ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

オグルマが咲いていた

 


 柿が青いままです。去年の今ごろは「熟柿を食べた」なんて記録をしているのですが、今年は気温ともども秋が遅い。いつもなら秋のお彼岸ぴったりに咲くヒガンバナも1週間以上遅れてました。秋の花々を撮りたくて行った「いつものフィールド」にも緑野が広がるばかり、仕方ないのでオオゴキブリの可愛い横顔なんか撮っちゃいましたよ。今回はその写真は出しませんから安心してね。さてそれでは。

 


 どうして道端にメノウが落ちているのでしょう。いいえそれは愚問です。ここは玉川村なのだから。…… いえね、何ヶ月ぶりかで玉川に行ったらば、メノウは不作でもお花が豊作だったんです。何度か記事にしましたが、ここはさながら方舟のごとくに古き者がかくまわれている地です。カメラを持って翌日に出直してシャッターを押してきました。メノウより先に、そのお花の記事を上げさせていただきます。

 


 開花が遅れているのもう一つ、アワコガネギク。秋の陽に黄金色に輝くまであと少し。

 


 最近の流行り、秋なのに青田が広がります。実はこれ、春に早めに田植えして収獲では高めに刈り取って、そのまま放置した田んぼです。また新たに葉と穂が出ているんです。「再生二期作」と言って、これでも一期めの半分くらいのおコメが収獲できます。温暖化に合わせた新しいコメ作りです。最近の日本の田んぼはカルフォルニアよりも生産性が低いらしいけど、収量一気に1.5倍。茨城のおコメはおいしいよ―。

 


 農水省は無能だけど現場は優秀、と言って今年は怒られないよね。いや悪いのは政権党の政治家か。覚えておきましょ今年の米騒動

 


 草刈りしてないあぜを歩いたらオオオナモミの洗礼を受けました。いわゆるひっつき虫の一つ。

 

      
 長靴の紐にまでびっしり。いっそ「ファッションでーす」で押し通そうか。

 


 ひっつき虫というと数の上で多いのがセンダングサの実ですが、まだ花期のようです。これはコセンダングサ。ジミな見かけでも昆虫たちには大人気。キタテハやツマグロヒョウモンといった蝶たちが群れております。

 


 キク科である証拠の小さな花が集まった「頭花」を拡大すれば、一つ一つが花粉を出したり柱頭を開いたり。彼らなりに一生懸命生きている様子が伝わります。

 


 こちらはその変種コシロノセンダングサ。外縁部の小花が白い舌状花になってます。まだこの方がキクらしいですね。

 


 で、これが両種の混生地によくあるアイノコセンダングサ。雑種ですけどいやアンタ「合いの子」って。

 


 こちらは別種アメリカセンダングサ。私の子ども時分よりずいぶん減りました。コセンダングサとの競争に負けているようにお見受けします。

 


 セイタカアワダチソウの花期はこれからです。必ずしも日本の気候に合った植物ではなく、これもかつての勢いはなくなってます。栄枯盛衰はヒトに限るものではありません。

 


 コシオガマ、半寄生植物です。私の「いつものフィールド」にもありますが何度も草刈りに遭って小さいものばかり。それがここ玉川で思いっ切り育った大株の群生地に出会いました。

 


 コシオガマの傍らでこれも群落を作っていたシソ科。名はヤマハッカと言いますが、特に香気を持ちません。

 


 独特のキツネ顔がまあ特徴と言えるかな。

 


 ユウガギク。当地では白~紫の野菊といったらこれかノコンギク・カントウヨメナだけです。同定は楽です。今現在他の2種はまだ開花せず、いちばんジミなこれだけが咲いてます。

 


 ヤクシソウ。これも当地の秋の足元をそっと照らすキク科のひとつ。

 


 拡大してその変化の妙を楽しみましょう。

 


 田んぼのふちにミゾソバツリフネソウ。なんとなく大造りなツリフネソウよりも

 


 ミゾソバの繊細な色使いを好ましく思います。

 


 田んぼの土は肥沃なので、あぜにはこんなものも、ラッパ型地衣類。ボクの好きな異形。


 さあそろそろタイトル回収です。以前ここでオグルマという花を見ました。図鑑で知ってはおりましたが、実物は初めてでした。大喜びでブログ記事にしたものですが、もともと草刈りが頻繁な場所であったのに加えて、ある年除草剤を撒かれてしまいました。以後姿を見ることなく、ああ滅ぼされしまったかと嘆いたものです。それが前述のメノウ拾いに来てみたら

 


 あああこれは

 


 あの時と同じオグルマです。復活していました。

 


 牧野富太郎先生が図鑑の解説で「黄色の美花」と表現した太陽のような花です。あああ美しい。摘んで花束にすれば花屋さんの栽培種に見劣りしません。生き抜いてくれて、本当にありがとう。

 


 ということでめでたしめでたしなのですが、さてお詳しい我が読者の皆さまにはツッコみを入れたくなった方がきっとおられるかと思います。そう、オグルマにはごくごく良く似たカセンソウというそっくりさんがいるのです。パっと見た目には区別できません。ジノさんよおオメえまたやらかしてないか?と。前科もあるし、うんごもっとも。


 以下、同定から図鑑の記述に関するお話が続きます。興味のない方はパパっと写真だけご覧くださいね。

 


 私がメインで分類・同定の参考にしているのは山と渓谷社「野に咲く花」です。カセンソウとオグルマの相違点が葉で述べられてます。いわく、カセンソウは「裏面は脈が隆起して目立つ」。オグルマは「裏面の脈は隆起しない」。さて玉川のは

 


 きっぱり隆起しています。ではこれはカセンソウか。いやいや、花の下にある「総苞片」の形状はオグルマです。田んぼのあぜという立地もオグルマっぽいし、以前に「いつものフィールド」で見たカセンソウとも花の感じが違います。

 


 カセンソウ。花の下の部分にご注目。

 


 今回の「オグルマ」。総苞片が細長い。


 問題は葉の脈の隆起です。どうしたものかと「カセンソウとオグルマ」で検索したら、「二人の館」という北海道にお住まいのご夫婦が運営するブログに行き着きました。で、カセンソウとオグルマを部分ごとに詳細な写真で比較してあって…… オグルマも脈が隆起してました。やはり玉川のはオグルマで間違いないと思います。


 しかし納得いかないのは先の図鑑の記述です。エラそうな大学の先生が「監修」の名で入ってますが、エラい人ほど現物を知らないってことでしょうか。ネットでも図鑑の体裁で作られているサイトがあるのですが、先の「二人の館」以外ではみな図鑑の記述のコピペばかり。個人のでも大学の名を冠したサイトでも葉の脈のある無しが相違点であるとの一点張りです。なんか不気味なくらい、みな同じ表現なんです。


 最終的には図書館に行って 10 冊以上の図鑑を比較して、その理由がわかりました。やっぱり大・牧野だったんです。日本の植物図鑑のオオモト「牧野日本植物図鑑」の旧版から最新版まで一貫して、カセンソウには「葉の下面に網状の葉脈がよく目立つ」との説明と、一枚の葉を裏返して葉脈を示した説明図があって、一方のオグルマには葉脈の記述も葉裏の図もありません。以後の図鑑はすべてこのコピーでしょう。思いますに、カセンソウには必ず脈の隆起があり、オグルマには隆起のあるものと無いものがあるのでしょう。牧野富太郎はそのことに気付いていて、分類の基準にならないということで敢えてオグルマに葉のことは書かなかった。それを後世のモノをよく見ないで語る人たちが勝手に拡大解釈して「ある・無し」の分類にしてしまったのでしょう。

 


 無粋な話はここまでに。私がお伝えしたいのは、朝露の降りたオグルマの花が大層美しかったこと。

 


       この光の中にこそ、神はいるのかも知れない

 

 

 

 

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笠原鉄明展 in サザコーヒー

 

 予告させていただきました笠原鉄明 彫刻展「時のかたち」、勝田のサザコーヒー本店で開催です。

 


 ギャラリー入り口から見える見えるぞあの造形が。

 

 

 服や背景・事物の荒々しい掘り跡と、人の肌のこの上なく滑らかな質感が魅力です。

 


 芸術からどういうインスピレーションを受けるかは個人しだい。あくまでもワタシ目線でのご紹介です。お楽しみいただければ幸いです。

 


 見る角度で変わる表情。

 


 いえ、塑像を通して自分自身を見ているのかも知れません。

 

           


 笠原先生のモチーフ「月」。

 


 こちらは昆虫のカゲロウの儚い命を表現した作品です。

 


 とはいえこの顔が。

 


 コレが向こうからコトコト歩いてきたら怖い…… すいません俗な感想で。

 


 人物以外の作品もあります。この野菜や果物に強く「いのち」を感じたとか。

 

 
 でもやはり私が心動かすのは、作家によって描かれた「かお」です。

 


 いちばん上の顔は月を見上げているんだろうか。

 


 彫刻家にかかれば「ゆび」も表情豊かです。

 


 そして、今回私が写真を撮りまくってしまったのがこれ。5面に顔。

 

 
 ああ、いくら見てても飽きない。

 


 深淵を覗く者はまた深淵から覗かれているのです。

 


 会期は次の月曜 21 日まで。JR 勝田駅ひたち海浜公園の最寄駅です。コキアを見るついでにいかがでしょう。いくつか前の記事でもご紹介しましたが、会場のサザコーヒーは茨城でお薦めのカフェです。

 


 すいません食レポって苦手です。いつも写真撮る前にかぶりついてるこの卑しさよ。

 

 

 

 

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シン・いばらきメシ

 

 金曜日。

 


 旧県庁の広場で何やら準備してました。

 


 お祭りのテキヤさん…… にしては妙に統一感があります。実はこれ、県が企画した「シン・いばらきメシ総選挙」の会場なんです。県内各市町村それぞれが特産品を使ってご当地飯を創作し、投票で一等賞を決めようというもの。土・日・月の三連休にここが官製屋台村になるんだって。賑やかなのは苦手だけど、これはちょっと気になります。

 


 日曜に行ってみました。びっくり。こんなに人出があろうとは。

 

      
 「漢メシ」というのが気になっていた鉾田市の屋台。市長さん自らお出迎え。

 


 思わず買ってしまった漢メシ。名産の豚肉をこれでもかと使ったオトコらしいご飯。日なたでコントラスト強すぎ写真ごめんなさい。小さな器なのはあちこちの屋台を食べ比べするため。美味しゅうございました。

 


 大洗町あんこう高萩市のフルーツ、阿見町のレンコン……  ご存じないと思うので申し上げておきます。茨城県は農業産出額全国3位(2023)、漁業漁獲高全国2位(2019)、メロンをはじめとして数々の一次産品が全国1位の実り豊かな農・漁業県です。あまり名を聞かないというのは、東京圏という大消費地が隣にあって、ブランド化とかしなくてもなんぼでも売れるから。とにかく素材王国、グルメの材料に事欠きません。県もその点をアピールしようとこの企画を打ち出したのでしょう。まことに慧眼の至り。

 


 大行列になってました、常陸太田市の「けんちんまん」。

 


 ああ、みんな美味しそう。

 


 汽水湖涸沼ひぬまを擁する茨城町の行列はしじみラーメン。涸沼ひとつで島根県青森県に次ぐ全国3位の漁獲量です。

 


 誰もがこの秋の実りをことほぐ祭を楽しんでます。

 

     
 アントラーズから来ました。…… すごくいいガタイの方ですが、まさか本物の選手とか。他にもさまざまな企業や学校のブースがありました。

 


 ちなみに投票はスマホでQRコードを読み込んで… って、こちとらガラケーじゃい、わははは。

 


 これだけの規模です。県の人、準備大変だったろうなあ。そして他人事ながら、突如こんな企画を当てられた各市町村担当者の苦労を想います。ある日突然役所にメールが届くんです。これこれこういう企画を立ち上げる。ついては担当者を決めておくように。説明会を開くから担当者をよこせ。〇月〇日までに料理の概要を報告せよ …… さあ大変。そもそも何から手を付ければいいのか。誰に相談すればいいのか。準備期間がどれほどあったか知りませんが、大変なプレッシャーのもと、準備を進めていったのでしょう。…… すいませんイベント苦手なのでアレな書き方になりましたが、お役所のルーティンワークに飽きていた若い人なんかは喜んで取り組んだことでしょう。とにかく大成功です

 


 ステージを盛り上げているのは県内の若い経営者からなるアイドルグループ「いばらき若旦那」。

 


 続いてソロの若い人が声を響かせるのを

 


 眺めているのは…… こ、黄門さま!?

 


 天候にも恵まれました。

 


 こんなたくさんの人が笑顔で楽しめるイベントなんてそうはありません。県と市町村のご担当の皆さん、お疲れさまでした。

 

 

 

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海渡る青きもの / 海辺の博物誌

 海岸で見たものという性格上、生物はほぼご遺体写真です。お許しください。

 ちなみに写真 60 枚。お時間のある時にどうぞ。うふふ。

 

 

 一年半ぶり、茨城県の先っちょ波崎海岸に行ってまいりました。以前の記事と重複する諸事情は今回は書きません。最後にリンクを張っておきますのでよろしければご覧ください。

 


 というわけで波崎海岸どーん。今年はこの沖合で黒潮が大きく蛇行して、それが猛暑の原因とされています。南のものが流れ着いている公算が大きいんじゃないかな、なんて。オウムガイ拾いたいなあ。

 


 太平洋ざざーん。

 


 …… ざ?

 


 いきなりエイのご遺体どどーん。

 


 このあともう一匹ご対面しました。先週の豆台風の時の物かも知れません。ああ、これこそ海岸歩きでございます。

 


 30 年前、海に近い鉾田ほこたの事業所に勤務しているときにこのハマ歩き、寄せ物観察を覚えました。参考書はこれ。


 この石井 忠さんは、高校の先生をしながら福岡の海岸を歩き続け、そこの漂着物を記録し続けた方でした。その著作からは寄せ物(漂着物)にかける情熱と探求心がふつふつとたぎるのが伝わります。石井さんは文系の方で、場所も玄界灘。台湾やフィリピンほかの南島から流れ来る対馬海流に洗われ、中国や韓国の船が往来する海なので、漂着物にも政治的宣伝文の入った「海漂器」やら丸木舟やら、古代から近代までの遺物やら実に多彩で人間活動の産物が多いようです。だから「民俗学」と付くのでしょう。対して私が茨城の海岸で目にするのは漁船の備品や漁具、ゴミなど現地人の遺棄したもの以外は圧倒的に生物の関わるものでした。だから私は「博物学」と言わせていただきます。私が石井さんから学んだのは「記録すること」の重要さだと思ってます。

 

      
 といううわけで寄せ物いっぱい波崎海岸。ボクには宝の山なのさ、わーいだ。

 


 やっぱり大きさで目に付くのはゴミの類。現地の年配の人にとっては、海岸はゴミ捨て場です。十数年現地に居たからきっぱり言わせて頂きますが、この鹿島地区の古い住人の民度の低さにはよく驚かされました。何もなかった砂丘地帯に突如降ってわいた港湾建設・工業団地造成。見たこともないような額のカネが行き交って、すっかり人の心を壊し尽くしました。ここはオレの土地だと言って道路を封鎖し通行料を取るなんて行為もありました。そういう人たちもだいぶ高齢化したようですが、海岸で出会う老人にも悪い人相の人が多いので、普段は現地人とのコミュニケーションを大切にする私もこの地域でだけは遠慮しております。

 


 ここらは船の備品や漁具でしょうか。最後の浮き球は樹脂製ですが、以前はガラス玉をロープでくくったビン玉というものが多かった。よく静物画のモチーフになるやつで、私も拾って帰ったことがあります。…… あれってどこに行ったのかな。

 


 漁網を支持する浮きとロープ。これも漁具は漁具なのですが、もはやそうとも言い切れません。

 


 マボヤ

 


 オオアカフジツボエボシガイムラサキイガイも付いてます。もはやこれは海にあって生物群集を支える環境だったんです。きっと小魚もいたと思うので漁礁かな。


 漂着物が生物か無生物かは、実は曖昧です。私はこだわりません。重要なのはその情報です。それは何なのかという。

 


 流木。これも元は生物体ですね。昔はこういうものを拾う人がいましたが、最近は見かけません。

 


 オニグルミ(右)とトチノキの実。オニグルミは河原に普通ですがトチノキがあるのはかなりの山の上。どこの川を流れてきたものでしょうか。

 


 マテバシイのどんぐり。むかし保育園児のためにどんぐりを拾ったことがありました。喜ばれたけど、あの子らももう大きくなったんだろなあ。

 


 今日もありました。名も知らぬ島よりのココヤシ

 


 このココヤシも含めて多くの寄せ物が吹き寄せられていたのがここ、悪名高きヘッドランド

 


 川の上流にダムが作られて海に流れ込む土砂が減り、さらに鹿島港の巨大な堤防が砂の供給をさえぎって、海岸の浸食が問題になりました。そこで砂の移動を阻むために鹿島灘の海岸線に 34 基作られたのがこのヘッドランド。そしてそこは海難事故の名所となりました。周囲に強烈な離岸流が発生し、泳ぐ人をあっという間に沖に連れ去ります。毎年亡くなる人がおられます。恥ずかしながら私も若い頃危ない目に遭いました。くわばらくわばら。お話を戻しますね。

 


 一面に赤い宝玉。アカフジツボが散リ敷かれてます。はて何が。

 


 一本の竹が川を流れて海に出ました。やがてそこにフジツボの幼生が取りつきます。ぷかぷかと浮かぶ竹は居心地が良かったので、やがて多くのフジツボが住まう大団地になりました。

 


 打ち上げられた海岸で、青空を見上げながら干からびていくフジツボたちは何を思ったか。ちなみにフジツボはエビやカニと同じ甲殻類です。

 


 えーと、鏡餅。誰が何と言っても鏡餅。樹脂製のやつですよ。

 


 川流れしたか誰か落ちたか。これ履いてた人はどうなったろう。ただのゴミか。

 


 うわああ、オブジェだ、アートだ芸術だあ。こんな油画を見たことあるぞ。

 


 エボシガイムラサキイガイに三種のフジツボがかつて靴だったものを覆っています。こちらは多様性に満ちた賑やかな団地だったようです。

 


 この砂浜に生きる者もあります。カニの巣穴がいっぱい。

 


 このオオスズメバチ、まさかここから出てきたわけじゃないよね。なぜか昆虫にも海に引き寄せられる者がいて

 


 今年大発生したツヤアオカメムシも相当数が転がってました。

 


 驚いたのは、この過酷な海岸に生えるキノコがあること。調べたらスナジクズタケというものでした。菌類の適応力も侮れません。

 


 貝類では前記事でも触れたトカシオリイレ。大きいのがたくさん。

 


 読者の方に教えていただいたナミマガシワ。綺麗なのを一つだけ拾うことができました。

 


 貝じゃないけどハスノカシパン。ウニの仲間です。

 


 一個だけメノウも拾えました。

 


 風の強い日です。南からの熱風です。目の前でみるみる風紋ができていきます。今日はこの秋最後の暑い日だとか。

 


 これ前回の記事のもの。肩甲骨かなとか言った謎の骨。謎のままだったのですが、

 


 このソウギョと思われる頭骨を見て

 


 これ。アレはコレじゃないか。調べたらエラブタの骨で「主鰓蓋骨しゅさいがいこつ」というそうな。前回のがソウギョかどうかわかりませんが、コイ科の魚のものなのは間違いないと思います。骨格図鑑を調べまくってもわからなかったことが現場で判明しました。現場ってすごい。

 


 これはボラ

 


 これは…… 疑似餌かあ。よくできてるなあ。

 


 さてこれは何でしょう。青いビニール袋に見えますけど

 


 砂に隠れているのも

 


 おわかりでしょうか。クラゲです。猛毒クラゲ、カツオノエボシです。触手に触れると「刺胞」に刺されます。電気ショックのように強烈なので別名「電気クラゲ」。

 


 触手の長さは 10 メートル。青袋しか目に見えなくても実は周囲に触手が広がっているので、裸足で近づいてはいけません。

 


 いけないっつーのにー

 


 ビニール袋みたいなのは浮き袋、気泡体と言います。中にあるのは空気ではなく、何と一酸化炭素や窒素ガス。青紫色なのは黒潮に紛れるため。黒潮は栄養塩類もプランクトンも少ないため青黒い色をしていて、このクラゲはそこに紛れてぷかぷかと本州の太平洋沿岸にやって来ます。

 


 踏むと、パチーンとそれは景気の良い音を出して弾けます。触手も弾け飛ぶのでやっちゃだめよー。やるならしっかりした長靴でねー。

 


 この漂着ゴミの中だけで 20 個くらい入ってました。わざと触れて来なかったけど、実は今回の海岸でいちばん目についた生物体かも知れません。


 そして、カツオノエボシと共に打ち上げられた者がありました。

 


 これ。同じ青紫色です。

 


 ルリガイです。これはごく小さい個体でしたが

 


 あとから大きいものも拾えました。

 


 カツオノエボシと一緒に打ち上げられました。なんでわかるかって? 一緒に暮らしているからです。なんで一緒かって? カツオノエボシを食べてるからです。泡のようなのが付いているのわかりますか。粘液であぶくを作ってぷかぷか浮かび、隣に浮かぶカツオノエボシを襲って食べるんです。美しい殻は紙のように薄く、とても肉食生物には見えないたおやかさですが実は電気クラゲの天敵。ともに熱帯の海に生まれ、太陽にあぶられ、大波に煽られながら黒潮を旅する者同士です。

 


 今日の第一目標はオウムガイでしたが、このルリガイはその裏目標でした。かなり以前に日立の海岸で見たきりだったんです。お持ち帰り決定。真っ赤なサンショウガイと並べたら綺麗だろうな、なんて。ただ問題が一つ。打ち上げられて日が浅く、まだ中に肉が残っていてかなり臭い。ぐええわしこの腐臭ってダメだあ。貝拾いが趣味の方々もこの中身の処理に苦労なさるようです。私はニオイに耐えてピンセットで抜くなんてできません。塩素系洗剤でなんとかなりそうですが、せっかくの色が漂白されては元も子もない。…… 植木鉢に入れて庭に埋めました。土壌生物に処理してもらいましょう。

 


 青黒い黒潮に紛れて、青紫色の生き物たちの通る道があります。南洋に生まれ、食ったり食われたりの生を満喫しながら北へ北へと運ばれて、ある者は低温で、ある者は干からびて、すべて滅ぶ運命です。哀れと思うのは人の勝手、彼らはただ定めに従って一生懸命生きています。

 


 空に見守られながら。

 

 

 

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山歩き二題

 

   虫・クモ閲覧注意です。いつもすいません。


 平らな茨城では木が生えている場所を「山」と申します。今回の「山」も他県の方から見ればせいぜい裏山程度の代物だと思ってくださいませませ。

 

 ひとつめ、茨城生物の会の月イチ活動で歩いたのがかすみがうら市の三ツ石森林公園。カーナビのマップに出なくて、たどり着くのにいやあ迷った。

 


 元もとはコナラの古木が優占する陽樹林だったようですが…… 画面内少なくとも5本枯れてます。


 ここは八郷盆地をC字型に囲む筑波山塊の、その南端。日当たりが良く、冬は逆転層が生じて低温になりにくい、茨城でも暖かい場所です。それでキクイムシが大活躍。

 


 冬景色じゃないですよー

 


 オオスズメバチがこんなに集まっているの、見たことありますか。実はこれ、根ぎわにぐるりとキクイムシが穴を開けて、そこから出る樹液に来ているんです。もはや異常な情景。

 


 林内に落枝おびただしく、冗談ではなくヘルメットの必要性を感じました。

 


 公園なので管理はされていて枯木は伐採されるのですがたぶん、枯れるスピードに追いついてません。…… その木がいいあんばいに熟れて

 


 キノコの苗床になってます。これはヒイロタケ。転がる伐採木にはスエヒロタケかこのヒイロタケがびっしりと付いて、材を二酸化炭素と水に分解しています。自然界に無駄な死という概念は存在しません。コナラの災難もキノコには福音、生態系の物質循環も加速されるという、このナラ枯れという事態も広く長い目で見れば自然現象の一部です。

 


 これは何。そちこちのキノコの間にあって、てっきり木くずか虫のフンかと思っていたら動いたのでびっくり。どうやら蛾の幼虫で、木くずをミノムシのように綴って巣にしています。倒れた木をすみかに、こんな生き物もいるんです。木の材かキノコを食べているんでしょう。生態系では何ひとつ無駄なものはありません。

 


 伐られたコナラの、その切り株の上を歩き回る中型のアリさん。巣もその腐った切り株をうがって出入りしてます。接写して正体を見ましょう。ずん胴で細長い、見るからに原始的な姿。オオハリアリだと思います。これでも毒針を持つ捕食性のアリで、まじまじ見たのは初めてです。これもキクイムシのおかげでここに居を構えました。


 写真はありませんが、枯れたコナラの根元からはカエンタケやマンネンタケも出てました。キクイムシという擾乱じょうらんで生物が動きます。このままコナラが絶え果てて、ここはどういう光景になるのだろう。コナラが消えればキクイムシも去って、新たなコナラの実生が育つ世代交代が進むでしょう。管理されなければアズマネザサのどうしようもないヤブになるかも。アカマツも育ちそうだけど松枯れも続いてるし、そうだこれを機にヤマザクラを増やして桜山に…… 植物の盛衰を思い描くのは楽しい。これもまた自然です。

 


 これはナラ枯れとは無縁なようです、前衛芸術みたいなシイラの幼虫。刺されると痛いぞ。

 


 ちょうど花の端境期でそっちの方は寂しい山中でした。わずかな彩りアキノタムラソウ

 


 小さな小さなイヌコウジュも、拡大すればそれなりに見栄えがいたします。

 


 ノササゲ

 


 コバノガマズミがもう色付いていました。

 


 仲良しになった子のお父さんが着ておられました。国立科学博物館の昆虫展グッズだって。作る方も作る方なら着る方も着る方です。ああ私も欲しい。お散歩で着て、すれ違う高校生に笑われたいぞ。

 


 さて山歩きふたつめ。対照的な場所でした。日立市の助川山。南北に海岸と山地が並行し幅2キロの市街が続く日立の、その街を見下ろす山です。徳川斉昭が外国船に備えて「助川海防城」を築きました。1991 年に一帯が山火事に遭い、公園として整備されてしまいました。私は残念に思っています。御岩山も含めて、このあたりの山中には交易路、修験の道、山住民の道、そんなものが縦横に走っていたのがかなり潰されてしまいました。そういえば、同じ日立市の河原子海水浴場の北側に絶滅危惧種ハマカキランの生える松林があったのですが、整地されて誰も利用しない運動公園みたいなのにされてしまったこともありました。…… いかんいかん、そういう話じゃなくて

 

 
 ご参考に山火事から2年後(左)と 33 年後(右)の登山道の変化。2年後には若木と下草に覆われ、33 年後には育った木々で森の小径になってます。植物の復活力ってすごい。

 


 これもご参考に、路傍に残された仏さま。

 


 33 年育ったコナラ、アカマツヤマザクラの混交林。コナラが1本も枯れてない。

 

     
 ここは海を渡ってくる東風のおかげで夏に涼しく冬に暖かい、そんな土地の山の上。同じ阿武隈高地の山を越えた内陸ではコナラがかなりやられているので、ここにキクイムシが来てない訳はありません。違いがあるとすれば夏の気温差でしょうか。あまり軽率にモノ言っちゃいけないけど。

 


 ちなみに助川山山頂。

 


 眺望絶佳。

 


 ジョロウグモ姐さん。豊満なボディを赤黄の宝石で飾って、四方八方に錨の鎖みたいに太いロープを張り巡らせます。すっかり公園化して舗装された道ばかり歩いても仕方なく、古道が放置されてヤブに埋もれているのに突入したら、今まさにジョロウグモが肥大化してとんでもなくデカくて頑丈な網を張る時期で、草木の枝葉のすき間というすき間に丸々と肥えた腹をゆする姐さん方がシマを張ってました。すみっこにこれから食べられちゃう小さなオスどもを従えて。もうどこを通ろうとも誰かの網を破壊することになり、姐さん方にエラい迷惑をかけてしまいました。

 


 服も帽子もジョロウグモの切れない黄糸がびっしり。クモ嫌いの人、秋は森に入っちゃいけませんぜ。

 


 やぶと化した廃道をかき分けていたら…… なんかある。

 


 大山祇命おおやまつみのかみを祀る場所でした。明治四十四年とあります。当時はここを多くの人が往き来していたのでしょう。たった百年と少しで往来が遺棄地となる。人の世ってこんなもんなのか。

 


 荒れた古道にカラスザンショウの実生がたくさん芽生えて、そこにアゲハ類の幼虫が付いてました。さて何アゲハかな。

 


 終齢幼虫がいたので種類がわかりました。モンキアゲハです。南方系で百年前はこの地にいなかったもの。こんなことも、百年で変わらぬものなどないという良い証左だったりします。

 


 せっかくなので目玉模様接写。本物の眼じゃなくてただの模様なのにこのウルウルは何だ。どういう過程で獲得されたものなのか、その進化の道筋を教えてほしいなあ。

 


 花の端境期なのは変わりませんでした。炎暑の頃は園芸種のフジウツギの逸出したのが花盛りだったのが、今となっては懐かしい。

 


 舗装路のわきに「キセワタ」の小看板が。シソ科の希少種で県でも国でも絶滅危惧Ⅱ類、こんな所にあるわけね―じゃんとか思ったら

 


 ホントにあった。看板置いてくれた方、ごめんなさいでありがとう。写真撮ったの初めてです。

 


 また道の傍らに、何年振りかでクサボタンを見ました。何とこれでもクレマチスの仲間。雌雄異株なんだけど周囲にお相手になりそうな株はありませんでした。大丈夫かな。心配しても仕方ないけど。

 


 まあ大した戦果もなく帰路に就いたのですが、途中で索道の撤去作業をしてました。ここには山中の露天掘り現場から市街のセメント工場へ、公園全体を横切るように石灰石を運ぶロープウェーがあったんです。日立市内に勤務していた頃、はるか山の稜線をかすめるように動いていくバケットを飽きずに眺めておりました。立派な産業遺産とは思いますが、残すにしてもワイヤーの維持とかのコストが馬鹿にならないのもわかります。

 


 15 年前は確かに動いていたよなあ。もう見られないのかあ。

 

 


 海に浮かぶような日立の街。大好きな街なのでついついウンチクが増えます。
 お付き合いありがとうございました。

 

 

 

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9月1万アクセス / ジノ。はこれからどこへ行こう

 

 どーもー、無職のジノ。でーす。まずは心から感謝の言葉をお伝えしなければ。


 タイトル通り、このブログへの1ヶ月のアクセスが1万を超えました。


 2024 年9月末 月間アクセス  10,736
         1日平均    357.9
         総アクセス     395,771


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 29 日に1万を超えまして …… のべ1万人という数に恐れおののき

 


 30 日に 544 頂きました。…… ありがとうございます。本当にありがとうございます。


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 過去に1万を超えたのはただ一度、2019 年の8月で 10,591 。そうです記録更新です。こんな個人の雑記ブログによくもまあ。いえいえ、とにかく文章を読んで写真を見ていただけるならそれ以上は何も求めません。本当に感謝しております。と同時に、スマホの普及で文章を「理解」できない人が増えていると聞く昨今、きっとこのブログに来てくれる方は文意を理解できる人なんだなあ、日本はまだ大丈夫だなあなんて安堵したり。

 


 最初の記事が 2017 年 9 月 4 日でした。ちょうど7年、足かけ8年。記事の数はこれで 827 になります。特に目標・目的を持たずマイペースに記事を更新してきましたが、試練があったとすれば何といってもあの Google ブロックでしょうか。


 関連する記事を言っておくと


「JCO臨界事故の記憶」 2017.10.16
久慈川でメノウと珪化木を拾う」 2018.03.17
「玉川でメノウと珪化木を拾う」 2018.04.30


 2019 年5~8月の行楽シーズンにメノウ記事が大バズリしました。その際にJCO記事が関係者の目に留まり、


 2019 年8月 10,591 アクセス
 2019 年9月  9,664 アクセス 9/30 には1日で 709 アクセス


 直後の 10 月からアクセスが減り始め、1年後の9月には


 2020 年9月  1,777 アクセス


 ここを底に徐々に回復し、2021 年後半から 5000 台。その後は安定していましたが今年に入ってじわじわと増え、今回に至りました。

 

 

 以前と比べて明らかな違いがあります。2019 年の時はメノウ記事とJCOがアクセスの大部分でしたが、この9月は古いものから最新のもの、不人気と思っていた虫記事やアニメ記事までまんべんなく読まれてあの数字。JCO事故当日である 30 日の 544 アクセスも、かの記事へは全体の1/3ほどでした。メノウもJCOもかつての神通力を失い、フツーにいろいろな検索ワードからお客さまがいらしてます。これはきっとステージクリア、完全にブロックの影響を脱して、新しいお客さまのお目に留まるフェーズに入ったということでいいのかなあ。でもどうしよう。

 


 新しいことに挑むチャンスだと、次なるステージに飛び込む時だと私の魂ゴーストがささやきます。1万アクセス頂けることを何かに使えないか。誰かのために使えないか。数こそ力などとは申しません、いつまた激減するかわからないし。ただもしこれが何かをせよという召命であるのなら。


 いえ、ブログの内容や体裁を変えようというのではありません。このブログは


・無芸無職無位無官の男のやるせない日々
・群れないあるナチュラリストの行動記録
茨城県の平凡だけど発見のある自然の紹介
茨城県での暮らし、その豊かさや穏やかさ
・人間と自然界のかかわりの中に見出す物語と、神聖な喜び


 そんなものをテーマに、これからも更新を重ねてまいります。

 


 先日、以前にこのブログで常陽史料館での個展をご紹介した彫刻家、笠原鉄明先生からお手紙が届きました。内容は先の記事の「サザコーヒー本店」で個展を開く、そのご案内です。

 

  
 「すばらしいブログをありがとうございました」…… 手書きのお言葉が添えられてました。よかった。あの記事ではやたら暗いトーンで作品を撮っていて、正直お気に触っていないかと危ぶんでいたんです。でもせめて宣伝にはなるかな、とも。試しに笠原先生をはじめ、これまで常陽史料館での個展をご紹介した作家先生のお名前を Google 検索にかけると、1面か2面に私の記事が表示されます。作家を金銭的に支援することはできないけど、そうかこんなことでお役に立てるんだ。これもこのブログの有りようかと思いました。

 

 


 思えば8年前、望まない役職に就けられて仕事に追われる日々、その逃避として始めたブログでした。私にしては思い切った冒険の始まりでした。苦しみのない人生がないように、試練のない冒険もありません。ようやくにその試練を乗り越えた気がします。チャレンジに出てイニシエーションを経験する。通過儀礼なき現代、稀有な体験ができたということでしょうか。

 


 月のアクセス数うんぬんではなく、公正なアクセスを頂けるようになったということで、次のステージに立つ自分の姿が見えてきました。さてこれから何をしよう。試練を経て冒険から帰還したのなら、持ち帰った霊薬を社会に還元しなければなりません。何らかの形で、人のお役に立てたらと思います。

 

 

 

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サザコーヒー本店

 


 JR 常磐線勝田駅近く、サザコーヒー本店をご紹介させてください。いえお店から依頼されたわけでもおカネもらったわけでもありません。そも、私ごときの宣伝など不要な有名店です。

 


 店内。

 


 撮影は昨年 12 月の平日だったので、さすがに外の席は人がいなかった。

 


 食事が美味しいのはもちろんですが

 


 何と言ってもコーヒー。中南米産の豆を手作業で焙煎した柔らかい味わいが絶品で、それだけでコーヒー通の間では知られた存在です。茨城県内から東京にかけて現在 17 店舗。でも決して強引な拡大路線を取ってはいません。

 


 元は戦時中に開館した当時としては北関東最大の映画館でした。それがのちの映画産業の斜陽化に際して、館主の息子さんが営業の一助として喫茶コーナーを作りコーヒーを出すようになった。この鈴木誉志男すずきよしおさんがサザコーヒーの創業者です。「サザ」は漢字で「且座」と書き、元は禅の用語だとか。

 


 これも店内。こんな写真ばかりだと共感を得られないかもしれないけど、実はこれも鈴木氏の一面。コーヒーを学ぶために世界を旅行し、サザコーヒー創業後も良い豆を求めて年に 100 日は海外にいたそうで、各地のこんなプリミティブな芸術に心惹かれたようです。

 


 芸術に理解がある氏は、店内にギャラリーも設けていて、地元芸術家の個展も開かれます。昔の実業家によくあった芸術家支援という社会事業は、今もこうして篤実な方に引き継がれています。

 


 コーヒーショップなんてこの世にいくらもあるでしょう。でもこのサザが特異なのは、従業員を積極的にバリスタのコンテストに出場させていること。焙煎が手作業なのは前述しましたが、抽出も手作業にこだわっています。昨日今日のバイトでは務まらない、お店は修行の場でもあるんです。大手チェーン店が機械任せにしていることを「手抜き」とまでは申しませんが、このサザの姿勢にはお客さんも従業員も含めた「ひと」への誠実さを感じます。

 


 創業者と言ってもいろいろでしょう。「いい大学を出て大会社勤務の先輩にすがり、大した苦労もせずにコンサルティング会社を立ち上げる」とか「勝ち負けの価値観しか持たず、引き抜いた人材で異業種に乱入しパイを奪いにかかる」とか、ろくでもない「実業家」の話ばかりを耳にします。こういう方々がコーヒーチェーンを創っても、店のコーヒーの味や従業員のスキルよりも自社の株価ばかりが気になることでしょう。浅ましい、と言わせて頂きます。

 


 鈴木誉志男氏の仕事、その生きざまは「カンブリア宮殿」でも紹介されました。世界を旅し、中南米産のコーヒー豆に行き着いてからは現地の人々の信頼を得て高品質の豆を買い付けるルートを確立し、ついにはコロンビアに自社農園まで設立。当時政情不安で「命の危険もある」現地に何と息子の太郎氏を送り込んで農園経営を任せ、病気によるコーヒーの木の全滅なんて試練を越えて安定生産に成功し…… ちょっとしたドラマです。鈴木氏は地元では立志伝中の人物で、私も講演を聞かせて頂きましたが、とにかくウソのない人物です。頑固でこだわりが強くて、というのもこの人には美徳だと感じました。信頼に足る、と生意気ながら言わせてください。


 「単なるコーヒー販売企業ではない」。その言葉には力強い響きがあります。サザコーヒー、都内では東京駅前など5店舗、茨城県内なら直営店舗でなくてもちょっとしたお店で豆やドリップコーヒーを入手できます。通販でも各サイトで取り扱いあり。コーヒー通を自任される皆さん、ぜひ。

 

 

 

 

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