きた顔のまま凍り付いた木。英語ではペトリファイド・ウッド。石化した木、石に化けた木、まさに「化石」です。時間が経つほどにケイ酸の純度が高まり、木目を残した姿でケイ酸の固まり、すなわちメノウやオパールに変化していきます。


 おわかりでしょうか。つまりこの②が珪化木です。

 


 針葉樹の老木の樹皮がそのまま残ったもの。

 


 これも針葉樹。年輪を拡大すると細胞構造まで観察できます。

 


有名なヤツ


① 化石の森国立公園  アメリカ・アリゾナ州
 昔は「珪化森林国立公園」とも訳されました。実に2億年以上前の、中生代三畳紀のナンヨウスギの森が見事に珪化し、砂漠の中に立ち姿で、あるいは折り重なるように倒れています。いずれもメノウ化が著しく、赤を基調とする色彩豊かで美しい珪化木です。おかげでドロボーが絶えないんだって。


② 手取川流域の珪化木産地   天然記念物 石川県白山市
 恐竜化石でおなじみ、手取川。1億年以上前の中生代白亜紀の木々が、これも見事なメノウ化した姿で現れます。残念ながら産地の大部分がダム湖に沈んでいますが、大きな切り株が路傍に置いてあったりしてびっくり。盗まれないのはさすがニッポン。


③ 岩手県二戸郡一戸町の珪化木  天然記念物
 上二つからぐぐっと新しい、新生代新第三期中新世の化石群。1500 万年ほど前のものです。川床に転がる者あり、渓谷の中に静かに佇んでいる者もあり。いつか見に行きたいと思っています。

 


珪化木三題

 


 ここからは最近私の拾ったもの三つをご紹介します。久慈川・玉川流域では上記岩手県のと同じ 1500 万年前の珪化木が普通に拾えます。


一のブツ  玉川産、広葉樹の心材


 表面は削れてガサガサですが

 


 両端では年輪の中心が見えます。

 


 年輪を見やすいように一端を磨いてみました。

 


 さあ拡大だ。

 


 おおお、広葉樹の特徴である道管がくっきり残っています。まさに化石、ぜひ化石好きの子供さんに差し上げたいものです。

 


二のブツ  玉川産、針葉樹の辺材


 デカい。2,3キロあります。台形で座りがいい。

 


 一部クラック(ひび)にメノウが見えます。

 


 年輪くっきり。こういうのに弱いんですワタシ。

 


 よくわからないのは年輪のこの細胞構造。なんじゃこりゃ。

 


 拡大してもわからない。仮道管の断面だとは思えるのですが、独特です。ネットで同じものを探しましたが見つかりませんでした。ひょっとするとこの特徴から種を特定できるかも知れません。

 


 上下をうまいこと平行に削れば、植木鉢の台になるかな。いちいち言うことが小さいな、我ながら。

 


三のブツ  黒の海岸産、分類群不明


 さあこれ。3月の海岸で拾ったものの、すでに収穫物が重かったうえにこれ自体がずっしり大質量で持ちきれず、海岸に埋めてきたものです。読者の方のお薦めもあって掘り出してきました。

 


 特徴はなんと言ってもその形。丸い。漬物石のように。ふつう珪化木は木目に沿って不定形に割れているのが一般的で、こんなふうに丸く削れるなんて、私はこれまで見たことがありません。全体の硬度が違うのでしょう。

 


 もちろん珪化木以外の可能性も考えましたが、やはりこれは年輪以外のものとは思えません。

 


 その年輪が恐ろしく複雑で緻密です。かなりの古木の材なんだろうとは思います。

 


 部分的に黒化し

 


 クラックには黒化した微結晶も見られます。

 


 とにかく年輪の幅が狭くて、広葉樹か針葉樹かの判別もつきません。

 


 その年輪の黒化過程。

 


 う~ん、珪化木だとしてもなんか違う。久慈川流域で見かけるものとは性状が違い過ぎます。これひょっとして、久慈川のより時代が古いんじゃないかな。根拠は黒化の具合で、微弱な天然放射線で 1500 万年ではここまで黒くならないんじゃないかなあ。…… すいません、シロートの勝手な推論です。謎は謎のままが面白い。

 

 


 久慈川・玉川で珪化木を見るたびに、遥か 1500 万年前のこの地を、その時代を想います。新第三期の中ごろ、気候は温暖から寒冷へと向かう時代。日本列島は大陸から弓状に分離して日本海ができました。と言っても東日本は大部分が海の底、海底火山が次々と噴火し島々が点々と海上にあります。島の上には森林が発達し、でも地殻変動や火山噴火で、現生のものに近い姿形の生物たちがある日突然に全滅することもしばしば。この地でも、わずかな地上でささやかに生を紡いでいた者たちが、多種多様の有象無象もろとも海中に没する日もあったのでしょう。そんな儚いものたちのわずかな存在の記憶、それがこの地の珪化木です。

 

 


↓ はじめのいっぽ。

↓ 老木の樹皮。

↓ 炭化。

↓ 3月の海岸。