静岡・山梨行の続きです。
この地学巡検というイベント,何回か参加させていただいてますが,何が楽しいってその宿泊する宿に心震わされることでございます。まずフツーじゃない。一人一泊1万円以下,団体受け入れ可,できればフィールドに近いこと,なんて条件が付くと,公共の宿か場末のあばら家か熊の出る山中か気の回りかねる疎放な民宿か。いつも忘れがたい旅の思い出になります。
さて今回の白眉は2泊目の宿。「山の湯」といいます。山中の一軒宿です。山梨県十谷温泉郷 温泉民宿山の湯 山梨県南巨摩郡富士川町十谷
国土地理院地図閲覧サービスより
まさにこの温泉マークの場所です。驚くべし,国土地理院の地図に存在証明。もう地図好きにはたまりません。これ,この地図の温泉マーク,オレの宿なんだ。そう自慢できるオーナーがうらやましい。
入口。十谷峠に向かう道沿いにあるのですが,いやあるというかなんというか,道の高さにあるのは駐車場だけ。建物はほぼ道の下。でもそれだけなら,山宿には珍しくもないかもしれません。
これ,客室前の廊下です。何かヘンでしょ。よく見てください。片側は,道路ののり面そのままなんです。急峻な斜面に刻まれた道路の,斜面の崩落止めののり面がそのまま廊下の壁。こんな作りの家,見たことある? ……もうこの時点で私の心臓わしづかみ。素晴らしい。
遠望。バスがいるのが道路の高さ。良く言えば清水寺ばりの懸崖けんがい造り。悪く言えば山奥のダム工事現場。
窓からの風景。絶景です。
急斜面にあります。普通こんなところに家作るのはツバメくらいのもんでしょう。
懸崖造り。驚くべきは,露天風呂をはじめとしてかなりの部分がオーナーの手作りだということ。
お品書き。オーナー手作り。
宿の中の移動はキホン階段で。これもオーナーの手作り感ありあり。
客室一つをつぶして作ったという展望トイレ。宇宙からの指令が来たとしか思えない蛮行。もちろんこういうの大好きです。
夜の展望トイレ。おのれの姿丸写り。オーナーここまで考えたろうか。
朝の露天風呂。悠々たる天地を感じながら。
この露天風呂の建物も,たぶん手作り。
風雅なコーナー。もちろん手作り。
大工仕事,山菜採り,クマ撃ち。なんでもやっちゃうオーナー。ああ,私もこんな人生にしたかった。
食事はイワナの焼き物やら山菜の天ぷらやら,地場のもの中心で美味しかった。民宿ながら驚くほど清潔で,オーナーのご家族が力合わせてサービスしてくれました。
ちなみに十谷温泉郷は,十谷の集落を越えた先にあります。この狭くて急な坂道を,よくぞバスで登ったものです。
十谷の集落。天空の王国のようです。十谷峠越えというのが標高1700メートルの険しい山道。その十谷峠に向かう旅人のための宿場町だったのでしょう。かつては随分栄えた風で,かなりの戸数があり立派な造りの家も見受けられます。でも歩いてみると,半分は空き家でした。ちょんまげの昔ならいざ知らず,もはや人の往来は途切れています。温泉目当ての人が来るのみの,静かな山上の街です。実はそういうのも私の好み。今度はプライベートで長逗留したいなあ。