JR 常磐線勝田駅近く、サザコーヒー本店をご紹介させてください。いえお店から依頼されたわけでもおカネもらったわけでもありません。そも、私ごときの宣伝など不要な有名店です。
店内。
撮影は昨年 12 月の平日だったので、さすがに外の席は人がいなかった。
食事が美味しいのはもちろんですが
何と言ってもコーヒー。中南米産の豆を手作業で焙煎した柔らかい味わいが絶品で、それだけでコーヒー通の間では知られた存在です。茨城県内から東京にかけて現在 17 店舗。でも決して強引な拡大路線を取ってはいません。
元は戦時中に開館した当時としては北関東最大の映画館でした。それがのちの映画産業の斜陽化に際して、館主の息子さんが営業の一助として喫茶コーナーを作りコーヒーを出すようになった。この鈴木誉志男すずきよしおさんがサザコーヒーの創業者です。「サザ」は漢字で「且座」と書き、元は禅の用語だとか。
これも店内。こんな写真ばかりだと共感を得られないかもしれないけど、実はこれも鈴木氏の一面。コーヒーを学ぶために世界を旅行し、サザコーヒー創業後も良い豆を求めて年に 100 日は海外にいたそうで、各地のこんなプリミティブな芸術に心惹かれたようです。
芸術に理解がある氏は、店内にギャラリーも設けていて、地元芸術家の個展も開かれます。昔の実業家によくあった芸術家支援という社会事業は、今もこうして篤実な方に引き継がれています。
コーヒーショップなんてこの世にいくらもあるでしょう。でもこのサザが特異なのは、従業員を積極的にバリスタのコンテストに出場させていること。焙煎が手作業なのは前述しましたが、抽出も手作業にこだわっています。昨日今日のバイトでは務まらない、お店は修行の場でもあるんです。大手チェーン店が機械任せにしていることを「手抜き」とまでは申しませんが、このサザの姿勢にはお客さんも従業員も含めた「ひと」への誠実さを感じます。
創業者と言ってもいろいろでしょう。「いい大学を出て大会社勤務の先輩にすがり、大した苦労もせずにコンサルティング会社を立ち上げる」とか「勝ち負けの価値観しか持たず、引き抜いた人材で異業種に乱入しパイを奪いにかかる」とか、ろくでもない「実業家」の話ばかりを耳にします。こういう方々がコーヒーチェーンを創っても、店のコーヒーの味や従業員のスキルよりも自社の株価ばかりが気になることでしょう。浅ましい、と言わせて頂きます。
鈴木誉志男氏の仕事、その生きざまは「カンブリア宮殿」でも紹介されました。世界を旅し、中南米産のコーヒー豆に行き着いてからは現地の人々の信頼を得て高品質の豆を買い付けるルートを確立し、ついにはコロンビアに自社農園まで設立。当時政情不安で「命の危険もある」現地に何と息子の太郎氏を送り込んで農園経営を任せ、病気によるコーヒーの木の全滅なんて試練を越えて安定生産に成功し…… ちょっとしたドラマです。鈴木氏は地元では立志伝中の人物で、私も講演を聞かせて頂きましたが、とにかくウソのない人物です。頑固でこだわりが強くて、というのもこの人には美徳だと感じました。信頼に足る、と生意気ながら言わせてください。
「単なるコーヒー販売企業ではない」。その言葉には力強い響きがあります。サザコーヒー、都内では東京駅前など5店舗、茨城県内なら直営店舗でなくてもちょっとしたお店で豆やドリップコーヒーを入手できます。通販でも各サイトで取り扱いあり。コーヒー通を自任される皆さん、ぜひ。
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